パスト ライブス 再会のレビュー・感想・評価
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互いを大切にした3人の大人たち
もしもあのタイミングで選ばなかった人生を選んでいたとしたら…。
それを想像はしても、無邪気に選択し直せるようなメンタリティは、多くの人は持ち合わせていない。
だからこそ、人々は映画に自分の人生を重ねて、選ばなかった人生をあれこれ思い描いたり、選んでいる今の人生を、改めてそっと肯定したりするのだと思う。
この映画は、そうした私たちの心の動きにとても近い形でストーリーが展開していく。
ぶっちゃけて言うと、この映画では、劇的なことは何も起きない。
というより、登場人物たちが何も起こさない。
けれど、意図的に何も起こさないという大人の振る舞いが、観ているこちらに、こんなにも豊かな思いを与えてくれるのかと気付かされた。
ラストシーンがいい。
永遠に思えるような、もどかしいくらい短いような…。
セリフも、彼らの動きもシンプルだが、足りないものは一切なく、しみじみと深い余韻を残す。
それぞれの街の美しい風景にも心惹かれる一作。
ノラの夫であるアーサー役の彼、ファーストカウの料理人役の人と知って納得。
気持ちを内面に閉じ込めて抑制を効かせつつ、逆に観客に豊かな思いを抱かせる演技がやっぱり素晴らしい。
3人の男女の複雑な心理状態を描いた感じの作品。 本年度ベスト級。
鑑賞中、予想外な展開に期待するものの何も起こらず。
登場人物達が話している言葉と本心が食い違っている感じにモヤモヤする。
でも、これが現実だと思わせてくれた感じ。
相思相愛の小学生のノラとヘソン。
いつも一緒に行動する二人。
ノラが両親の都合でアメリカに移住。
疎遠となった2人が12年後にSNSで繋がり毎日の様にオンラインで楽しそうに会話する展開。
幸せそうな2人の笑顔が印象的。
そんなノラがある理由でオンラインでの会話をやめようとヘソンに進言し再び疎遠に。
その後ノラがアメリカ人と結婚するものの、再び12年後に再開するストーリー。
自分はヘソン目線で鑑賞したけど、男の未練がましい姿が自分と被る(笑)
既に結婚して自立しているノラを悩ませる感じが悩ましい(笑)
ノラやヘソン。ノラの旦那が話している言葉は本心で言っている感じが全くしない(笑)
輪廻転生のセリフ。
自分達の行いを正当化したい言葉として使っていた感じで切ない。
美しい映像に登場人物達の、どうにもならない現実を対比させていた感じで観賞後の心理状態は複雑だった。
韓国は残業代が出ないのにはビックリしました( ´∀`)
嗚呼、せつない
初恋を美しい思い出として、心の奥にしまっている男にとっては、全身で共感してしまって、もうヤバイ。
「どうしてあの時、私を探していたの?」ノラが無神経な質問をヘソンにする。バカなフリして聞くんだったら、まだいいんだけど、真顔で質問するから「お前、バカなの?」って大声でツッコミたくなった。
実は自分もFacebookが流行っていた時に、突然、中学校時代の女の子から連絡があった。その子は、初恋の子で、見事にフラれている。頭がよくて、可愛くて、高嶺の花。
懐かしいから連絡したって言葉を読んで、何かを期待して彼女のFacebookを見てみるとハイスペ男と結婚して瀟洒な家で幸せそうにしている写真がいっぱい。
やっぱり自分には手が届かなかったんだと、2度目の失恋というよりも敗北感をたっぷり味わうことに。
だからヘソンのセリフ一言一言に胸を締め付けられる。
最後は、何かを期待したんだけどね。
嗚呼、せつない。
思っていたよりグイグイ来ない
会いたかった…僕らはまた映画に恋をする"映画の魔法"賞
ずっと探していたものがここにあった in アメリカ人が撮るよりも魅力的なNYという街で。自分の追い求めてきた夢や理想と、それらが手に入らない現実が、見事にハート(コア・核心)と言い換えられるエッセンスを最高密度に抽出しながら素敵な形で表現されていた。本作と恋に落ちるのにそう時間はかからない、あらゆる点で3層になっているドラマ、いや、8000層にも。そのあまりの愛しさに、スクリーンに釘付けになってしまった。最高にロマンチックで、途方もなく胸を締め付けられる切なさと静かな余韻がどこまでも私達を包み込むように残る。
『ビフォア・トリロジー』で『ロスト・イン・トランスレーション』で『エターナル・サンシャイン』のように普遍的なまでに力強く響く作家性、その語り口の言語化しきれない魅力・魔法が僕らを捉えて離さない。予告の締めやポスタービジュアルにも使われている観覧車の前に座る2人のショットが、やはり作品全体の象徴ショットだと思う。見つめ合う2人の間には明確に距離があって、3つの時代を彷彿とさせる3段の階段に、輪廻転生のように回る観覧車。主演2人の力も間違いなくある対照的なキャラクター。
オープニングシーンから引き込まれる。2つ(あるいは中国含む3つ)の街を対比的に捉えるエスタブリッシュ・ショットの美しさ。ヘサンがNYに上陸してから、入ってくるホテル内のショットの美しさには悶絶した。誰があのアングル見つけられるのか、という角度だけど、完璧に三分割法になっているし奥行きもしっかり感じる。豪雨の中、ホテルのロビーに座って過ごしているショットも、ドア枠の映り(影)で丁度見えるようになっている。…といった具合に、彼がノラと会うまでのモンタージュがあまりに魅力的かつ素晴らしい。
