パリタクシーのレビュー・感想・評価
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まあ、わかりはするけど、
顔を醜く見せるも見せないも表情ひとつ
⭐︎4.1 / 5.0
まるで人生相談タクシー
どんな思い出も、人生
人に使われず自由だが1日12時間、休日もほとんど取れず、経費も自分持ちで安いお金で働かざるを得ないタクシードライバー。人生に嫌気がさした八方塞がりのシャルルが乗せたのは、美しい青い瞳の上品で毅然とした92歳の老婦人だった。
ぶっきらぼうな彼に語りかける彼女が老人ホームへ移る旅は、これまでの過酷な人生を振り返る旅となる。生きにくかった日々を過ごしたいくつもの場所に立ち寄る。辛いけれど、かけがえのない大切な思い出。静かに語り続けるユーモアに満ちた人柄が、シャルルのやさぐれた気持ちをほぐしていく。彼女の短い旅は、シャルルが生き直すための旅でもあったのだ。
人を変えるのは、ほんの1日の出会いでいい。そんな切なくあたたかな気持ちになる映画。
人との出会いって大事
パリ、青き空の下の思い出
20数年前、私は数日間、パリを旅した。
貸切タクシーなんて優雅なものではなく、地下鉄と自分の足でどこまでも街を歩いた。スリに気をつけながら・・・。
歩道から見上げる街並みは、映画のセットのようにどこまでも風格があって、スカイラインが揃っていて、一直線に伸びていた。セーヌ川に架かる様々なフォルムの橋は絵になる美しさだった。
しかし、目を下に向けると、歩道にはゴミや犬の糞が・・・。凱旋門の上から眺めた放射状の街並みは、屋上にところ狭しと並べられた室外機とタンクと水蒸気だかなんだかわからない煙で一気に現実に引き戻された・・・。
美しき夢の世界と現実が同居している街なのだと思った。
朝、昼、夜。車窓から観るパリの街は、どこまでも美しい。夢の世界だ。
フランス映画なのに、バックに流れる曲は英語歌詞のアメリカ懐メロ。違和感を覚えたが、話が進むにつれてどんどん馴染んでいくから不思議。
豪邸から施設に移るというマダムとドライバーが最後どういう関係になり、どのような別れになるのか、なんとなく想像がついた。でも、そこに至る過程のマダムの物語は想像を超えたものだった。
マダムが語る壮絶な過去。厳しい現実の世界。愛と戦いの日々を乗り越えてきた彼女。しかしその佇まいはときに悲しみと憂いと静かな怒りを見せながらも、どこまでも穏やかで、ユーモアで、お茶目。ドライバーの苛立ちとささくれだった心がどんどん柔らかくなっていく。
寄り道だらけの1日は、死期を悟ったマダムが人生の節目を振り返る最後の旅だった。距離にして数10キロの旅だが、ドライバーが年間12万キロ走っても手に入れられないような1日になったに違いない。だから、愛する人と一緒に彼女に会いに行った・・・。多分、言いたかったのだろう。「ありがとう」と。
生きていく中でぶつかる厳しい現実。
それを美しい風景と音楽と、滋味ある演技で丸ごと包み込んで、暖かで静かな余韻を残す映画だった。
腕を組んでもいいかしら トレビアン あした会う誰かに、少し優しく、笑顔を向けられそうな気がします。
多かれ少なかれ、呉越同舟。
タクシーで乗り合わせる運転手さんとお客さんの関係。
それは、たまたまの偶然に道端で手を上げたお客と、そこに通りかかった運転手の出会いの物語なのだ。
それぞれの人生は、もちろん車内でそれを語らないならば お互いに知る由もないし、もうそれっきり二度と会うこともない一期一会の同席だろう。
宗教と 野球と 政治の話題はご法度なのだそうだ。
それでも、必要があってその車に乗せてほしいと願った誰かの人生と、それを拾った側の人生とは、交差点でかすかにクロスする関係。
パリ五輪が終わったばかりで、良い映画を観たと思う。
あの街に住む人たちと、その人たちのかつて住んでいた家の跡地の姿。家族や恋人の思い出。人と歴史。喜びと悲しみ。
そして、そんな人たちが生きている今のパリの街並みの、とくに夜の通りの美しさには目がうばわれる。
老婦人の辿ってきた歴史の重たさには、まさかまさかの驚愕の連続なのだが、胸が騒ぐ物語の進行に合わせて、それをまた贖ってくれる英語歌詞のジャズが挟まり、エンドタイトルでは静かなオリジナルサウンドトラックが、素晴らしい余韻の一時を与えてくれるのだなぁ。
老人ホームに近づくにつれて黙ってしまうシャルルとマドレーヌ。
鑑賞しているこちらまでも、夜の暗い車内で、別れの予感に、たくさんの物思いに言葉数が減ってしまう時間だった。
この「同行二人」は、実はタクシーでも夫婦関係でも、もちろん会社での人間関係でも同じことなのだ。
サービスと、いくばくかのお金と、思いやりとが、その同行二人の人生を支えてくれることがよくわかる。
不機嫌な客、攻撃的なモンスターな客、酔客、多弁な客・・たくさんの出会い。
タクシーの運転手さん、そしてフォロアーの皆さん、お疲れさまです。体も心も大切になさってください。
ご安全に。
