「シリーズMAXの質と量で魅せる復讐譚の帰結」ジョン・ウィック コンセクエンス ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズMAXの質と量で魅せる復讐譚の帰結
怒涛のアクションと独特の世界観で毎回観客を圧倒するジョン・ウィックシリーズ、回を重ねるごとに上映時間が伸びて今回は2時間49分の大作になった。もちろん、頭から尻尾まであんこ、いや濃密なアクションが詰まっている。
正直、前回までの細かい設定を忘れかけていたので、公式サイトの動画とYouTubeのまとめ動画で(本編じゃなくてすみません)記憶を呼び起こして臨んだ。すると、映画館でも本編開始前に森川智之ナレーションのまとめ動画(公式サイトと同じもの)が流れる親切仕様だったのでちょっとびっくり。
いやはや、キアヌのアクションの相変わらずのキレの良さには驚嘆した。スーツが似合うあのスマートな体でバリエーション豊富な秒速アクションをこなす姿からあふれるババヤガのオーラ。そりゃ部分的にはスタントを使う場面もあるにしても、キアヌさん、今月で59歳よ? あんまり年をどうこう言うのは失礼だけれど、やはりすごい。相応の努力なしには、あの身体能力を絶対維持できない年齢だと思うので。
真田広之とドニー・イェンの殺陣からは、必殺の気迫が伝わってきた。スタエルスキ監督はインタビューで、ケインというキャラクターのモデルのひとつとして、座頭市が念頭にあったと明言している。確かにそんな感じ。
全盲でそこまでは無理やろ、というツッコミは、外連味が信条(これ大事)と言ってもいいこの映画に対しては無意味だ(でも、面白いからこそ戯れにツッコミたくなるというのもあるけれど。そういうツッコミしだしたら、このシリーズはきりがないので)。能力縛りがある中、テクニックと知恵で無双するからかっこいいのである。
よく考えたらこの二人もアラ還で、中高年男性のアクションが好きな私には美味しいキャスティングなのだが、見ている間にそんなことをのほほんと考える隙さえ与えない動きのキレだ。
ジョンを狙う賞金稼ぎのトラッカーは、他の人間に賞金を取られたくないからと結果的にちょいちょいジョンの援護をしたり、本作におけるわんこ係的立ち位置だったりしてどこか憎めない存在だった。彼との戦闘の最中に、犬に乱暴したチディをジョンは思わず撃つ。そしてトラッカーは、後でその借りを返す。この二人、場が違えば犬好きどうしで仲良くなれたのでは?
凱旋門の周囲での、走行する車の間隙を縫うアクションや、大阪のコンチネンタルホテルなどのロケはベルリンで行われたそうだ。
確かに「インターコンチネンタルホテル」は梅田にあって、ラウンジバーで本作の公開日に合わせてインスパイアカクテルを出したりしているのだが、外観は映画と全く違うし、ついでに梅田駅ももちろんああいう感じではない。梅田駅に何故か西梅田終着の電車が、などと脳内でローカルいじりをしつつ観ていたが、実物に寄せず作品の世界観に合わせた雰囲気に作り込んでいるのがむしろよかった。日本文化へのリスペクトがきちんとあったので好印象。電車内の広告やドアの開閉のアナウンスなど、細かい部分は真田広之のアドバイスも受けたそうだ。
アクションで唯一、階段落ちのシーンだけはちょっと長く感じた。ジョンの気持ちになってこっちも何だか息切れしてきた時に、ようやく上の方まで上ったところで蒲田行進曲よりハードな階段落ちで振り出しに戻ったので、こちらの気持ちが折れそうになった。
最後の決着は作法に則った決闘というのが、それまで散々アクロバティックな動きを見てきた目には新鮮に見えて、親友同士がやむなく対決する悲壮感も出ていてこれまたよかった。
それにしても今回のラスト……これまでも、「これは死んだか」という目にあっても実は生きてたジョン・ウィックだし、エンドロール後の映像込みで考えると「何らかの理由で死を偽装した」パターンもなきにしもあらず……とファンとしてはつい考えたくなる。数々の試練を生き抜いてきた彼にしてはあっけないとつい思ってしまう。
だが、主席連合からは自由になったから賞金首でもなくなったはずで、「死んだことにする」理由が見当たらない。
それと、これは物語の外のことになるが、VOGUEの記事にプロデューサーのベイジル・イヴァニクの次のような証言が書かれていた。本シリーズの撮影で身も心も消耗したキアヌ自身が、続編が作られないようジョン・ウィックを「この映画の最後で完全に殺してくれ」と言ったというのだ。それに対しイヴァニクは「10%くらい可能性を残しておこうかな」と答えたという。それでああなったということ……なんですか?
シリーズの復活はキアヌの気力体力のみぞ知る。そんなところだろうか。
余談:
•最後のウィンストンの「さらば息子よ」みたいなロシア語の台詞、手首のロシア正教の十字架のタトゥーからして、ウィンストンはルスカ・ロマの一員ぽいし、言葉のあやでなければジョンの父親だったりするのだろうか。
•原題はChapter 4なのに邦題が「コンセクエンス(consequence 字幕では「報い」)」となっている理由を、監督は「4という数字が死を連想させるとして日本人が忌み嫌う」からだと答えている。こんな死屍累々の映画を観ようという人がそんなこと気にしますかねえ。
イイねコメントお褒めお言葉ありがとうございます😊そういう結末の理屈ですか、最後の最後 皆さんご老体に鞭打つ活躍❗️アクションお腹いっぱい同感です。ありがとうございました😭