「発明と革命を前夜に夢見て」アイスクリームフィーバー たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
発明と革命を前夜に夢見て
こういう作風が好きだからこそ、少し中身のリンクが欲しかったなぁとは思いつつ、その柔らかさと独創性がやっぱり掴んで離さない。唯一無二にして、美しい。
アイスクリームを軸に映されるのは、他人が伺うことの出来ない曇った表情。凛としていても溶け出す心にふと惹かれてみたり。等身大を描き切らないキャラクターの引き立ちはもちろんのこと、一瞬の仕草も逃さない独創的なカメラワークが引き込んでくる。言葉の可視化というより、それのデザインするように。ありきたりな映画に終止するのではなく、憧れと挑戦の爪痕が滲む。よって、普遍的な人間模様もカラフルに写っていく。衝動、はたまた天変地異。運命をひっくり返すような出来事であるとセンセーショナルに描いていく。
原作がある手前、言葉選びのデザイン化が必ずしも良くなるとは限らない。群像劇にしては混ざり合いが少し足りず、並行して起こる物語の輪郭を掴むまでになかなか時間がかかる。あくまでも個人は個人。そんな雰囲気映画がしばらく続いたのは勿体ない。そんな中でも、詩羽さんやマカロニえんぴつのはっとりさんといったキャストの使い方が光り、これまた他とは異なる作品の色を出していく。また発明といえる。
主演は吉岡里帆さん。迷い続ける等身大の姿が刺さるし、この華やかな作品にバニラのような香りを感じさせ、真ん中を貫く様が見事。モトーラ世理奈さんやMEGUMIさんが引き立つのもそこなのだ。また、松本まりかさんが過去1と言っていいくらい良い。相性抜群。不思議な雰囲気と絡み合う演技がバチッとハマっていて終始作品を鮮やかにしていた。南琴奈さんも良かったなぁ…。
センスやアイデンティティを表現することへの面白さ、難しさ。それを常に描いてきた千原徹也監督の新たな挑戦。その才能が世界を彩るように、私はここだよと叫べるように自分を問い続けたい。