「太陽が急速に膨張し始めたため、このままでは300年後には地球が確実...」流転の地球 太陽系脱出計画 60代の男ですさんの映画レビュー(感想・評価)
太陽が急速に膨張し始めたため、このままでは300年後には地球が確実...
太陽が急速に膨張し始めたため、このままでは300年後には地球が確実に飲み込まれることが判明した。
全国家の政府が連合した組織が作られ、地球を太陽系から脱出させるという巨大事業が始まり、アルファケンタウリ星系を目指す旅に出発する“地球流転計画”が展開する。
まず月面に作った新開発の巨大な噴射エンジンの試運転に成功したので、それを地球上の片側に一万基を建設するという巨大事業が始まる。
20年近い歳月ののち、地上のエンジン設置がほぼ完了したが、月を影響のない場所へ移動させるために月に設置していたエンジンが暴走事故を起こし、24時間で地球に衝突するコースに乗ってしまう。
その前に月を粉砕すべく、地球上のすべての核兵器を集めて月面に埋める。
300か所近くあるそれを同一のタイミングで起爆するために、300人の志願した宇宙飛行士が月面に配置される。
それが間に合うかどうか分からないため、同時に、まだ不完全な地球上のエンジンも始動させようという意見と、それは危険すぎて絶対ダメという意見が対立する。
連合組織のリーダーらしい中国の車イス老人は反対派を無視し、現場の中国人技術者を信じてエンジンの始動を命令。
エンジンは順調に動いて地球は軌道を離れ、月の爆破も見事に成功。
地球は最初の目標である木星に向けて進んでいく、でおしまい。
CGによるスペクタクルシーンは、中国製SFにありがちな安っぽさがなく、マーベルなみのリアルな映像。
僕の歳だとどうしても「妖星ゴラス」のマネとしか見えないお話なのだが、もちろん半世紀前の子供向け作品とは予算もスケールも桁違いの超大作だ。
しかし科学考証無視の度合いは唖然とするほど違いがない。
小中学生の鑑賞だと気にもならないだろうが、僕には、これだけの超大作なのに、あまりにも科学的にデタラメ過ぎるのが気になって仕方ない。
いや、それは無視してかかるとしても、本作はひどく残念だ。
人類全体の話なのに中国人ばかりが取り仕切っているというのも気にしない。
しかし、何を描いているのかを忘れているとしか思えない、中心になるものを放って脇の部分に力を入れるという、中国製アクション映画にありがちなマイナスポイントが目立つのだ。
これまでは中国映画でそういう部分に違和感を感じても、その作品を作った監督なり脚本家なり個人が、物語の語り手として未熟なだけだろうと思っていたのだが、本作ほどの超大作でも依然として存在しているところを見ると、これは中国人の好み、国民性なのかという気がしている。
オープニングの長い大戦闘シーンが本筋と何の関係もないとかはいいのだが、地球を移動させるという人類史上最大の壮大な計画が展開するのに、その計画の細部を描くことに費やすべき時間の多くを、計画に参加している科学者のひとりアンディ・ラウが、死んだひとり娘の脳をスキャンした重すぎる人格データーを、政府の貴重な最先端のコンピューターを私的に利用し、仕事中にモニターにバーチャルな娘を表示させては涙を流すという話をやるのだ。
はっきりとは説明されないが、こいつが娘のデーターを政府のコンピューター間で転送したとたん、機械が誤作動を起こして月のエンジンが暴走、人類を大破局が襲うという流れになるのだが、その事故を起こさせるためだけにこんな面白くもない話をしつこくやり続けたわけかと不快だった。
アンディ・ラウの話はすべて、削るべきだった。
あと基本的にこの作者は、観客に今なにがどうなっているかということを説明するのがヘタ過ぎる。
月爆破と地球のエンジン始動に向かうクライマックスで、どのキャラクターがどこにいて、それぞれ何をしているのか、一度観ただけで、すべての状況がよく分かったという人などいるのだろうか。
それくらい、分かりにくい。
重要なことと、そうでもないどっちでもいいことを同列に扱う、中国的演出のためだ。
と、さんざんな言いようをしたが、こういう子供の頃夢中になったような古い感覚のSFは大好きなので、大きな不満を感じながらも僕は楽しんで観れた。
この手の奇想の話はこれからもどんどん作ってほしい。
物語的にはガタガタ。
映像的には凄かった。