劇場公開日 2023年4月7日

「個人的なことは政治的なこと」パリタクシー kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0個人的なことは政治的なこと

2023年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

と、何度も反芻。
二つの世紀を生きるということは、その間の政治的社会的文化的背景と併走してきたということ。もちろん若さゆえの軽卒とか思い違いや暴走もあって自分で受け止めてきた結果の人生ではある。けれども、戦前・戦中・戦後を生き抜いた、例えば進駐軍との間にできた子どもを一人で育てることになった日本の女性たちの語れなかった半生を想像してみたりも。
ともあれ、彼女は生き延びた。しかし、この映画の白眉はお涙頂戴の悲劇を描くことでも、長く続いたマッチョな男社会への怒りに燃料を注ぐことでもない。
エスプリの効いた会話・タクシードライバー目線のパリ観光・キレのあるストーリー展開、そして人と人がしっくりくるのは過ごした時間の長さではなくて共感しあえる体験やセンスを見出せた際に生じるケミストリーだと教えてくれた。(これから先、何度見知らぬ人との出会いがあるのかわからないけれど一期一会を大切にしよう!)
それにしても。流れるスタンダードジャズソング(パリだけど、ね)・焼け落ちたノートルダム聖堂・92歳のファッションアイコン・現代フランス社会の労働者の経済事情、、、反芻したくなる要素はたくさんあった!

Kumiko21