「貴方の気持ちに気づいたときには、貴方はもういない。」aftersun アフターサン ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
貴方の気持ちに気づいたときには、貴方はもういない。
『aftersun/アフターサン』を劇場で3回鑑賞した。
本作が長編デビューの監督・脚本:シャーロット・ウェルズが
巧みすぎる紡ぎ上げ方をしている映画だと思う。
父と娘の最後の夏休み&トルコのリゾート旅行を
Panasonicのビデオカメラで撮影した映像と、
父(ポール・メスカル)視点と娘(フランキー・コリオ)視点に加え、
客観的視点で描かれていて、父親が自死に至る布石が多々見受けられる。
やっぱり強烈にグサっときたのは、
「ソフィへ 愛しているよ 忘れないで」のポストカードのメッセージ。
時制的には旅行中に書いたものだと思うのだけれど、
もう完全に死を意識していたに違いなく、確定要素のように見えた。
旅行中、ふたりがハッピーな雰囲気に見えても
音楽が不穏だし、徐々に父の不安定さが露呈されていくところが
なんともせつない。
実は冒頭からその示唆出しはされていて、
娘ソフィのビデオインタビューでの「変な動き」との発言に被せて
きつめに「変じゃない」と言うあたり、もうおかしな反応だったりする。
父の様子が変なのは、別れた元妻もわかっていて、
娘ソフィにある種、監視役を任せているわけだけど、
11歳のソフィは大人へ憧れる多感な少女なので、
父の様子の不穏さには当時気づかず、父と同じ年齢になった今、
ビデオを見ながら、
ようやく父の気持ちというか思いに気づいたのだと思う。
主演の父役、ポール・メスカルは背中で語る俳優だなと思う。
本作ではポール・メスカル演じる父の背中が雄弁だ。
この映画を観ると、身近にいる人を大切にしなきゃと思う。
失ってからだと遅く、後悔しか残らないよ・・・ということを
教えてくれている映画でもあると思った。