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なお、
本作のために出演を快諾し、マドレーヌの生き様と自分のライフスタイルを重ねた、女性の権利獲得活動家にしてシャンソン歌手=主人公役のリーヌ・ルノーの人となりについては ―
VOGUE JAPONの
「情熱は人生のすべてです」──94歳の現役俳優兼シンガー、リーヌ・ルノーが絶やさない活動への情熱【世界を変えた現役シニアイノベーター】
がとても良いレポートを上げているので、ご一読を。
また、
劇中で流れる英語詞のシャンソン・R&Bは、主人公マドレーヌのその時々の心境を表現していました ―
①エタ・ジェイムズの「At Last」。
〽やっと最後に幸せが
②ダイナ・ワシントンの「This Bitter Earth」。
〽この苦い世の中に愛はあるのか
③最後はダイナ・ワシントンの「On The Sunny Side of The Street」。邦題「明るい表通りで」。
もちろんこれらの楽曲は、マドレーヌが繰り返し口にした「50年代の女たち」が押し潰されて生きていた'50〜'60年代の、
その時代の黒人女性歌手たちの歌唱がチョイスをされています。
YouTubeではリーヌ・ルノー本人の歌唱「パリの空の下」も聴けてとても良かったです。
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たった90分の映画ですが、小道具=写真機カメラの伏線と、出演者たちの美しい目のカットが幾度も印象的に映るスクリーン。心が捉えられてしまうこと請け合いです。
走馬灯のように一瞬だったという92年。
父親を殺され、恋をし、虐待を受け、一粒種をベトナムで失い、出所し、そして老人ホームへ向かう道中。
「腕を組んでもいいかしら?」とマドレーヌは僕たちに訊くのですよね、
そして僕たちは
「ウイ、トレビアン、もちろん」と誰かに応える必要があるのですね。
話を聞くこと。一緒にご飯を食べること。共感して泣くこと。
嫌なドライブで始まったこの映画が、「どうかこのまま終わらずに走り続けて欲しい」と願い、川沿いの緑や、夕暮れのカフェ通りや、修復中のノートルダムや、舗道や、夜の街の軒々を、あの二人と一緒にずっと車窓から眺めていたいと願ったものです。
でもひとは別れる。
寂しいが、別れる時が来る。
シャルルならずとも
あした会う誰かに、
少し優しく、笑顔を向けられそうな気がします。
おばあさんのダイナミックな人生
タクシーに乗せた高齢のおばあさんとタクシー運転手との交流。
おばあさんから語られる決して幸せとは言えなかった人生。
最初は聞き流していた運転手も、だんだんと興味を示すようになる。
最後は予想通りの展開だったが、自然と涙が出た。
バリらしいルノーのタクシー。
そしてパリのキレイな街並み。
パリの街並みがホントに美しい。。
劇中、アメリカの1950~1960年代っぽいオールディーズが流れる。
おばあさんの過去の人生のシーンとともに。
フランス映画なのに、なぜって思ったけど、マッチしてた。
流れる歌の字幕の歌詞がそのシーンと合わせた内容だった。
運転手役の役者さんも渋くて愛嬌があってよかったし、92歳のおばあさんも良かった。
おばあさんのダイナミックな人生に驚きながらも、最後はハートウォーミング的に感動してしまった。
良い映画でした。
92歳になった私と若かった頃の私が手を重ねて視線を交わすシーンが良...
10分で飽きた人はきっとこの映画面白くないでしょうね
感動した。非常に美しい物語。いや、現代のおとぎ話か
さえない中年男が人生に躓き、ひょんなことからタクシーに乗せた乗客の老婆と、いつの間にか心を通じ合い、その老婆の人生をたどるツアーが始まる。
ざっとこんなところだが、パリの街並みと少しの歴史が見事に挟み込まれ、まるで父親の運転でおばあちゃんの家に遊びに行く道中のような気分になる。
まあ、それ以上でもそれ以下でも無いのだけれど、簡潔にまとまって、スッキリ見終わることが出来る。
むかし『ハリーとトント』なんていう映画があったが、あれは老人が飼い猫と旅に出るロードムービーで、ハリーが猫のトントに話しかけることで身の上が語られていく巧みなストーリーテリングだった。ハリーは子供や血縁を頼ってあちこち訪ねまわるのだがどこでも厄介者扱いされ相手にされない。そんな独居老人の孤独とノスタルジーを語る映画だった。
この映画でも老婆は美しい思い出として昔を懐かしむが、それ以上につらい出来事が語られていく。誰しもが同情を禁じ得ないと思う。多かれ少なかれ生きていたら死ぬほど苦しい思いをしたことがあるはずだ、
出来過ぎていてちょっとついて行けないという意見もあるかもしれないが、私はとても楽しめました。
フランスらしい、粋で素敵な90分
それでもいいんです
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