「こんな政治家がいたなんて」シモーヌ フランスに最も愛された政治家 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな政治家がいたなんて
「パリ・タクシー」や「あのこと」で、個人の自由と尊厳を尊重する国と思っていたフランスが実は極端な男性優位社会だったのを知り、そして、本作でこんな政治家がいたことを知りました。
尊敬の念しかありません。
映画を評価するのは、彼女の存在を評価するようでおこがましく感じるので、星5つは、彼女の存在に対して。
彼女は「収容所体験者」だったのか。フランスの戦後のユダヤ人の事情もわかりました。
虐げられるだけの存在をそのままにしておかない、という強い意思は、過去の壮絶な収容所体験から突き動かされた「義務感」もしくは強迫観念に近いかも、と思う。
人工妊娠中絶の合法化から始まる、国家を動かす偉業を成し遂げられたのは、彼女を支えた夫の存在も不可欠と思う。マリ・キュリーの夫、ピエール・キュリーみたいな。そういえば彼もフランス人。
もしかすると、ごりごりの男性優位社会で育った彼らは、愛する母や姉・妹、身近な女性が、父や兄弟、夫から虐げられるのを子供の頃から目の当たりに経験して女性の味方が身に染み付いたかも。心から応援したい女性を全力で支えることで、子供の頃の彼らの忸怩たる思いを埋め合わせているなら、自己犠牲ではなく、自身への積極的な癒やしの行動だと思う。
単に彼女の「力」を冷静に認めて、支えに徹するのが自分を活かすことだと判断しただけかもですが。
彼女が裕福な家庭に生まれて、十分な教育を施されたのは大きいと思う。
しかも、身近で母が、女性であるがゆえに将来を諦めて、横暴で俗物な父に尽くすしか無いやるせない例を体験しており。
知性も財力もあり、野心家で、ホロコースト体験がなくても、彼女なら女性の権利獲得のためになにがしかの実績を上げたのではないかと思う。
それにしても男性議員たちの下品さには辟易した。
1970年代まではこんなのが普通だったのに驚き。
今晩は。
コメント有難うございます。
男性優位のフランス社会及び政治界で、このような人が居た事はうっすらとは知っていましたが、今作は彼女の不撓不屈の原動力まで、キチンと描かれていたので、実に見応えがありましたね。では。