劇場公開日 2023年10月6日

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「我慢しながら最後まで観る感じ。不完全で未消化感漂う微妙な作品。」アンダーカレント beast69さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0我慢しながら最後まで観る感じ。不完全で未消化感漂う微妙な作品。

2023年10月8日
PCから投稿

今泉監督の新作が出たら必ず観に行くファンですが、今回の作品は正直ダメでした。
映画が始まって暫く経っても、心に響くような言葉とか場面とかが・・・全然出てこないんですよ。
時々意味ありげなフレーズが出てくるけれど、言いたい事は分かるものの、メッセージ性は薄いレベルの範疇で深みは余り感じられなかった。

不安や恐怖の回想・妄想・イメージ場面が合間に挿入されながら、モヤモヤして掴みにくいストーリー展開が長々と続いて、登場人物にも感情移入しにくいし、時には気持ち悪さまで感じ、その辺りの伏線回収も不充分というか(あえてそういう設定にしたのかもしれないけれど)、映画が終わってもスッキリしないモヤモヤが続く感じ。

「嘘」が一つのテーマになっていますが、この物語自体がリアリティーに欠けて、どこか作り物っぽくて、その嘘が暴かれた時のインパクトも薄く弱く感じられる。
不完全で未消化感を残したまま映画館を出て、後から考察をしたくなるような深度も余り感じず、良い映画を観た後の長く残る余韻や考えさせられるものが足りない感じでした。

難解なアート映画やカルトムービーも何でも好んで観る派の自分みたいな人なら頑張って観れるけれど、そうでもない一般的な人の場合、これはある種の我慢を強いられる部分が否めない映画という印象。

あれ?私の好きな今泉ワールドではないな。
どうしてこんな原作を映画にしたんだろう?
そんな疑問符が最後まで解けなかった。

唯一、リリー・フランキー演じる探偵が非常に魅力的で、凄くいい味を出していました。
一見ダメ人間のようで、実は一番切れ味が鋭い探偵、これはリリーさんの真骨頂。
彼がいなかったらこの映画、どうなっていたんだろうか・・・と心配になるほど。
出演者は一流俳優が多く、演技力は充分に素晴らしかったのだけれど、この物語の登場人物が実際にいるようにも思えず、後半になっても何処か作りもの感が私の中で否めず、どうにも入り込みにくい未消化感が残る作品だったというのが正直な感想。

ちょうど監督の舞台挨拶があって、色々と貴重なお話が聞けたのは良かったのですが、監督自身が本当に表現したいものというよりも、原作者の意図を壊さないようにという配慮を大事にした映画作り、というような印象がありました。
今泉監督は普段漫画とかは読まない人との事で、この原作も外部からのオファーがあって成立したもので、監督自身が前から気に入って映画化を考えていたというケースとは違う。
この映画が私にとってイマイチだったのは、自分の表現よりも原作を大事にしたい作風ゆえだったのかもしれません。
次回は他人の原作ではなく、今泉監督ならではの、新たな今泉ワールド的映画が観てみたいですね。

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beast69