「配役が絶妙で説得力が凄く、ルチアのみならず毒親アネも相当のハマり役でした」ミツバチと私 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
配役が絶妙で説得力が凄く、ルチアのみならず毒親アネも相当のハマり役でした
2024.1.11 字幕 京都シネマ
2023年のスペイン映画(128分、G)
ある夏のバカンスを舞台に性的自認に悩む8歳の子どもを描いた青春映画
監督&脚本はエスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
原題は『20.000 especies de abejas』、英題は『20,000 Species of Bees』で、ともに「2万種類のミツバチ」という意味
物語の舞台はフランスのバイヨンヌ
そこに住む8歳のアイトール(ソフィア・オテロ)はその名前で呼ばれるのを嫌い、周囲は仕方なく「坊主、小僧」を意味する「ココ」と呼んでいた
だが、アイトールはココすらも拒絶していて、彼は「8歳にして性的自認について悩んでいる」存在だった
母アネ(パトリシア・ロペス・アルナイス)はアイトールの扱いに悩み、父ゴルカ(マルチェロ・ルビオ)はアネの教育が悪いからだと断罪している
アイトールには弟のエネコ(ウナス・シャイデン)、義妹ネレア(アンドレ・ガラビエタ)がいたが、彼らはアイトールの悩みの理由を理解できなかった
ある日、親戚が住むスペインのバスク地方ラウディオに向かった彼らだったが、そこでもアイトールの性的自認問題は深刻だと捉えられてしまう
だが、そう思っているのはアネだけで、アイトールの叔母にあたるルルデス(アネ・ガバラン)はアイトールの話を傾聴し、彼が抱えている悩みを知っていく
また、いとこのニコ(Julene Puente Nafarrate)はそういった問題をさほど気にする様子もなく、普通に女の子だと思って接していた
アネは彫刻家として活動していたが、教職の免許を取るための作品をこの地で完成させようと考えていた
アイトールは親戚たちと一緒に過ごす時間が増え、ルルデスが営んでいる養蜂場に足を運んだりする
そこで母の子ども時代の話を聞いたり、地元の神父マルティーナ(Manex Fuchs)の話を聞いたりするアイトールは、聖ルチアの物語に興味を示し、自分のことを「ルチア」と呼ぶようになっていた
このあたりは宗教的な側面が強い内容になっていて、さらっと説明されるものの、意味不明のままスルーしてしまいそうになる部分であるように思えた
映画は、性徴が起こる過渡期による自分探しのようになっているが、これは子ども時代に自分で鏡を見たときに感じる違和感に似ていると思う
個人的にも男か女かわからない時期があったが、その揺らぎは時間の経過とともに無くなり、第二性徴が起こった段階で消えていた
彼にもその時が来ると思うが、それを超えてもなお続くかどうかは不透明な部分が多い
親としては心配する時期ではあるものの、過剰に反応しているのは、アネが安定していないからのようにも思える
世間体と自分の価値観を前面に押し出して、目的のためには手段を問わない姿勢でいる限り、子育てというものも自分の型に嵌めようとしてしまうのは弱さと無理解ゆえなのかなと感じた
いずれにせよ、配役が絶妙でなので説得力が凄いのだが、それだけの映画ではないのは周知のところであると思う
バスク地方におけるミツバチとの関係、聖ルチアの逸話など、教養を必要とするシーンは多いが、最後の行方不明のアイトールを探すシーンに凝縮されていると感じた
最後にアネは「ルチア」と呼ぶものの、ゴルカは最後まで呼ばないので、その後が予感できるような気もする
要所において、アネは自分の価値観とリズムで動いていたので、ぶっちゃけると子育てをする親には向いていないのだろう
それでも自分の状況を考えずに子どもを三人持ち、家庭環境に配慮しないところを見ると、なかなかの毒親だったのかなと感じた