パスト ライブス 再会のレビュー・感想・評価
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黄昏色のスクリーンが写す優しい時間
全編通してせつない思いでいっぱいだった。今は、意志を持って探せば遠く離れた相手でも、繋がる事が出来る。あらすじは複雑ではないが、24年の月日によって変わった事と、変わらないもの、それを複雑な感情を持って見つめ合う二人が、穏やかに映し出されている。カメラは終始二人から少し離れたところから二人を捉えている。そのアングルが絶妙に良くて、空気感を丁寧に映し出している。想いや感情は理解出来ても、歩んでいる道を、変えることは出来ない刹那さ。ラストシーン、道の反対側でその様子を目撃しているような気分になる、素晴らしいショットだった。こういう作品はなかなかない。
シビれるリアリティは自分物語
終始感じるじれったさは、監督自身の体験に基づくものだったんですね。そして、何とも言えないリアリティも、自身の体験があってこそだったんですね。
鑑賞後、いろいろな記事やイントロダクションなどを読んで納得、でした。
(気持ち的に)直球を投げたり受けたりできなかった二人が12年後にニューヨークで再会した時の「あぁ」とか「はぁ」とか、いきなりのハグ…の後は会話したいけど言葉が見つからない感じとか、「なんか上手いなぁ」と感心しながら見ていました。これも自分物語だからなんだと思いました。
それにしても、アーサーは「いい人」過ぎ…あんな心の広い人、いるかなぁ。
あと、個人的には、ヘソンを演じていた俳優さんが、数年前に見たロシア映画『LETO』で印象的なアジア系のバンドメンバーを演じた人だったという事実に驚愕でした。
全くの別人ぶり、こういう七変化ができる役者さんだったのだと、かなり後で知り、びっくりしました。
あくまで静かな、大人のラブストーリー
韓国人の幼なじみの男女が、24年の時を経てニューヨークで再会するという、ただそれだけの物語り。劇的な展開も感情的な爆発もなく、互いの思いを胸に秘めつつ時を過ごす、静かな大人のラブストーリーだ。
ふたりの微妙な動き、見つめあう表情などが丁寧に描かれ、さらに、底流として流れる縁(えにし)という東洋的思想にも、心を動かされた。
男の恋愛感情は過去を引きずるが、女のそれは将来に向かって断ち切る、という違いも描かれている。
決して交わることのない平行線の関係
「上昇志向強めの両親の元で育った少女ノラ」と「安寧と安定した生活の継続を望む家庭で育った少年ヘソン」の大人になってからの話。
子供の頃は「好き」だったのだろうけど、いろいろと社会経験を経た上では一概に「好き」と括ることはできない。幼馴染のままで進展はないな。
アーサーが感情的にならず、自分以外の人の声に耳を傾けることができた人でよかったな。
忘れられない人がいる、あなたへ
こんな人におすすめ。
①忘れられない人がいる
②その人をSNSで探したことがある
③もし会えるなら、国境を越えてでも、会いたい
「24年前に離れ離れとなった幼馴染」二人の話。
12歳、24歳、36歳。
それぞれの年齢での、二人の関係。
SNS時代を反映して、案外あっさり繋がることはできたけど。
今までの心の隙間を埋めれるのかどうか。
ラブストーリーなんだけど、ちょっと現実的というか。
そう、ラブシーンがないんだよね。
だけどなんだか、じーんな余韻を残す、私的にハマった、良作でした。
どうしようもなかった前世の恋
ほんの一握りの恋愛強者でないかぎり、うまくいかない恋って誰しも経験があるんじゃないかと思う。ただ、自ら招いたすれ違いとか軋轢みたいなものはよくあるけど、自分ではどうしようもなかった別れを経験している人は少ないと思う。
ラブストーリーを観ていると、もっとこうすればいいのに!とか、こんな選択をしていたら違っていたのかもななんて感じることが多い。でも本作でそう思えるところは少ない。小学生に海を越えて会いに行く力はないし、将来を切り拓こうとしているときに移住はできない。
24年ぶりに再会した2人を描いた本作。2人の間に沈黙の時間が流れるのは久しぶりに会ったからと思っていたが、そんな単純なものではなかった。伝えたい事があるのに声に出せない沈黙、お互いにわかり合っているからこその沈黙、沈黙の色合いを変えて見せる演出がよかった。
大人の都合で引き離されて、自力で再会した大人の2人がとった行動は情熱に突き動かされたものに見えたが、たどり着いた結末は、とても優しくとても理性的なものだった。こんな切ない恋の描き方もある。
とても複雑な気持ちだけど…選択は間違えではなかったね
彼女からの淡々とした発言と行動がすごく複雑にも思えて観てましたが…ラストの涙を見て 気持ちを押し殺していたんだなぁと…すごく切なく感じました
素敵な旦那さんで…観ていて羨ましいと思うばかり…
人生は…ほぼ全て?!選択だと思います
勇気があって選ぶこと それが正しいのか?間違いなのか?
