パリタクシーのレビュー・感想・評価
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個人的なことは政治的なこと
と、何度も反芻。
二つの世紀を生きるということは、その間の政治的社会的文化的背景と併走してきたということ。もちろん若さゆえの軽卒とか思い違いや暴走もあって自分で受け止めてきた結果の人生ではある。けれども、戦前・戦中・戦後を生き抜いた、例えば進駐軍との間にできた子どもを一人で育てることになった日本の女性たちの語れなかった半生を想像してみたりも。
ともあれ、彼女は生き延びた。しかし、この映画の白眉はお涙頂戴の悲劇を描くことでも、長く続いたマッチョな男社会への怒りに燃料を注ぐことでもない。
エスプリの効いた会話・タクシードライバー目線のパリ観光・キレのあるストーリー展開、そして人と人がしっくりくるのは過ごした時間の長さではなくて共感しあえる体験やセンスを見出せた際に生じるケミストリーだと教えてくれた。(これから先、何度見知らぬ人との出会いがあるのかわからないけれど一期一会を大切にしよう!)
それにしても。流れるスタンダードジャズソング(パリだけど、ね)・焼け落ちたノートルダム聖堂・92歳のファッションアイコン・現代フランス社会の労働者の経済事情、、、反芻したくなる要素はたくさんあった!
パリの街と物語と再生
パリの街を転々し、各所に物語があり、そして再生されていく。
パリの街の素晴らしさを感じる。観光地ではない、歴史としてのパリ。
あー、パリ行きたい。
あのレストランのディナー食べてみたい。
やさしく人間が生きることの素晴らしさを感じられた
タクシー運転手とこれから老人ホームに入所する老婆とのストーリー。
老婆のこれまでの歴史を回想する形で、老婆の過去が明らかになっていく。
フランス映画らしく、物語に大きな抑揚はなく淡々と物語が進んでいくが、テンポが良いためあきることはなかった。
この老婆は特別な経験をしてきた人生であると思いつつも、どんな人間にもそれぞれ特別な経験をしているのだなとも同時に思わされて、人間が生きること、人生とは悪いものではないなと思わせてくれる作品であった。
誰だろうと回顧したくなる
92歳まで生きなくても、自らの生きた場所を確認したくなるだろう。その回顧に寄り添ったタクシードライバーが、最後にハッピーエンドを迎えることで、人との付き合い方を考えさせる内容になっているかも…。
波乱万丈の人生だったけど、最後に良い思い出を作ることができたのも、真摯に生きてきたからかも知れない。
勝手にコメディーかと思ってたけど、良い話でした。
ジェノサイド
ありがちな作品ではありましたが、マドレーヌがDV夫になかなかな復讐をしたこと、反ジェノサイドの女性活動家だったことが、意外性があり良かったです。一昔前であればこの手の作品は、夫や子供との良い思い出とか、そんな生温な感じだったと思うので、時代が変わったと思いました。また、フランス人は各自が自分勝手に自己主張して羨ましい。もうそれで良いのですよ。でも日本だと袋叩きにあいます。
箱のなかの話し
大都市パリを走る箱のなかの二人の話し。誰もが迎える終活と、まだまっただなかの苦い人生。半日の箱の外は二人の話しと今は無縁だが、しかし、この猥雑な風景が全て、二人のドラマを生み出したのだ。久しぶり、良い映画を観たなぁ、という実感。劇場内が急に眩しくなり、仕方なく猥雑でがらんどうな新宿の街に戻った。
パリタクシー追憶巡りコースおひとり様
疲れた中年タクシードライバーと92歳の老女の1日だけの寄り道の旅と言う設定だけで、『いい映画』確定なんだけど、そこはフランス映画,一筋縄ではいかない人情劇でした。パリのあちこちを廻りながら、老女の追憶を辿るのは定石的だけど、彼女の辛い人生が戦後フランスの女性人権史のようなのが面白い所です。彼女のDV夫への反撃はドン引きしそうになるけど、サッと現在の彼女に場面転換するのが上手い所で、監督のクリスチャン・カリオンの阿吽の呼吸はなかなかです。エンドロールも、彼女の最も愛した思い出のシーンで、涙腺崩壊です。役者では、主演のお二人がキャラにピッタリの名演でした。ダニー・ブーンのしかめっつらから笑顔になるあたりは、本当に味があっていい感じだし、リーヌ・ルノーは、貫禄がありながらも辛い過去でもサラッと流すお茶目振りが魅力的です。彼女の若き日を演じたアリス・イザーズも、キュートで、若い時のエマニュエル・べアールを思い出しました。
ベッソンじゃないやつ
