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ソル(ナイマ・センティエス)の演技は驚くしかない。
父を失う揺れ動く7才の心を、ほぼ視線だけで存分に演じきっている。
唯一ソルがカメラ視線になったのは、最後の火を見つめる無言のシーンだけ
吹き消そうとしてやめる長いこのシーンは
観る者に様々な思いを抱かせて終わる
また、従姉妹のエステルも凄い。あれが本当に演技なの?
あれが監督達がシナリオに書いていた台詞なの?
実はそれは、監督の計画の賜だった
カメラの存在を感じさせない自然な言動は
ドキュメンタリーの手法が用いられたからだった
しかも、お互いが家族&親族だと思い込めるように
3週間もかけて打ち解けさせた後で、撮影日程はたったの24日!!
大人の演技も「その場の状況に反応する」という
アドリブに近いアプローチで臨んだ結果だとのこと
メイキング映像をこれほど見たいと思った作品はない
プロローグからして、凄い!と思わせる
原題「TOTEM」という文字のデザイン化と、それに込めた想いに「!」
是非これは調べてもらいたいな
映像は、母とソルが実家に戻る際に、橋を渡る間、息を止められたら
“願いが叶う”とのやりとりで始まる ここにも様々な伏線がはられていた
長女アレハンドラ 次女ヌリア そして癌のトナ 弟のナポ
4人兄弟のそれぞれの違った形での愛が、散りばめられている
家族の誰からも冷ややかに見られながらも、
給料の1/4を出してでもお願いした 超怪しい悪魔払いはアレハンドラが企画
病気の当事者ではなく、自分が安心を求めて藁をも掴む思いで行っていることが
個人的には滑稽でもあり、金儲けに走った宗教のあざとさをも皮肉る
聞き慣れない量子療法を試したのは、弟ナポ
この2つは、メキシコでは一般的な風習でもあるのだそうだが
そして(私のおチビちゃん)と言ってトナを抱きしめるヌリアの行動は忘れられない
酒を浴びるほど飲みながら、2度にわたって仕上げた誕生日ケーキには
精神病院で仕上げたというあのゴッホの「雪月花」が描かれる
彼女の苦悩と、ゴッホの狂気が重なり合うが
トナはその絵を「パパをからかってる」と意味深な言葉で切り返す
給料も滞納気味であるにも関わらず、家族以上に献身的に尽くすヘルパー:クルスは、
7才のソルにも「貴方が1番輝いている」等と言って繰り返し優しく励ます
そして、トナの望みを叶えるために内密に絵を売るという行動も・・・
また、家族には、光にこだわりを持つ名前がずらり
ラテン語を起源としたスペイン語でそれぞれ
母のルシアは「光」 従妹のエステルは「星」 娘のソルは「太陽」
「壁を這う虫」や「カタツムリ」「ミミズに似た虫」が印象的に使われてたのは
「人間も虫も、大きな宇宙の一部である」という監督の哲学的な思想によるもの
ガンジーの「良きことはカタツムリの速度で動く」とも響き合う
1人では立つことも出来ない病状の中、娘のために絵を完成させたトナは
「これを描いたのは、絵で(パパとソルが)会うためだ
人生ではすごく好きでも会えないことがある でもいつもそばにいる」
と、ありったけの愛を振り絞って伝えるシーンは、切なすぎて・・・
盆栽が1960年代から世界に広まった事実を今回初めて知ったが、
8年間も丹精を込めて育てた自慢の品を、息子への最後の誕生日として渡す
父:ロドリゲスの心境たるや
一方で「貧乏だから、満足な治療が受けられない」というメキシコの悲劇は、
同時に「過剰な薬漬けの延命治療から解放され、家で死ねる」という
日本人が既に失った贅沢(尊厳死)でもある
合わない抗癌剤で、多額のお金と終末期を奪われ、
独りぼっちの病院で過ごす日本は、果たして彼等より本当に幸せなのだろうか
愛とは何か 生とは何か 幸せとは何か 家族とは何かを問う
素晴らしい作品に出合えた気がする