それはわからないことも多いのでは…
最後に思ったことは…男性の方がやはり未練が大きいことが多いのかな?と…
なんか胸がギューーと締め付けられたラストでした
ノーベル賞→ピュリッツァー賞→トニー賞 そして貴方に一番で賞
12→24→36の二人の思いをセンシィビティに描かれたアダルトな恋物語
12は子供 24はまだまだ子供 36は…😞
あーまどろっこしいし、旦那に背中を向けて韓国から会いにきた男性と話し込むのは…
旦那もさぞかしアングリーだったろうけど、ジェントルマン(ユダヤ人と言っていた)僕だったらどうかな〰️
終始二人の会話にはついていけず、最後にはデモしか論で、輪廻転生まで…
生まれ変わったらどうぞ仲良く再会してくださいね✨
時間と場所の遠距離恋愛
いろんな対比が印象に残りました。
軽快に楽しげに画面越しに対話する一方、大事なタイミングでは黙って向かい合うノラとヘソン。
ノラとヘソンがアーサーをよそに韓国語で気持を交換し合ったときの空気の変わりよう。
終始少し頼りなさ気に見えたヘソンとアーサーが終盤で見せた男らしさ。「君と僕もイニョン」と言ってみせたヘソンも良かったし、最後にノラを受け止めてみせたアーサーはカッコ良かったです。
前世や来世があるのかどうかは分かりませんが、今向き合えている誰かとは何らかの縁はあるような気がします。
来世でも会いたい、そんな風に思える相手がいる、それだけで幸せなんでしょうね。
でも、やっぱり遠距離恋愛はつらい。
恋と縁
どんな大人の恋なのかとワクワクしていたのですが、十分に年齢を重ねているわたしにとっては、こどもの恋と感じました。いえ、そんなことを言っている自分のほうが子供かもしれません。
なにごとにも、自分の決断に責任を持って生きていくのが、大人です。
いままでに、色々なことが、あっても無くても、今を生きていく。
これまでに、出逢ってきた人との繋がりについて、思い出すのも、忘れるのも、しまい込むのも、蘇らせるのも自由です。
男女の別にかかわらず、縁は大切にしたいものだと感じています。
移民の私が「ちょっと思い出しただけ」
子どもの頃、互いに好きだった人と12年後にオンライン上で再会し、また離れ、さらに12年後に本当に再会する。離れていた間に彼女のほうは結婚していた。
再会して、お互い相手を好きだったころを思い出し、ありえたかもしれない人生を思う。どうしようもなく切ないけれど、結局は今の自分の人生を肯定し、今後もそれを生きていく。この映画はそれをとてもリアルに細やかに描く。
これだけだと、日本でもどこでもありそうなラブストーリーにみえる。しかし、この映画ならではの個性となっているのは、二人が離れ離れになった理由が彼女の家族の「移民」であることだ。現代の韓国の人にとって「アメリカ(あるいはカナダ等)移住」は普通に取りうる人生の選択肢の一つなのだろうか、と驚きを覚えた。現代日本では、自分の意志で「移民」になろうとする人はそうそういない。
12歳でいきなりアメリカに連れて行かれて、最初に学校に行く日のノラの不安そうな表情。その後、(恐らくさんざん苦労した末)みごとにアメリカで希望する仕事にも就き、アメリカで自立して生きていく人生をつかむ。その途中で彼女はアメリカ人と結婚し、グリーンカードを取得して名実ともに「アメリカ人」になる。
自分はアメリカで生きていくのだ、アメリカ人になるのだ、ということはもう、大人になるまでには決めていたはずだ。最初のオンライン再会の頃にはまだ、国に帰る可能性を完全に排除してはいなかったが、やり取りを終える頃には決意を固めていた。
