「映像は良かったけど脚本がもひとつでした」岸辺露伴 ルーヴルへ行く デビルチックさんの映画レビュー(感想・評価)
映像は良かったけど脚本がもひとつでした
実は原作読んでないのですが、ドラマはある程度観てます。「くしゃがら」の回は大好きだし、映画を観る当日もテンションを上げるために「富豪村」の回を見たという程度のにわかファンです。
画面を斜めに使ったり、人物を端に配置したり、ルーブルの絢爛さが際立つ構図になってたりしてすごく凝ってました。
でも脚本はもひとつだったと思います。
肝心のタイトルになっているルーヴルである必要がなかったと思います。
「ルーヴルへ行く」って、単にルーヴルに行きゃ良いってもんではないです。ルーヴルでなければならない理由をもっと考えてほしかったです。
もちろん巨大なルーヴルだからこそ絵画が埋もれてしまったとか、ルーヴルだからこそ地下倉庫で贋作が作られていたとかあると思います。しかしどちらもルーヴルでないと成立しないわけではないです。むしろルーヴルに犯罪者組織が入り込んでいたというセキュリティの甘さとか、そっちのリアリティの問題のほうが大きいと思います。
なので何ていうかNHKがルーヴルの豪華絢爛さや壮大さを紹介する映像を作る際についでにドラマを撮った感が否めません。
また、随所に蜘蛛が出てきますが、この蜘蛛の設定がイマイチだったように思います。なぜ蜘蛛でなければならないのか。これもなぜルーヴルでなければならないのかと同様、突き詰めねばならなかったと思います。
さらに言うと、世界中の黒の顔料を試してそれでも納得いくものに出会えず、ようやく出会った理想的な黒。その黒を見ただけで過去の罪が蘇るほどの黒、という割にたどり着いた絵はチープな感じがしました。見えないほどの黒の割に結構普通の絵なんだなという印象です。露伴たちは女の絵と言ってるけど映画を見ている視聴者には女が見えないただ真っ黒な画面で良かったのでは、とか思ったりしました。
あとは序盤の回想が長すぎる問題とか、なぜナナセが露伴の前に現れたのか、それはナナセの旧姓が岸辺だったからというのはちょっと弱くない?とかありますが、長くなるのでこのあたりに留めておきます。
というわけでまぁ、この作品はNHKで特番で良かったんじゃないでしょうか。あくまでルーヴル美術館の紹介がメインで、おまけとして岸辺露伴の物語がついてくるみたいな構成だったらめっちゃ評価したと思います。