「心の豊かさとは」アダマン号に乗って ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
心の豊かさとは
セーヌ川に浮かぶアマダン号。そこは文化活動を通して精神疾患の人々を支援するデイケアセンター。
カメラはそこに通う人々の言葉や行動をひたすら映し出していく。
インタビューによって何かを引き出そうという感じではなく、ただ彼らの思いのたけを繋いでいく。
音楽、絵画、ダンス、そして対話。世間でいう社会とは別のもうひとつの社会。
文化は心を豊かにする。そう信じたい。
だが、世間でいう社会にいると時々息苦しくなる。
世渡りが上手い人間に対して、「あいつはバランスがいいから」という言葉が一様に返ってくる。
バランス感覚って?
人の顔色を伺いながら、余計なことを言わず、対話をしているふりして、そつなくなんでもこなすことか。
そもそも心の豊かさって一体全体何なんだろう。文化と社会は両立し得るのか。
彼らは少なくとも対話をしようとしている。素直で率直で自分なりの文化を持っている。
他人の問題も自分の問題もきちっと認識している。
ひるがえって自分はどうなのか。まともな対話をしているのか。自らの文化を語ることができるのか。小賢しい技ばかりを身に着けて、いつも真実から目を遠ざけているだけではないか。ひとこと多いと言われないがために、変に自分を取り繕っているだけなのでは?
アマンダ号の小さな社会を観て、なぜか恥ずかしくなった。
世間で言う社会の中で、心の豊かさを忘れかけている自分を垣間見たようで。
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