パリの素敵な街並みを舞台に人生いまいちうまくいってないタクドラとやたらと饒舌な客の老婆が昔を振り返りながら紡ぎ出す心温まるストーリー…と、予告編からラストのオチまで含めて想像されるまんまの展開なのだが、婆さんの過去バナには意外性があり、今の時代性が盛り込まれていた。人権に関してはどこよりも進んでると思われるフランスでさえ、前世紀の半ばはまだ女性の権利もへったくれもない国だったとは。世の中動かすにはガスバーナー持ち出すぐらいの強さが必要ということか(違うか)。
最近のフランス映画はこんな人生イイ話みたいなのが多い気がするが、全体にあっさり目というか、もう少し展開や演出に工夫のしようがあるように思う。たとえばシャルルがカメラで妻の気を引いて、マドレーヌの息子がカメラマンになったつーんなら、写真を使った二人に通ずるエピソード作るとか…。90分でサクッと観られて、これはこれでいいのかもしらんけど、設定の割にあまり感動のない話だったエール!がコーダあいのうたにリメイクされてアカデミー賞を獲ったように、盛り上げようはあるかと。
低予算だし脚本に気を遣えば、日本でも各地の観光案内を兼ねたご当地映画としてもリメイクできそう?
グランドホテル形式類似の設定が醸し出す雰囲気の味わい
本作にはタクシー運転手のシャルルと、乗客のマドレーヌという明確な主役が設定されているので、正確に言えば当たらないのですが。しかし、ごく限られた場面の設定(タクシーの車内)で展開されるドラマということでは、これも一種の「グランドホテル形式の映画」と言えるのではないかと思いますし、その広くはない舞台設定が、シャルルとマドレーヌとの関係性に、一種独特な雰囲気を醸し出していたことも、間違いはないと思いました。評論子は。
シャルルが運転するタクシーの車窓に流れるパリの街の風景が、あたかも「走馬灯」のように、マドレーヌが語る彼女の人生の思い出をリアルに紡いていたと思われます。
その雰囲気が存分に味わえるという意味では、佳作であったと思います。評論子は。
ひとつの怒りでひとつ老い、ひとつの笑顔で ひとつ若返る
名言をひとつ得ることができました。
いつもハリウッド大作的な映画を観に行ってたのだけど、何故か妙にこの映画を観たくなって行ってきました。もともと涙腺の弱い私だけど、予想にたがわず久しぶりに涙ボロボロでした。
細かい点は気にせず、ストレス解消に是非鑑賞して涙流してください。
走馬灯
街でバッタリ知り合った高齢者の方に気に入られて遺産を譲ってもらえることなんてないかな、なんて邪な考えを持ってる方は鑑賞をお控えください。私もそういう人間でしたが鑑賞中はそのようなことはつゆほども考えませんでした。
マドレーヌが暮らした50年代のフランス、いまやジェンダー平等が進んだこの国もこの頃はご多分に漏れず男尊女卑の女性が生きづらい時代。
どんなにひどい仕打ちを受けてもただ耐え忍んで生きなければならない女性たち。当時離婚が少なかったのはそうした女性たちが耐え忍んだことの結果であろう。
そんな時代にあってもマドレーヌは進歩的な女性だった。自分への暴力に耐えかねてというよりも、命より大切な息子に暴力をふるう夫が許せなかった。
彼女は夫に制裁を加えるが、この状況なら現代では禁固刑25年はありえないだろう。その後彼女は女性活動家としてその人生をささげる。
ただ本作ではそういう女性問題はメインではなく、あくまでもマドレーヌとシャルルの束の間の交流がメインだ。
袖触り合うも他生の縁、タクシー運転手というのはそういう点で物語性のある魅力的な職業だ。それを題材にした作品は過去にも多い。
特に本作はコロナ禍を経験した世界にとってタイミングの良い公開だった。ディスコミュニケーションのいまの時代、他者との交流に飢えた人々にとっては心を癒してくれる作品として。
日々、借金に追われ心に余裕がなかったシャルル。そんな彼がマドレーヌと出会い束の間を過ごし、心を癒される。
彼女を施設に送り届けたあと、彼にとって見慣れた街の景色はいつもと違って見えたはずだ。
マドレーヌとの交流でシャルルが癒されたように本作を鑑賞した観客も癒された。今のこんな時代だからこそ、より人々の心を和ませる作品として価値のある作品。
束の間、話があっただけなのに
こんなくその堕落した中年太りのタクシー運転手にたまたま手配され、たまたま話しが合い、互いの身勝手な抑制の効かない根本喋り好きと思われる自分視点の想い出という言い分に付き合って貰ったただけで大金差し出すなんて女性の地位向上を訴える活動家としては話しが甘すぎる。
もっと他に寄付すべきところあるのでは?
