「一歩間違えばシュールコメディだが、ギリギリのところでスリラーになっていた」ザ・キラー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
一歩間違えばシュールコメディだが、ギリギリのところでスリラーになっていた
2023.10.31 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ映画(113分、PG12)
原作はアレクシス・ノレントの『Le tueur(1998年)』
ある殺し屋のミッションとその顛末を描くスリラー映画
監督はデヴィッド・フィンチャー
脚本はアンドリュー・ケビン・ウォーカー
物語の舞台は、フランスのパリ
THE KILLER(以下「殺し屋」、演:マイケル・ファスベンダー)は、依頼人のホッジス弁護士(チャールズ・パーネル)からある殺人を請け負っていた
パリのホテルに現れるはずの標的(Endre Hules)を待つこと5日目、殺し屋は準備を淡々とこなし、脈拍計にて日々の緊張を計測していた
5日目の朝、「今日現れなければ中止だ」と言われた殺し屋だったが、その目論見通りに標的は現れた
彼は娼婦(モニーク・ガンダートン)を部屋に招き入れ、女はSMのコスプレをして、標的の前に立ち塞がった
殺し屋は冷静に状況を分析し、標的に狙いを定めて発砲するものの、娼婦が予測外の行動を起こしたために失敗してしまう
慌てて手荷物をまとめた殺し屋は、用意してあったカブにて逃走し、ホッジズに失敗を告げてパリを去った
殺し屋は隠れ家であるドミニカ共和国に向かうものの、そこは荒らされていて、恋人マグダラ(ソフィー・シャーロット)の姿はなかった
慌ててマグダラの兄マーカス(エミリアーノ・ペルニア)に連絡を入れ、彼女が運ばれた病室で再会を果たす殺し屋
殺し屋はミッション失敗の報復と考え、ホッジズを含めた関係者の抹殺を考え始めるのである
映画は、緻密な計算と準備をする殺し屋が「ものすごく些細なことで失敗する様子」を描き、そこから「冷静になれ」を自問自答する「普通の人間であること」を描いていく
マグダラ襲撃の「The Brute(サラ・ベイカー)」とそのお友達をやっつけたあとは、「The Expert(ティルダ・スウィントン)」まで始末していく
そんな中で無関係だったタクシーの配車係(アルツゥーロ・ドゥバージェ)と運転手レオ(ガブリエル・ポランコ)はとばっちりも良いところだった
このあたりのシークエンスは完璧主義者の動揺で起こり得ることとして描かれていて、徐々に冷静になっていく殺し屋はクライアントのクレイボーン(アーリス・ハワード)は殺さずに立ち去っていく
一連の危機が去ったことを確認して通常に戻るのだが、冷酷に見える殺し屋にも人間性があると描いていくのは斬新だったように思えた
いずれにせよ、Netflixの先行公開なのであまり観客がおらず、この内容なら配信でも良い気はする
集中して観る方が良いとは思うが、空いた時間の有効活用の方が意味は大きいだろう
先行公開も一週間ほどなので、興味のある人はチェックリストに入れておくでOKではないだろうか