アメリカ人・アーサーとの結婚は、書類上も「アメリカ人」になるために必要不可欠なステップの一つとして迷いはなかったのだろう。相手は、普通に良い人で自分を愛してくれて、「アメリカの国籍をもった人」であれば良かったのだ。そういう人なら誰でも良かった・・?いや、何かの「縁(イニョン)」があったのだ、と彼女は考える。この広い地球上でその時その場所で出会ったこと自体がほとんど奇跡なのだから。彼女はその縁を信じ、選んだ自分の人生を生きていく。
だから彼女にとっては、どれだけヘソン(と彼が体現する祖国)が懐かしかろうと魅力的だろうとそこに帰る選択肢はない。アメリカ人として生きていく人生を選んだ以上、アメリカ国籍の夫を手放すこともない。彼は単なる「良い夫」ではない。移民である彼女に、アメリカ人として生きて行く文字通りの「パスポート」を保証してくれる人なのだ。
最初から・・少なくとも24年後の再会の最初から、彼女は全部痛いほどわかっていた。だからそれこそ「ちょっと思い出しただけ」(注)。一生忘れない思い出になる再会だけれど、選んだ人生を変えることは決してない、そういう再会だった。
夫、アーサー(ジョン・マガロ)はまた、それを全部わかってなお、彼女を愛している。ユダヤ人(ユダヤ系アメリカ人)という設定だけれど、それこそ民族全体が「移民」として世界あちこちで生きてこざるを得なかったユダヤ人の血を引く人だというのが象徴的である。
移民した国で生きる困難さ、移民の現実的な生きる知恵(結婚もその一つ)、祖国への郷愁と諦念。アーサーは、移民であるノラが抱えるそれらをみな包み込んで愛している。
現れたヘソンがまっとうで魅力的な男なので心穏やかではないが、ノラの感情も、アメリカ人として生きていくという揺るがぬ決意も、手に取るようにわかるから、二人に黙って寄り添い、彼女を抱きとめる。
移民の国アメリカには、ノラの物語を自分のことのように感じる人々がたくさんいるだろう。この映画も、『ミナリ』も、韓国人(韓国系アメリカ人)が、普遍的な「移民の物語」の主人公になっている。「韓国特有」あるいは「アジア人(非白人)特有」の要素はあまり強調されておらず、どこの国から来た移民でも共感できるだろう物語だ。あえてそうしたのか、意識せずともそうなったのかわからないが、その点は、世界中で公開することが前提の現代の映画らしい、と言えるのかもしれない。
キャスト:
ユ・テオ、多少優柔不断かも知れないがまっとうな良い人の感じがよく出ていた。でもヘソンは韓国を離れることなんて到底考えられない、という人。日本にこういう人はよくいそう。「鍛えまくっている」感じがない体型が、なんとなく安心感を醸しだしていた。
注:「ちょっと思い出しただけ」は、松井大吾監督の素敵な映画のタイトル。
期待外れ。
勝手に泣ける感動話かと思いきや、リアルでごじゃった。
想像の範囲内。つまらん。
もっとおっさん、おばはんになってから再開したら良かったね。
すっきり気持ちの整理ができたはず。そしたら映画にならないか。
観終わると、初恋の人やかつて別れた恋人に会いたくなる
何と言うんですかねぇ、心の機微と言えばいいのか、それとも心のひだと言いましょうか…
ちょっとした表情、しぐさ、言葉、間のすべてがふたりの何とも言えない気持ちを表した映画なんです。
だって、そもそも付き合ってもいない幼馴染。
近づくチャンスはあったのに、お互いの人生を考えると気持ちだけでは越えられない。
せつなくて良い映画です。
「視線」を見つめていた映画。 最初のシーンは、NYのバーにいる物語...