寝てしまったからこそ伝わり受ける作品の雰囲気や質が肩入れなしに感受出来ました。
ただ感動したいだけだろ。
歴史の語り部
観てよかった。
2021年、見かけは綺麗だが、コロナ禍後で景気は悪く、人との繋がりは薄れ、自分さえよければと誰しも皆ギスギスしている、フランス・パリ。
この国でも、40代半ばは特に煽りを受けてまともな仕事もなく、非正規待遇で高リスクな仕事を受けている人が多く。
92歳のマダムを、タクシードライバーが介護付き老人ホームへ連れていく道中、思い出の土地を回りながら過去を語る形態で映画は進む。
ナチスによるフランス占領、ナチスの虐殺被害にあった父、連合軍によるフランス解放、米兵との恋と別れ、予期せぬ妊娠、結婚相手のDV、女性にまともな人権のなかった時代の不当な裁判……
パリの美しい観光名所を巡りながら、その街で過去に何があったのかという歴史の語り部としての老婦人・マドレーヌ。
彼女の過酷な人生を知り、今が最低だと思って苛々していた自分を恥じ、優しさを持って、改めて人生をやり直したいと感じた46歳のタクシー運転手シャルル。
今の時代に翻弄される人々に、いろいろな気づきを与える二人の、小さな街の中のロードムービーに拍手。
1ユーロ147円とすると…
約1億5千万円!いやーお年寄りには親切にしといた方がいいなー。どこかで観たようなエンディングだと思ったら韓国映画「Sunny永遠の仲間たち」と同じオチか。洋の東西問わず「情けは人のためならず」ということだね。
…などというゲスな感想はともかく、ドライビング・ミス・デイジーばりの老婦人とオッサンドライバーのハートウォーミングコメディかと思ったらとんでもない。主人公の人生のあまりの波瀾万丈さに大衝撃を受ける。なんせナチス占領から米軍の駐留、女性の地位向上運動とフランスの戦中戦後史をもろ駆け抜けてきたわけで。だが平凡だろうと波瀾万丈だろうと、最後は誰もが等しく銘板に名の刻まれた箱に収まって終わる。2人の交流もさることながら、最後の墓地のシーンで人生多少羽目外そうが思うままに生きるべきとの思いを強くした次第。
意外に戦後も男尊女卑だったフランス
老人ホームに入る老婦人を乗せて渋滞のパリを横断する黒いルノーのタクシー。車内で語られる婦人の半生の凄まじいこと。最初はつっけんどんだった運転手も、話を聞いていくうちに心を開いていく。エンディングはちょっと辛い。カムカムエブリバディでも重要なモチーフだった「On the sunny side of the street 」がここでも活かされていたのが嬉しい。
人生はつかのまの旅の様に時は流れて
素敵な出会いそして心温まる展開。
見終わった年老いた女性たちが口々に『いい映画だったね』と語りあっていた姿が印象的。
人は時として変わっていくもの。良くも悪くも。
思い出だけが鮮やかに心に残る。
舞台がパリと言うのも悲しみより素晴らしさに変えてくれた様な気がします。
もう一捻りが私としては欲しかった。
実はこの運転手は…みたいなね!
韓国ドラマの見過ぎかもしれませんが。
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