「孫はねずみ男程度」妖怪の孫 ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
孫はねずみ男程度
政治的公平性とか不偏不党などはあり得ないと思っているので、最初に立場を明確にしておくと反与党・反自民・反安倍晋三である。レイトショーの新宿ピカデリーにはそんな自分と同じ思いのおっさん・おばさんが集っていた模様。
菅義偉を扱った内山監督の前作に比べて揶揄や毒っ気は薄味で、米国人ジャーナリストから見た当時の安倍政権への期待感など案外と公平?(冒頭の言とは矛盾するけど)に表現していた。アベノミクスは(成否ではなく)「やってることが大事」という発言とか、野党は反対ばかりでなにもしないと思う人々の心を掴む、侮れない考え方とも思った。
政権に萎縮し、諦め、矜持を捨てた霞ヶ関官僚たちの姿に、現場はやっぱり…というヤバさを感じるし、安部邸への火炎瓶事件を紹介した山岡俊介が駅の階段で転倒した(させられた?)話など、今も見えない闇があると思える恐ろしさがあった。
昭和の妖怪・岸信介似の母・安倍洋子は、東大首席で超エリートの父と比べて坊ちゃん学校のボンクラ劣等生ゆえ晋三には愛情を注がず(個人の想像です)、そんな母親を見返すべく、祖父もなし得なかった憲法改正を人生の悲願としてきた、というのはわかりやすいドラマの筋書きでしかないし、すべて安倍のせい、で済むほど世のなか単純ではない。
銃撃で安倍が斃れ、鈴木エイトが旧統一教会と与党政治家との関係を暴いてみせても、政治家、官僚、大企業、マスコミ、広告代理店、カルト…さまざまなものが結びつく我が国では、議論なきまま防衛費は増額されるし原発の再稼働と増設が決定される。正直、狂っているとしか思えないけど、不寛容とか自己責任とか、本作のヘタウマアニメで批判的に表現されている我々も、その構造に組み込まれている。
強きを助け弱きを挫く映画やアニメなんて観たことないのだから、結局、目の前の政治の不正義を諦めずに地道に潰していくしかないのだろう。そんなわけで、今はガーシーなんかより高市早苗を取り逃がすべきではないと思う。