私、オルガ・ヘプナロヴァーのレビュー・感想・評価
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残念ながら、この映画は日本人の好きなただのホラー映画である。
プラハの春が1968年だから、その5年後の1973年の犯罪。
色々な大義名分を添加して、この少女の犯罪を正当化して、結局はこの少女を理解して保護できず、最終的に国家による抹殺までしてしまった社会主義政権への批判に見える。
だがしかし、日本もこれと同じ様な事で、死刑になった者はいる。従って、未熟な社会だから、こういった犯罪者が生まれると言う訳では無い。あえて、国のミスを上げるとすれば、それは死刑である。こんな訳分からない映画なんか作らずとも、この少女を生かしておけば、本当の理由が分かったかもしれない。
こういった映画。フランス人とか日本人好みの映画だが、犯罪者に対する偏見を生むだけ。(性同一性障害、精神障害者などなど、そういった者が犯罪者と言う偏見を持ってしまう)
犯罪に哲学はいらない。哲学を語りたくば、死刑は廃止すべきだ。勿論、チェコは死刑を廃止した。自由と民主主義の日本には、今でも死刑が存在する。
それでいて『安楽死とかを議論しよう』と妄想をふくらませる。
それでいて、やっと優生保護法の違法性を渋々認める。なんと矛盾した社会か?その観点で、
残念ながら、この映画はただのホラー映画である。
『ボヘミアン』『アイリン・アドラー』『プラハの春』と続く、自由を求めて賢明に生きようとするが、それでいて、哀れな部分が拭えない少女の終末旅行ではないのだ。
日本では死刑があるので、この少女は終末旅行に行かなくて良いと思う。さて。
とまぁ、けちょんけちょんなレビューだが、評価したのはチェコが死刑を廃止しているから。
実存主義
人間一人一人の存在を大事にし、個人としての立場を協調しようとする考え方とのことをネットで調べた 正に今作の主人公の訴えたいテーマなのであろう 彼女はどういう人なのかというのは関係無い 彼女自身に寄り添うのか否かということを問うているのである
とはいえ、かなり現実には飲み込みにくいストーリー上の行動なのである 一人一人の良さや個性を尊重して生きていこうとする考えである『実存哲学』ではあるが、物語の中の彼女は残念ながら問題も多く、自分の苛立ちを上手く消化できずに表面に現われてしまい、それが又彼女を苦しめ、孤立化してしまう 悪循環故の凶行は、彼女の救済への慟哭が引き起こした事とはいえ、あの時代の東ヨーロッパでは汲むべき懐の深さは無い 今作も実際に起った事件であり、現実でも度々発生する事件 それはシリアルキラーでもサイコパスでもなく、自分そのものを認めて欲しい、受け入れて欲しいという切望そのものであろう
「でも、先ずは受け入れて貰う様努力する」なんていう考え方が未だにマジョリティとしての思考であるならば、今後もいたたまれない事件は起こり続ける・・・
今作のシーンの数々は、彼女の本質をドキュメンタリーとしては困難かも知れないが、そこに肉薄させるべく、端折らずに泣き叫ぶ最後の絞首刑のシーンでさえもスクリーンに収める残酷さまで描いてみせている 低身長、微乳、ズボンをはき、オカッパのヘアスタイルにし、車が好きで、あれだけ嫌いだったタバコもヘビースモーカーと化し、ヤサグレ感と、どこかオドオドした歩き方、性的マイノリティ、性志向としての同性愛 そして執行前には統合失調(妄想)の変調が表われてしまった事も含め、彼女の持って生まれたものがその宿主を蝕む状況を、胃がキリキリ痛む辛さに苛まれながらの観賞であった
ラストの残された家族で飲むスープは一体どんな味がするのだろうか・・・ 「いつか嘲笑と私の涙を償わせる」ことを彼女は実現できたのか?
