劇場公開日 2023年4月7日

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「パリの、青い空、 人生の手練れ」パリタクシー かばこさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5パリの、青い空、 人生の手練れ

2023年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

出会った瞬間からイライラして怒りっぽいタクシー運転手と上手にコミュニケーションしてお互い気分良く心開けるように持っていく92歳の老婆。言葉の端々に見える、相手への思いやり。
これはタダモノではない。少なくとも世間知らずな奥様ではない。おそらく山あり谷ありの道を歩いて、酸いも甘いも嗅ぎ分けて、種々様々な人々と接して付き合い方を身に着けた人生の手練れに違いないと思わせるところがあり、この老婆のリクエストを叶えることでどんなことが起きるのか興味が途切れない。

「あのこと」を観たときも思ったが、自由と平等の国と思っていたフランスが、女性に対する差別が割と最近まで強かったのに驚く。彼女がDV夫を殺さず、バーナーで焼くにしたのは、暴力夫の非道さを世間に訴えて戦う気持ちがあったからだ。(今のフランスに事実婚が多いのは、結婚すると女性の立場が極端に悪くなる歴史がある、またはその名残りからかも、と思った。)裁判の過程にムカムカしたが、話を聞いているタクシー運転手のシャルルも憤慨する。今はそういう時代だ。

父は殺されDV夫に苦しめられ、理不尽に(当時は普通!)投獄され、愛する一人息子と再会するも釈放翌日に別れたきり海外で死なれる、女性として考えられる不幸のフルコンボだが、へこたれずに晩年は女性の権利獲得運動のリーダーとして活動してきた素晴らしい女性、彼女の人としての奥深さはこういう生き方から自然に身についたものなのだろう。というか、元々が理不尽とは戦う、という芯の一本通った人だったんだろう。

パリの町並みと青い空が美しく、気持ちがいい。
シャルルがマドレーヌに徐々に惹かれていくのがなんか嬉しい。
彼がタクシー代を受け取らなかったのは、「次に来るときにもらう(絶対にまた来る)」という根拠を残すため。この気持ちが、最晩年をひとりぼっちで迎えたマドレーヌにはどれほどかうれしかっただろう。最後の晩餐として自腹でディナーに招待してくれたりもして。
ラストは出来すぎだけど、マドレーヌとシャルルの、お互いの心意気がもたらした最高の収まり方だと思う。

殺伐とした世の中だけど、こんな「いい話」があってもいいです。

かばこ
かばこさんのコメント
2023年6月26日

Mさん

強欲ばあさんがいない舌切雀、といいましょうか。。
でも、舌切雀とか、とかく強欲=女性って!
こんな話を引き合いに出したらマドレーヌに申し訳ないですね

かばこ
Mさんのコメント
2023年6月26日

はい。いい話でした。
欲をいえば、最後はお金が絡まなかった方がよかったです。

M