「精神疾患を抱えている人と職員とを見分けるのも難しかったりする」アダマン号に乗って ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
精神疾患を抱えている人と職員とを見分けるのも難しかったりする
どの人が精神疾患を患っていて、どの人が職員なのかわからなくなる。精神疾患の種類も重度も異なるので、健常者と見紛う人も多い。我々が先入観で引いてしまう境界線なるものを曖昧にする。それがこの映画の狙いでもあるのだろう。もともとパーフェクトな人なんていないし、誰しも欠陥を抱えて生きているということだ。
ドキュメンタリーによくある一人一人の背負ってきた人生や状況などを紹介するようなこともほぼない。また、映画や音楽、文学、絵画などを語る人も多く、楽器(ピアノ、キーボード、エレキギターなど)を演奏する人、自作の歌を歌う人もいる。自分達の興味のあるもの、自信のあるもの(とりわけ芸術が多い)を通して社会と関わりながら、正常(?)といわれる人達が営む生活に、彼らが(望むならば?)近づき交わることも可能にしようとしているのだろう。
セーヌ川に浮かぶしゃれた船(アダマン号)、芸術、饒舌、たんたんと…精神疾患を抱える人に対するケアのありかたも何となくフランス風と言うところかな。
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