「お父さんの幸せを願う」aftersun アフターサン ルカさんの映画レビュー(感想・評価)
お父さんの幸せを願う
大人になる過程の少女の繊細さと、普段一緒にいられない父との、宝箱のようなキラキラした過去の大切な時間を振り返っているという素敵な作品。夏の休暇というシチュエーションが余計に眩しく、今は手にすることができない幻想的な印象が際立っている。時折現れる、色味が少ない印象の凛とした現在の彼女の場面が、ノスタルジックな過去と少し対照的に感じられて、作品を引き締めてくれている。
父は一見普通に楽しそうに過ごしているように見える。だが娘がビデオを撮りながら「11歳頃何になりたかった?」と質問した時に、笑いながらはぐらかして「撮影をやめろ」、と質問に答えていない。おそらく父が子供の頃想像したような未来にはなっていないのであろうことが、会話からうっすらと汲み取れる。
このような細かな父の態度から、娘は「大人の事情があるのだろう」と何となく察しているのも彼らの会話からどことなく感じられる。
テーブルや鏡に人物が映っているところを一瞬分かりづらく見せるカットや、壁が画面の半分以上を占めた構図(父が部屋で1人静かにいる場面)などは、映画を撮っている作為的な感じではなく、間接的に一歩引いて見せることで、より日常に入り込んで傍観しているような感覚がした。
時々挿入されるディスコのようなチカチカしたシーンに、現在の彼女と過去の父や自分自身の姿が入り混じる見せ方も、幻想的で良かった。
映画を見終わった後、父の幸せを願う映画なのではないかと感じた。
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