「【”娘は父に、11歳の頃に想像した31歳ってどんなだった?”と聞いた。別れて住む父が愛娘とリゾート地で過ごした夏を、成人した娘がビデオで再生し、父が如何に自分を愛し人生に苦しんでいたかに気付く物語。】」aftersun アフターサン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”娘は父に、11歳の頃に想像した31歳ってどんなだった?”と聞いた。別れて住む父が愛娘とリゾート地で過ごした夏を、成人した娘がビデオで再生し、父が如何に自分を愛し人生に苦しんでいたかに気付く物語。】
■父カラム(ポール・メスカル)はある夏休み、離れて住む愛娘ソフィ(フランキー・コリオ)とトルコのリゾート地に出掛ける。
カラムは優しくソフィに日焼け止めオイルを塗ってあげ、護身術を教える。
ソフィは同い年位の男の子、マイケルに好きと言われてキスしたり、カラムと水球をしたりして楽しく夏休みを過ごす。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・父カラムは手首を骨折しギブスを嵌めていたり、毎日太極拳をしている。
予約したホテルの部屋がシングルだった事に激昂する事もなく、ソフィにベッドを譲り自分はエクストラベッドで寝ている。
・二人は楽し気に夏を過ごすが、時折カラムは時折表情を曇らせたり、生きづらさを垣間見せる。カラムは裕福でもないようだ。
ダイビングをしたときに、インストラクターから”40歳まで生きるとは思わなかったよ。”と言われた時のカラムの複雑な表情。
・トルコ絨毯を買いに行った時も、一度は買わずに帰るが、その後カラムはその絨毯を買う。
ー 成人したソフィの部屋に敷かれている。高額な絨毯をお土産として娘に渡したのだろう。ー
・カラムが31歳になった時にソフィが観光客に頼んで、お祝いの歌を歌って貰った夜にカラムは、ソフィに宛てた手紙を足元に落としながら、号泣している。
その前には、夜の海に独りで入水したりしている。
■最後の夜、カラムとソフィーがパーティ会場でダンスするシーンで流れた曲が、カラムが抱えていた問題を暗喩している気が私はした。
激しく流れていたのは、クイーンとデヴィッドボウイがコラボした名曲「アンダー・プレッシャー」である。
歌詞は、ヘビーなモノである。
推測だが、シャーロット・ウェルズ監督は、人生に行き詰っていたカラムの想いを伝えたかったのではないかな。
<そして、成人になったソフィは赤ん坊の泣き声が聞こえる部屋で、ビデオにとった20年前に父と過ごした一夏のリゾートの風景の中、当時は分からなかった父の姿を見たのではないだろうか。
あの夏から、20年後、カラムは何となくだが、生きてはいない気がする。
だが、20年前のビデオの中には、確かに自分を愛してくれた父カラムが写っているのである。
11歳のソフィを演じたフランキー・コリオの名演も相まって、ミニマリスティックな作風ながら、エモーショナルな映画だなと私は思ったのである。>
<2023年7月22日 刈谷日劇にて鑑賞>
自殺する前の父親が最後のバカンスに行ってる作品なので考察間違いないです 作品内では全く説明してないから マジで感想書いてる人の半分以上はそこにきづいてません
共感ありがとうございました。
フライヤーの色あせや折り目の古びた感じがとても印象的だったこの作品。鑑賞後には、ソフィのその後と同じ月日を過ごしたように錯覚するような没入感がありました。
長いようで短く、短いようで長い…あとからしか気づかない時間の重みの、噛み締めるほどに深まる味わい。NOBUさんがおっしゃるようにエモーショナルな映画でした。