「男女の物語と見せかけて完全に女性の物語」パスト ライブス 再会 まままさんの映画レビュー(感想・評価)
男女の物語と見せかけて完全に女性の物語
なかなか結ばれない男女の長い年月の話
秒速5センチメートルとかマチネの終わりにみたいな
もっとポップにすれば、あと1センチの恋みたいな
それと同時に、移住の話でもある
なんならそっちの方が強い
男側の描写はかなり表面的で、なかなか感情移入しにくいところがある
兵役をしていたとか結婚に踏み切れないとか、誰しもが想像できそうな表面的な情報で作られていて、あまり現実味がない
24年も少年時代の思い出だけでこの子を思い続けるか?と疑ってしまうくらいには、男性側に説得力のある描写がない
それゆえに空虚な人間にも見える
なるほど、女性監督の作品となるとそういうことかとも思える
要は女性目線の物語でしかない
女性目線の物語にするにあたって、都合のいい男性像という印象
じゃあ女性側の描写はどうなのかと言われれば、かなり良い
移住した女性の孤独とプライド
名前まで変わって移住したからには私は何かを成し遂げなければならないという、責任にも似たプライドを背負い続けている
しかしそうそう何かを成し遂げれるわけでもなく、平凡なところに落ち着いてしまっていっている自分もいる
12年前に自分から連絡を取るのをやめた。過去に囚われるのをやめた
そうやって自分を追い込んだ
本当に今の夫が運命的なのかもはっきりしない。仕事の都合がかなり大きい。夫にもそういう不安を与えてしまっていることをもちろん自覚もしているだろう(劇中では夫本人にそれを語らせているが)
男側がバーで、もしこうだったら、もしこうだったら、と色んな想定を話す
それは監督が男性にそう話させているというだけで、本当にそのifを思い描いてしまっているのは女性側な訳である
その切なさ
それが最後の涙。
映像も印象的。かなりわざとらしいところも多いが。
・少年時代の別れ道。少女は上へ、少年は平坦に。
・ニューヨークの街並みから川を隔てて華やかなメリーゴーランド。大人な街並みに比した、少年時代の鮮やかさ。
・ニューヨークの街並みも美しいがどこか冷たい。常に曇り空。川や波だって、常に濁っている。
・最後の別れのシーン。2人で画面左側(過去)へ歩く。そして別れて、画面右に1人で戻る。
流石に少しわざとらしくて作り物感が否めないが、、、
メリーゴーランドのイメージはそりゃポスターにもしたくなるわというくらい、場面にピッタリ
最後の別れのシーンの台詞は本当にいい
もしこれが前世だったら、来世はどうなるか。そのときに会おう。
大人の恋愛として完璧な切なさがある
