劇場公開日 2023年10月6日

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「なぜ私は現れ、なぜ過去は消せないのか…」アンダーカレント 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なぜ私は現れ、なぜ過去は消せないのか…

2023年10月10日
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 ヒトは極端な恐怖体験をすると、人格が崩壊するそうです。これを防ぐ為、無意識に記憶を遮断する能力が、ヒトにはあるそうです。ところがある日、封印したはずの記憶の断片が、フラッシュバックする場合があるとか。実は、これ、時間をかけて、過去の自分と向き合おうとするプロセス。ここで無理矢理、かさぶたを剥がすようなことすると、取り返しがつかない事態になるのですが、うまく傷が癒えると、これまでとは違う自己が、再生できるらしい…。

 有り難ことに、私、「ディア ハンター」みたいな怖い思いしたこともなく、喪失した記憶は、ございません。そんな私でも、おそらくアンダーカレントはある。きっと私の家族も、然り。でもね、私は私の心の深淵を覗く気はないし、家族のそれを探るつもりもない。結果、この映画と同じことになるかも。そうなったら、探偵さん呼びますけど、今のところは、ね。
 確かに、ヒトが、ヒトを分かろうとすること自体、おこがましい話かも。それでも、お互いのかさぶたを削り合うくらいなら、お互いを大切に想う気持ちのほうを大切にしたい。

 私がこの映画を観た理由は、先日観た「福田村事件」とキャストが、かぶっていたから。ほぼ、それだけの理由。でも観てよかったな~。役者さんて、凄いですね。限られた時間、限られたセリフで、登場人物の今だけでなく、過去まで映し出す。

 どうしようもない自分と向き合う哀しさを、体現する永山瑛太。

 逃れられない過去と、訣別しようとする苦悩を体現する井浦新。

 傷負い人の苦しさを、誰よりも理解してしまう真木よう子。

 怪しすぎるリリー・フランキー。

 みんな素敵ですね。

 継ぎはぎだらけの過去を持つ私です。本当の自分探しをするような歳でもありません。そんな自分が人様に受け入れられるのが、恐かったこともあります。目の前にある幸せから、逃げたくなったことも、あったかな。そう云う意味では、涙目状態の瑛太に、私の琴線が触れてしまいました。瑛太くん、お願いだから、私のかさぶた剥がさないで…。
 とにかく、家族を大切にしないとね。そのためには、何をしたらいいのか、わかんないけど。
 そんな悠長なこと思っていると、家族が失踪するのかしら。そんな時は、探偵さん、助けて。黄色い風船持っていたら、来てくれる?。因みに私、メリーゴーランドは、苦手です。

機動戦士・チャングム