身代わり
オルガが生きづらさを抱えているのは伝わる。
だが、場面転換が唐突すぎる上に説明がまったく無い。
何故か、誰かと、何かを話しているが、それがいつなのか、何処なのかも半ば不明。
主人公が中性的かつ小柄で、幼くも大人っぽくも見えることもあり、魅力的な反面より分かりづらかった。
事件の描写も、群衆に逃げる素振りがほぼなく、(事故と思ったにせよ)停車した前方に集まるのは不自然。
興味を惹かれた“最後の死刑囚”に関しても作中では触れられず、特に意味もなくて残念。
裁判で『プリューゲルクナーベ』なる単語が放たれた。
オルガは「いじめられっ子」と言うが、語源は「身分の高い者が罪を犯した際の身代わり」らしい。
こちらの意味が強そうだが、これも作中では明かされない。
勝手に獄中がメインだと思ってたのもあるが、予想とまったく違っていた。
秋葉原の事件も想起したが、オルガに共感はできない。
ラストシーンで家族の日常が変わらなかったことと、現代の状況が、彼女の行動の結果だ。
例え自分の人生であってもその全て理解出来る訳ではない
物語はモノクロで静かに、静かに進む。音楽さえもほとんど無く。それは実際に起きた事件を扱っていることもあり、毎日そんなにドラマチックな事は起こらない我々一般人の日常を端的に表しているように感じられた。
最初から最後まで冷え切っていた家族との関係性までもが淡々と描かれており、それが主人公の狭い世界の中で大きなストレスだったと思われる。それでも一見物静かな反抗期の範囲内と言えなくも無かったが。自殺未遂を起こしても娘に寄り添えず、あなたには無理と言い切り病院に入院させる母親としかコミュニケーションを取れなければそりゃ壊れるわな。そんな中、雨なのに洗濯物を干してしまったり、タクシー客に注意されてもタバコをふかし続けたりと、他人の常識と自分のそれにズレがある主人公の異常性が時折描かれる。
今ほど理解を得られないはずのレズビアンであったり、好きだった運転手をクビになったり、入院した病院でリンチされたりとおそらく彼女自身はその理由を自分自身で理解できず、全て周りが自分を理解せず虐めると思い込んでしまったが故の被害か。
結果車で轢き殺す時でさえ静かに淡々と運転しており、主人公に躊躇や気持ちの揺れはその表情からは見て取れない。周りに自分の苦しみをを理解させようという究極の承認欲求。
死刑を望んでその通りになっても淡々としていたが連行の際に大きく取り乱したのは最期までやはり自分の感情が自分で理解出来なかったか。
主人公が死刑後も残された家族がいつも通り淡々と食事している風景が怖い。
モノクロだったが映像はとても綺麗。多分カラーだったら違う印象になったと思う。
衝動
思っていたものとは違いましたが、映画として、1人の女性の最期を見る物語として楽しめました。
同性愛が認められていなかった70年代、レズビアンだったオルガはそれを公の場で言うことはできず、それを抱えながら生きていました。
暗殺者になりたい衝動から、トラックに乗って大量殺人に移行し、今後誰も殺人を起こさないために自分が死刑になると言う宣言のもと、実際に絞首刑に処されるます。
死刑される直前、やはり生きていたいという想いが強くなって泣き叫ぶシーン、人間味がドバッと飛び出ていました。ここまで基本的には感情を表に出さなかったオルガがこれでもかと感情を出すので、なんだか愛おしくも思えてしまいました。
事件の前後を色濃く描く映画なのかと思いきや、オルガ・ヘプナロヴァという1人の女性の半生を描く物語でした。7年前の映画がこのタイミングで入ってくるというのもなんだか珍しい縁があるもんだなーと思いました。
鑑賞日 5/21
鑑賞時間 20:25〜22:20
座席 G-4
1970年代にチェコスロヴァキア・プラハで実際に起こった事件をモノ...
1970年代にチェコスロヴァキア・プラハで実際に起こった事件をモノクロで映画化した作品です。
ローティーンの頃からうつ病に悩まされていたオルガ・ヘプナロヴァー(ミハリナ・オルシャニスカ)。
自殺未遂の末、精神病院に入院するが、そこでも異質の存在として扱われ、集団リンチを受けていた。
退院後は世間から逃れるように、トラック運転手として働きつつ、森の中の粗末な小屋で暮らしていた。
ある日、職場で出会った少女イトカ(マリカ・ソポスカー)に同性愛傾向を感じ取ったオルガは、イトカと肉体関係を持つが、その関係も長くは続かない。
徐々に心の内に澱(おり)のようなものが蓄積していく中、オルガはプラハ市内のトラム停留所にトラックで突っ込み、多数の死者・重軽傷者を出してしまう。
オルガは、それは社会に対する復讐だと法廷で語る・・・
といった内容で、自暴自棄になった若者が悲惨な事件を引き起こすのは洋の東西を問わずだが、オルガの心底にたまっていく澱のようなものは痛いほど感じ取ることができます。
70年代前半のことなので同性愛者に対しては大きな偏見があった時代。
かつ非社交的でうつ病の傾向もあるがゆえ、社会から疎外されている感は徐々に強くなり、社会もオルガを拒絶するが、オルガも社会を拒絶する。
すこしでいいから認められたい。
承認欲求は、人間としての本能であろう。
本能としての欲求を満たされないときの苦しみは、いかばかりか。
だからといって、オルガの行為を許すわけでもなく、映画は劇伴もなく淡々と撮っていく。
感心したのは、裁判後、死刑執行を待つオルガの描写で、独房生活だったオルガは、社会から断絶されることで心の平安を得る。
ここにきて、承認欲求よりも生存欲求の方がはじめて上回る。
泣き叫び、刑から逃れようとするも刑は執行される・・・
淡々と撮り続けた映画は、最期まで淡々とした描写で貫き通す。
エンドクレジットは無音。
無音のクレジットを観るあいだに、心に去来するものをいま一度思い返してみるが、さて、なにが心の底に溜まったのか、それとも払拭されたのかわからないが、澱のようなものでないことを祈りたい。
監督・脚本は、トマーシュ・ヴァインレプとペトル・カズダの共同。
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