「割り切れない過去とどう向き合うか」パスト ライブス 再会 よしてさんの映画レビュー(感想・評価)
割り切れない過去とどう向き合うか
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終盤に入るまでノラの気持ちを理解はできても共感まではできなかったため、あまり入り込めませんでした。しかし、ノラとアーサーとの生活が描かれ、二人が抱きしめあうラストシーンを見て、色々なものが腑に落ちました。
選べなかった過去と打算の中で関係を築いた現実の間では、どうしても前者が甘美なものに見えてしまうのは必然。しかし、その一方で前者を選ばなかったことには理由があり、今の現実を積み重ねてきたことにも理由はあるのです。
それらを理解した上で深夜のバーで想い出に酔う二人に寄り添い、ヘソンを見送った後のノラを優しく抱擁できるアーサーは、それはそれは強い男なわけです。12歳からほとんど成長していない男では相手になりません。
ノラとの再会の抱擁に戸惑っていたヘソンも、別れの際には自分からしっかりとノラを抱きしめられるようになっており、ニューヨークの数日で得たものは少なくなかったはずです。帰国してからの彼は、大人の男として、新しい愛を築くことでしょう。
ただ、これらの話を「イニョン」という言葉で説明することは欧米の方々には新鮮だったかもしれませんが、同じ東洋人としては馴染みがある概念であるため、そこまで心に強く残るものではなかったです。あと、12年という時間を一区切りとして普通に受け止めるのも干支の文化がある国の人間ならではのことなんですかね。アーサーは二人の関係を雑に「20年」と表現していましたし。
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