「原潜泥棒は「序章」に過ぎないのか。」沈黙の艦隊 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
原潜泥棒は「序章」に過ぎないのか。
かわぐちかいじの原作が、発表当時話題になったことは知っているが読んだことはない。映画の第一印象としては、海中と地上で緊迫感のあるやり取りがいろいろあって面白かった。一人の潜水艦長の常軌を逸した行動に日本もアメリカも振り回されるのが愉快である。しかし肝心の海江田の意図が伝わってこないのでモヤモヤする。世界平和を目指しているらしいが、潜水艦の乗っ取りとどういう関係にあるのかよく飲み込めないし、なぜ乗組員が全員この無謀な企てに賛同しているのか不思議である。多分、入江が言っていたように、卓越した操船技術とカリスマ性が人をひきつけているのだろうが、日米両国を敵に回すような動機が見えない。核ミサイルを持っているぞと脅すだけで独立国家を名乗れるほど現実は甘くないと思うのですが。
深町にとって海江田は潜水艦乗りとして認められないという思いがあるようだから、人物的には悪役の面があるのかもしれない。ヒーローでも悪役でもどちらでもいいけれど、もう少し共感できる部分がないと作品としてはなかなか評価しにくい。
音だけを頼りにする潜水艦内の様子が丁寧に描かれているし、海中での潜水艦の動きや攻撃もリアル感があってとても良いと思う。
この中途半端な終わり方はきっと序章に過ぎないと思う。次回は海江田の事を掘り下げて密着して描くことになるだろうから、きっともっと面白くなるだろう。核抑止力の問題ももう少し現実味が出てくるかもしれない。
ネタバレに近いかもしれませんから例え話ですると、海江田はまず日本と軍事同盟を結びますが、現在のウクライナなんかとも軍事同盟を結んでおけばロシアが攻めてくる事はなかったであろう…というのが海江田が目指す世界平和と「やまと」の役割です。
まだ他にも海江田の思想理念はあるのですが、後は続編を待つしかないですね。