「例え自分の人生であってもその全て理解出来る訳ではない」私、オルガ・ヘプナロヴァー 撃たれる前に撃てさんの映画レビュー(感想・評価)
例え自分の人生であってもその全て理解出来る訳ではない
物語はモノクロで静かに、静かに進む。音楽さえもほとんど無く。それは実際に起きた事件を扱っていることもあり、毎日そんなにドラマチックな事は起こらない我々一般人の日常を端的に表しているように感じられた。
最初から最後まで冷え切っていた家族との関係性までもが淡々と描かれており、それが主人公の狭い世界の中で大きなストレスだったと思われる。それでも一見物静かな反抗期の範囲内と言えなくも無かったが。自殺未遂を起こしても娘に寄り添えず、あなたには無理と言い切り病院に入院させる母親としかコミュニケーションを取れなければそりゃ壊れるわな。そんな中、雨なのに洗濯物を干してしまったり、タクシー客に注意されてもタバコをふかし続けたりと、他人の常識と自分のそれにズレがある主人公の異常性が時折描かれる。
今ほど理解を得られないはずのレズビアンであったり、好きだった運転手をクビになったり、入院した病院でリンチされたりとおそらく彼女自身はその理由を自分自身で理解できず、全て周りが自分を理解せず虐めると思い込んでしまったが故の被害か。
結果車で轢き殺す時でさえ静かに淡々と運転しており、主人公に躊躇や気持ちの揺れはその表情からは見て取れない。周りに自分の苦しみをを理解させようという究極の承認欲求。
死刑を望んでその通りになっても淡々としていたが連行の際に大きく取り乱したのは最期までやはり自分の感情が自分で理解出来なかったか。
主人公が死刑後も残された家族がいつも通り淡々と食事している風景が怖い。
モノクロだったが映像はとても綺麗。多分カラーだったら違う印象になったと思う。
Mさん
コメントありがとうございました。無音のエンドロールは自分も当事者の様な、また自分の内面を見つめ直す時間の様な気がしてゾワゾワしながら観てました。
オルガ役のミハリナオルシャンスカさんは素敵でしたね。
死刑の後に普通の生活をしていた家族にゾッとしました。
レビューの文章、全く同感でした。
エンドロールが無音で、換気の音だけが聞こえていたのですが、この映画にぴったりの最後でした。