「こころのなかに生きる」aftersun アフターサン humさんの映画レビュー(感想・評価)
こころのなかに生きる
私の心のカメラにのこすから。
どれほど自分といるソフィは幸せを感じていたんだろう。。。
そして、どんなに願っても離れて暮らさなければならないことを理解していることがわかる言葉。
父はそれを胸にしまい、明るく手を振るソフィを見送る。
…………
太陽の熱が白浜の笑い声に降り注ぐ。
プールサイドの潮風が誘うように渡り歩く。
スパを埋めるタイルの異国情緒。
青い空と星の夜を何度も繰り返しながら時間を忘れていく
一年中の明るさを全部集めたようなリゾート地。
11歳の娘と31歳の父のそのままの夏が揺れるカメラ越しにある。
そして時折父や娘をかすめる陰に気づく。
まわりで華やぐ家族たちが過ごすカラッと乾いた陽気なバカンスとは違う何か。
ソフィは今まで通りの天真爛漫で活発な子供のように振る舞いながらも、どこかで父の様子が少しおかしいことに気がついている。
だけど、受けた違和感に反応できるほどに大人でもなく、憂いを帯びた眼差しをたびたび隠せなくなっている思春期の入り口にソフィはいる。
心身ともに大人になり、近くて遠いところにいた親に追いつける日がくることは、だいぶ後になって気がつくことだ。
こどものときにみた姿の残像をつなぎ合わせ、腑に落ちる瞬間が増えていくのはそのサインなのかも知れない。
でもあのときのソフィはなす術もない。
そして、きっとそれでよいのだ。
心のカメラにのこすからという愛おしくも切ない言葉と去り行く笑顔できっと父は報われまた苦悩の底に沈む。
それも、きっと仕方なかった。
……………
父と同じ歳になったソフィが目にする映像は、もう二度と会えない父の思いと幼い自分が抱えた思いが溢れていた。
今だからわかる父がいた最後の夏。
色褪せて傷んでいく紙の折り目とおなじく、過去は1秒ごとに儚く無情に遠ざかっていく。
しかし時を経てひとつひとつを赦し寄り添うことができれば、思い出はこころのなかに生きていくことを知る。
あの輝く太陽の下でソフィの小さな手をやさしく包んだ父が、人として苦悩もしながらも生き、与えてくれた精一杯の愛が永遠になるのだろう。
修正済み
冒頭部分
共感ありがとうございます😊
観れば観るほどしんどさが伝わって来ました。それが何か探りたくなるし、朧げにわかってもスッキリしない作品でした。
人生とはこうなんでしょうね。
仕方ないことだったんですね。
humさん、コメントありがとうございます。
観終わった後でみなさんのレビューを拝見して、やはりそういうことだったのか〜とわかると、改めて虚しさが湧いてきます。
当時のパパと同じ歳になったソフィ、60歳を過ぎたパパがいたら、きっと素敵な関係で過ごせたのに、と思うと、悲しいです。
やはり、わかったうえでもう一度観ないとな。
おはようございます。
今作は、娘のいる私にとっては胸、動かされました。
娘が11歳の時に私は30代後半。娘や息子と遊ぶ週末(今のように映画ばっかり観ていなかった。と言うか子供達と遊ぶ方が癒された。)が日々厳しき仕事をする私には癒しの空間でした。少女ソフィを演じたフランキー・コリオの可愛らしさはあの年代にしか出せないと思いますし、心に闇を抱えるカラムがソフィを大切に思っている姿は沁みました。子供達、当時私とキャンプに行ったり、山に登った事を覚えているのかなあ。では。これからも宜しくお願いいたします。
幸い「父の日」に見ることができました。
見終わった後になってじわじわ来る映画ですね。
主役の女の子は、完成した映画を見て泣いてしまい「なんでこんな悲しい作品を作ったの」と監督に詰めよったとのこと。ちょうど劇中の女の子と同じように(もしかしたら)楽しい映画と思いながら演じていたのかも。
自分の父親のことを考えたり、自分は親として子どもに何をしてあげたのかな、と考えました。