多くのアメリカ人監督が撮るよりも魅力的にこのニューヨークという街をレンズに収め、その世界中の人々を虜にする魅力をカメラを通してしっかりと捉えている。どのショットも素晴らしく、切実なまでにヒシヒシと意味・意図が伝わるようでいて、けど同時に永遠になぜそこまで魅力的(に見える)なのか解けない謎のように魅了され続ける。詳細な分析など要らないほどにどこまで魅力的に美しく撮るのか、どこまでも僕らの心に、瞼の裏に残り続ける素晴らしい画の数々。
NYの街を自由の女神とノラたちが見る構図も、移民にとってこの街や国が持つ意味を表しているようだった。自己実現のための存在証明。ユダヤ人(という点にも意味がある)の夫アーサーも"赤い糸で結ばれた運命の2人を邪魔するアメリカ白人"という感じでは決してなく、彼もまた本作にとって欠かすことのできない必然のキャラクターだ。演じるジョン・マガロの名演によって忘れられない人物となっている。
君は君だから僕は好きで、君は去っていく人…。"イニョン" 前世からの輪廻転生で運命のイタズラか摂理。例えば、実際に会って間もなく超ロングショットで歩く2人を構図の中で変わらぬ位置に据えたまま移動するパンなんかも、象徴的だった。こんなに近くにいるのに手の届かないもの。映画など見ていると結構よく出てくる台詞"See you in the next life."とはよく言ったもので、前前前世なんかより本作のほうがよっぽど前前前世だった。
P.S. スクリーンを出てすぐにサントラを聴き始めた。大人俳優に変わってからの2つ目の時代"12年前"のヘサン役ユ・テオが、イケメンにしたフルポン村上感少しあった。本作と『アイアン・クロー』どちらもずっと見たかった作品のため、日本公開の遅さにはヤキモキさせられたが、今週末公開A24ヤバすぎるだろという最強ラインナップ!! 日本の配給会社違うけど、これは勝ちに来たな。
勝手に関連作品『ビフォア』トリロジー、『ロスト・イン・トランスレーション』『エターナル・サンシャイン』『カモン・カモン』
主演女優に惹かれて鑑賞しました。
「A24いい」
ビォアサンセット
クールな女、未練の男のイニョンの物語
誰にもあるような過去の恋、そして再会。よくあるこのストーリーが魅力的に仕上がるのは逆説的だけどジョン・マガロの佇まいに依る所が大きい気がする。あんな美しい語学を学ぶ動機は聞いたことなかった。
2人とも今の自分が嫌いなわけじゃなくて、でも過去の自分達は愛おしい。過去の自分と今の自分が繋がってる感覚はどこか不思議で、それでいて心地いい。一種の非日常。曖昧なままの関係は尾を引いてしまいがちだけど、グレタ・リーは毅然としてて振る舞いがクール。ヘソンの潤む瞳とは少し対照的で、そこが凄くよくて、そして。
ラストシーンは音楽もよくて、たまらなかったな。
監督の実体験を投影しているのかなと思った。女性視点の昔の恋と今。これが男性目線だと違う物語になるかもしれない。アジア的な前世、縁の感覚は馴染み深くて、少し身近でシンパシーを感じてしまう素敵な映画だった。
好きです、この映画。
良い意味で抑揚のないストーリーのため、アカデミー賞作品賞受賞とまでは
いかないタイプの映画だと思いますが、私にとってはすごく好きな映画です。
8000層の人縁の中でのめぐり逢い。
どんな形で出会うのか別れるのかは都度違う。
来世で・・・。
死ぬ間際に思うならまだしも、
人生前半の30代男女がそれを望みながら現世を生き続けるのはつらい。
でも、成就しなかったからこその美しい記憶が、死ぬまでの50年を
輝かせてくれるのだと思います。
主役の二人はとびぬけて秀でているわけではないけれど、
どこにでもある人生を演じる上でとても現実的でラフな演技、すごく
よかったです。
普通の会社に普通の仕事、普通の給料、しかも一人っ子の長男。
条件先行の韓国社会での生きづらさをヘソンが体現してくれました。
もしも
忘れられない恋
わかるけど・・・
ソウルに住む12歳の少女ノラと少年ヘソンは、互いに好き同士だったが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまった。12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいた2人は、オンラインで再会を果たしたが再び音信不通となってしまった。そしてまた12年後、36歳の時にはノラはアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっとめぐり合った。さてどうなる、という話。
うーん、わからないこともないけど、特に刺さるものも無かった。
クラスで1番と2番というほど頭の良かった2人だったんだけど、移住して行ったノラはそれなりに成長してたように思ったが、韓国に残ったヘソンは子供のまま歳だけ取ったように感じた。
ノラの夫に向けて話したヘソン役のユ・テオの英語は下手くそすぎた。韓国語かと思ったほど酷かった。
欧米では、「縁」とか「前世」とかいった考え方が新鮮だったのだろうか?