「視線」を見つめていた映画。
最初のシーンは、NYのバーにいる物語の主要人物3人を、たまたま居合わせた他人の視点で3人の関係性をあれこれ予想する場面から始まり、その視点は女の視線と交わった瞬間に切り替わる。
交わりそうで交わらない視線、そして一度交わると離れられない視線。
シーンとシーンの間、時間や距離を、緩やかに繋いでいくような音楽がかなり好み。
後半、男がやっとNYに来た場面のシークエンスは、ギターの音色が旅情を誘う。
男は終始女々しくて、見た目もダサいけど、くしゃっとした笑顔やその実直さが憎めない。
2人とも結論は最初から出ているのに、感情は揺れ動き、しかもラベリングできない。
ラスト2分間の長尺、たまらない緊張感。
廻る回転木馬。蛇足に見えた邦題も、込められた意味が分かると、悪くないかなと思えた。
アメリカを選んだ女
もしも経験値のある映画監督だったら、ラストあんな不粋なエンディングには持ち込まなかったことでしょう。ウディ・アレンの『マンハッタン』のように雨に濡れるNYを舞台に、24年ぶりに再会した幼なじみの韓国人男女を、リチャード・リンクレーターの『ビフォア・シリーズ』のような演出で描いてみせた本作は、アングロ・サクソン系の評論家筋にはなぜかすこぶる評判がよろしいのです。
確かに現在の韓国映画界は才能ある女流作家がてんこもり状態なのですが、アメリカ配信ドラマのシナリオに多少携わった程度のキャリアしかない本作監督セリーヌ・ソンを、それと同列に考えるのは無理があると思うのです。過去の恋愛映画から部分的にいいとこ取りをしただけで、本作にはオリジナルの演出やシナリオの捻りをまったく感じなかったからなのです
ではなぜ、他の映画祭ではほとんど無視された本作がアカデミー作品賞にノミネートされるまでの評価を受けたのでしょうか。本作が公開された2023年度は、コロナ開けをまって巨匠系がこぞって賞狙いの作品を出してきたため、アジア系の著名監督がバッティングをおそれ出品を控えたといいます。多様性を何よりも重んじるアカデミー賞にあっては、対面的にバランスをとるために仕方なく、ほとんど経験値のないアジア系女流作家のデビュー作品を無理やりノミネートに押し込まざるを得なかったのではないでしょうか。
そしてもう一つ、本作にはあざといプロパガンダが隠されているのです。本作は基本的に、韓国系アメリカ人のノラが、ユダヤ系アメリカ男アーサーと韓国人男ヘソンの間で揺れ動くメロドラマなのですが、そのヘソンのファッションのダサさ、ならびに、ヘソンがアメリカよりも中国にビジネスチャンスを見出だしていることにまずは注目したいのです。つまりこのノラに未練タラタラの優柔不断男ヘソンを北朝鮮または中国のメタファーと考えると、本作はまったく別の見方をすることが可能なのです。
つまり、過去(Past Lives)に8000のイニョンによって結ばれた北朝鮮または中国(ヘソン)ではなく、現世のパートナーであるアメリカ(アーサー)との友好関係を選んだ韓国(ノラ)のお話に置き換えることができるのです。映画としてはラスト、長い間見つめ合った2人が動いた瞬間にカットする、余韻を遺すエンディングがベストだったと思うのですが、政治的にはっきりと韓国=ノラがアメリカ=アーサーを選択したことをみせる必要があったのでしょう。
見終わった後、いろいろ考えさせられる。
会ってみたい気持ちはわからなくもない。
何もならないとわかってはいても、会って終わらせたかったのかも……
せつないね。
時間は戻らないし、
良くも悪くも、今の自分を認めて生きていってほしい。
映像が綺麗。音楽も好き。
俳優さんたちの繊細な演技が素晴らしい。
高評価!
女神の自由の裏側
「パスト ライブス 再会」素晴らしすぎて動揺。私たちがたどり着いた場所は正しい場所なのかと幼なじみの2人が言葉と目で語り合う。それはどちらも本当のことなんだけれど、あまりにも切なくて苦しい。新しいラブストーリーの傑作。
あと、一部の人に伝わればいいけど、あのシーンのアーサーって、惣一郎さんのお墓参りから帰ってくる響子さんを一刻館の玄関で待っている五代くんだよね。ヘソンはもうノラの一部で、それもひっくるめてノラを愛するという。
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