「いい話だったなあ」パリタクシー CBさんの映画レビュー(感想・評価)
いい話だったなあ
老女と中年男性のタクシー運転手の話。
パリの端から端までタクシーで行くという老女。「向こうの端だぜ?」と聞く運転手に「隣の家なら歩いて行くわよ」と切り返す老女。ここは、どんな感じのやりとりだったのだろう。パリの端から端までというと10kmくらいか。であれば、運転手にとっては手頃な距離だと思うが、やはり「わざわざ呼んだなら、もっと遠距離を頼むよ〜」という心からの憎まれ口と、それに対するカラッとした切り返しってところか。
そんなやりとり一つで、主人公ふたりのプロフィールというか、こんな感じの人ってのを俺たち観客に、瞬時に伝えてくる。このあたりは、脚本や監督の腕だよね。「あなたって苛立っていて憎まれ口きくけど荒っぽいわけじゃ無さそうな人ね」とか「お、口は悪いが、気持ちのよさそうな婆さんだな」なんて説明的なセリフをいかに入れずに、人物紹介していくか。俺にとってのいい映画の条件の一つは、そんな感じ。
そして、やはり楽しいロードムービー。タクシーだけに二人の会話と回想が中心となる。自分の過去を語り出す老女と、最初は運転手の儀礼として事務的に相槌を打つが、生来の人の良さからかだんだん真剣に聞くようになる運転手。ちょこちょこ寄る先々で、彼女の波乱の人生が語られ、回想される。苛立っているばかりだった運転手の顔に、本来の彼を示す笑顔が徐々に増えていく。そしてその合間で、ふと差し挟まれる他の人との関わり。本作では、トイレを借りるシーンと到着して入所するシーンくらいか。いずれのシーンも、二人の外側にあって二人にやや冷たく、二人の結びつきを強固にする役割。ロードムービーって、この「二人の繋がりの変化を時系列で観る」ってのが、醍醐味だよね〜。
ラストは、正直、「お、都合が良いな」と思うけれど、お話には都合の良いことも必要だと思うんだよね。俺の心の中で「そんな風にあってほしい」と思っていることは真実なのだから、そんな風にあったことを、素直に感動したい。
いい話でした。そして自分もパリを旅した気になれる綺麗な映画。拍手。
おまけ1
味がしたのは、クリスマスと正月に出るアイスだけ。壮烈。
おまけ2
一つの怒りで歳をとり、一つの笑顔で若返るのよ。知って得した。
おまけ3
あなたはすごくロマンチック、内に秘めてるだけ。見抜く力。
CBさんこんにちは。
いつも沢山の共感とコメントを頂き、ありがとうございます。
こちらもレビューを楽しく拝読させて頂いています。
本業、副業(会社の許可得てちょこっと)、週2回の習い事、他の趣味、時々家業の手伝い等々で、映画は観られるときに観て、できるだけすぐレビューを書くという生活を送っています。
レビュー投稿が連続集中したり、しばらく間が空いたりしますが、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
ではまた、共感作で。
アイスクリームの味の話、
投獄はされたが自分は間違ってないと信じていたが故の、彼女の強さとユーモアを感じたエピソード。
年寄りのように味わい深くて滋味のある言葉を語れるジジイになりたいです。
きりん
コメントありがとうございます。
東横インに泊まった際は大体映画を観ています。
ホテルのVODしかないという選択肢が限定されている状況だからこそ、普段観ない映画との出会いになりますね。
序盤あんなに無愛想だったシャルル。
そんな彼がマドレーヌとのドライブを経て、ラストでマドレーヌの死に涙するシーンは胸打たれました。
思わぬ出会いが人生を変える。まさに一期一会。
なんだっけ、フランス映画で頑固親父(リッチ)がスイスで安楽死するー!っていう話で困ってしまう娘の一人がソフィー・マルソー。フランスでは安楽死も自殺幇助もダメなので重い話ではあるんですが、頑固親父がどうにも可愛く、娘たちもしょうがないわね~的で楽しく笑えた映画でした。良いさじ加減!フランス人てちょっと皮肉っぽい印象があるけれど、人生は人それぞれじゃ!という感じ、いいですね