ある程度の歳を重ねてくると、「あの時、もし、あの人と別れていなかったら、今の自分はどうなっていただろう」と夢想するようなことは、少なからずあるだろう。
今でも好意を抱いている初恋の相手と、同窓会か何かで、何十年かぶりに再会することもあるかもしれない。
その点、この映画が描いているのは、誰もが体験し得るような普遍的なシチュエーションであると言えるのだが、逆に、それ以上でも、それ以下でもないのは物足りない。
2人が独身だったり、結婚していても夫婦関係が冷え切っていたなら、再会によって、新たな恋が生まれたのかもしれないが、この映画のように、夫婦仲が円満で、しかも結婚相手が「良い人」であるのなら、例え、初恋の人と相思相愛だったとしても、「ご縁がなかった」と、その気持ちに折り合いをつけるしかないだろう。
だから、この映画の結末は、当然と言えは当然すぎて、「こんな当たり前のことを描くのに、何を勿体ぶっているのか?」とも思ってしまう。
それよりも、自分の妻が、初恋の人と、自分の理解できない言葉で話し込んでいるのを隣で聞いている夫のことが、何だか妙に気の毒に思えてしまった。
男女の「縁」とか「前世」での関係とかといった東洋的な思想が、欧米の人々には新鮮だったのかもしれないが、残念ながら、自分には、心に響いてくるものが何も感じられなかった。
それぞれの人生
時間を重ねていくからこそ見えてくる関係性が、暖かくも痛切な一作
セリーヌ・ソン監督は本作が劇場公開長編作品の初監督作品であるにもかかわらず、いきなりアカデミー賞作品賞をはじめとした主要部門のノミネートを獲得するという快挙を達成しました。
時間軸をジャンプしつつ男女の関係性を描くという作劇自体はそれほど珍しいものではないし、登場人物も故郷ソウルからニューヨークに移住したノラ(グレタ・リー)とソウルに残ってノラを想い続けるヘソン(ユ・テオ)、彼らの再会を見守るアーサー(ジョン・マガロ)というほぼ3人のみという簡潔さ。彼らの姿をやや引いた視点でとらえ、このような関係に収れんするまでになにがあったのか、期待を高める導入部は非常に魅力的です。
どちらかというと抑制的な演技、演出に終始しているため、ドラマチックな大恋愛ドラマを期待すると少し意外な展開かもしれませんが、ある程度年齢を重ねた男女が、過去の自分と現在背負っているものを見つめつつ対話を重ねていく、という成熟した物語への期待には確実に応えてくれる作品です。
なんとなく(現世では)再会以上の関係に発展しそうにないことを自覚しているノラとヘソンなのに、もしかして二人には”縁(イニョン)”があるんじゃないか、そうであれば自分は身を引こう…、というアーサーのちょっと寂し気な佇まいがなんとも言えない味わいがあります。
『ファースト・カウ』(2020)でもそうだったけど、ジョン・マガロは物静かで、達観しているというよりも何かをあきらめたかのような人物を生き生きと(って表現はちょっとおかしいけど)演じることに長けていることが改めてよく分かります。一方ヘソンは、全編通じて過去を振り切って、未来志向で生きる人としてふるまっていた…だけに、彼女が結末に見せる表情には意外性がありました。その前後にヘソンに対して語りかけた言葉は前向きだけど痛切でもあり、その後の彼女の表情と相まって忘れがたい印象を残します。
ソン監督の絵作りは、ソウルやニューヨークの、何気ない街角から素晴らしい構図を切り出すという点で、それこそ前述の『ファースト・カウ』の監督である、ケリー・ライカートの映像を連想させます。ソン監督とライカート監督のつながりを示すような解説とか読んだことないんだけど、ジョン・マガロつながりもあるし、絶対何かの縁(まさにイニョン)があると思うんだけどなぁ…。
大人の恋愛「についての」映画
24年にわたる恋愛を淡く切なく描き切った大人の恋愛映画。恋愛映画っていうか、「恋愛についての」映画かも。なんか「恋愛」そのものでもない気がするんだよね、だって二人はほぼ会ってないんだから…
韓国に残った彼が持つトラディショナルな恋愛・結婚観と、カナダ→アメリカに移民した彼女の現代的な恋愛観の比較も良かった。
しかし白眉はラストのシークエンス。表面上はなんでもない会話の、立ち位置やちょっとした仕草、視線の動きが素晴らしいし、動いていっての(たしか)ワンカットでのラストの演出と演技が最高だった…
ああじゃないラストの可能性もあったと思うけど、そのどちらをも含んで、リアルな傑作なんだと思う。
アカデミー作品賞候補も納得。
全160件中、121~140件目を表示