「ニッポンウイスキー 飛沫 祝」ジョン・ウィック コンセクエンス とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)
ニッポンウイスキー 飛沫 祝
3作目で馬に乗って街中を走り出した時に「なんだこれ」と思って笑いましたが、今作は冒頭から砂漠で馬フー(マーフーと読む、乗馬とカンフーをかけあわせた造語)のシーン。白装束に白い馬の3人が駆けていく後ろから、黒いスーツに黒い馬の男が追いかけてくる。かなり引きのカメラから始まったが、明らかに後ろのやつはババヤガだし、確実に前の3人は死ぬのが一瞬でわかるんですよね。4作目もやっぱりジョンウィック。
主席を殺害して(結婚指輪返してほしくて)、命を狙われることになったジョンは、旧友である大阪のコウジのもとに身を隠す…
毎回こいつ、後先考えずにルールをぶち破って忠告してくれたウィンストンにも「くるやつは全員殺す」とかのたまう。そして毎回旧友を頼る→出ていけと言われる→食い下がって共闘関係に持ち込む→ジョンウィックを助けた罪で多大な迷惑をかける。
今作のエンドロール後も、ジョンにとっての旧友(ケイン)を旧友の愛娘(コウジの娘アキラ)が憎しみ殺そうとするエンドですよ。ジョンが暴れたばかりにうまれたこの悲劇、ジョンはどう思ってんだお前のせいだぞ。
話は戻って、道頓堀の商店街をカメラが通り、中心辺りの角にある金龍ラーメンが映ってこちらはテンション上がりっぱなしですよ。そして大阪コンチネンタル。大阪はかなり長く歩き回ってますが、大阪にもコンチネンタルあったんですね!まあ庶民に泊まれるとこじゃないでしょうが。というか日本円だと一泊素泊まりいくらなんでしょうか。コンチネンタルのシーンはいつも、謎のデカい金貨1枚で部屋に案内されてるから相場がわかんないですね。あれ持ってるやつは特別なんでしょうが。
そしてジョンをもてなすコウジが入れるウイスキーは、山崎。山崎のストレートを2人で飲んでましたね。確認できなかったんですが、あれは山崎のどのボトルでしょうか。18年だとボトルが黒いので、まさか12年かそれとも年数表記なしか…12年もレアだし高価ですけど、言うて3万くらいで買えますよ。コンチネンタルで出すウイスキーが山崎12年なの…まあ屋上で適当に飲む酒が山崎12年てのはすごいか、すごいか?そりゃ私はなかなか手が出ませんが…
それから電車内の看板。「ニッポンウイスキー 飛沫 祝」…
書き方的には「飛沫蒸留所」のブランドで、「祝」ボトルなんでしょうか。「飛沫蒸留所」って、いくらなんでもコロナの苦しみから明けてない時代に、飛沫感染の飛沫ですよ。確かにニュースでよく見た文字列ですが。海外の人からしたら何となくかっこいいのかも知れない。「アメリカンウイスキー エアロゾル」みたいな。でも真田広之とか、日本人のスタッフちゃんといたでしょ、ツッコめよ!
ウイスキーはまあ置いといて、コウジとアキラ込みの殺陣はよかったです。馬乗りになって至近距離から弓矢でヘッドショットとか、はじめて見る殺陣でしたね。銃と違うのは、矢が貫通してそのまま壁に刺さると体が固定されてしまう、そういうのもはじめて見ました。日本の戦のシーンって広いとこ多いしね、あんな屋外で入り乱れて弓矢を引き絞ってる場合なの。まあでも面白すぎた。もっとジョンが手裏剣投げたりとかも見たかった。
ケインも楽しかったですね。あれも見たことない殺陣でした。もう1人のババヤガって感じがしましたね、ジョンを慕う歴戦の強者はシリーズでも何人かいましたが。けどあそこまで超人になっちゃうとアメコミヒーローか、ワンピースのサンジかって感じになっちゃう。ケインはダメージ食らわないですもんね。ジョンがやってるのはプロレスだから、相手の技もしっかり食らって投げられて、そこからやり返す。で、双方くたくたになって、いい勝負だった的な空気になる直前にヘッドショットしますから。最初からそうしろよ!一旦ヌンチャク挟む意味!ヌンチャクぐるぐる回して相手の頭に複数回ヒットさせるシーンとか、ダサいとかの域じゃないけど、なんかもう観てるこっちももうワケわかんなくなってるから、もうよしなんでしょう。
最後の決闘ですが…
その前にこのシリーズ本当に誰も知らないかっこよすぎる儀式とかアイテムが多くて最早新しい神話ですよ。コンチネンタルで使える謎の金貨、血の指紋を押した一回なんでも言うこと聞くチケット。今回のコンチネンタル閉業までの1時間を測るためのデカい砂時計も笑いましたね、それいる?かっこいいけど。前腕に二人同時に文字を焼き入れたら兄弟の証とかも、最早すんなり入ってきちゃう。確か3ではジョンの背中の丸いとこに焼き印して「チケットは使用された」的な。3では指もつめたしね。マフィアとかヤクザとか、「裏社会の掟」みたいなのをミックスしてそれっぽくしてるんでしょうか。私も現実の裏社会なんて全く知りませんが、ジョンウィックの謎儀式はホントにすんなり入ってきます。「そんなのありそう」「そんな感じだったらかっこいいな」をうまく拾い上げてる感じ。
からの決闘シーンですよね。決闘の場所、武器、ルールよ決め方がトランプだけどトランプじゃない。10枚しか手札配られてないのに、23とか出てくるし。それホントに公平??
てか何よりもルールが全てだという常識が脳髄まで染み込まされてる人たちの裏社会から、あくまでルールにしたがった上でジョンは出ていったんですよね。出ていくためには達成不可能な条件をクリアしなければいけない=出ていくことはできない。のはずが、最強のジョンはその条件をクリアして愛する人との穏やかな暮らしを得た。本来ありえないのにルールから解放されていったジョンはみんなの迷惑者で、みんなの憧れで、みんなの畏怖対象で、そしてみんなに愛されてるんですよね。
けど映画のなかのジョンは、ブチ切れたらコンチネンタルで殺人する、血の指紋のチケットの行使を拒否する(2の冒頭)、主席殺す、ルール全く気にしてねえ。それで命を狙われたら「全員殺す」その癖に人を頼る。あのジョンウィックに頼られたら光栄だし、不可能を可能にするジョンウィックと組めば何でもできる気がするから手を貸す→主席から特大ペナルティを受ける。なんでこんなやつが人望あるんだ。
だから最後の決闘も全員殺して解決するのでは、と思いましたよ。けど真面目にやりましたね。最後の最後は狡猾な(セコい)騙しで見事ラスボスをヘッドショットしました。「コンセクエンス!」これにはミスターノーバディも笑うし、観客も笑う。賢さの数値が2から3に上がったなって思いました。この脳筋。
まあ全員殺したら、ケインの娘が殺されるのは目に見えてるので、できなかったんでしょう。けれどお前そういうの考えてたんだな、すでにいっぱい死んだぞ、コウジとか。
最後にランスレディック。訃報を聞いた時はショックでした。それこそジョンウィック4の撮影してそうな時期でしたね。彼が立ってるだけで、物語の中のようだし、映画の中にいると、最大限の敬意をこめて素晴らしいNPCでした。彼に感情移入できないぶん、彼を前にした他の人物を理解しやすくなるような、そんな役者でしたね。