「過去に観た宮崎作品の中で一番面白い」君たちはどう生きるか つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
過去に観た宮崎作品の中で一番面白い
宮崎駿監督の作品はあまり好みではないので観ていない作品もいくつかある。宮崎監督本人が語っているように彼の作品は基本的に「大人の鑑賞に耐えうる子ども映画」である。つまり、あまり面白くないのだ。大人がテレビの子ども番組を観ても面白くないように。
だからなのか、おそらく過去一番評価の低い本作に興味が湧いた。
そして、一部の人は最高傑作だとも言う。
結論からいえば、宮崎監督の作品で初めて「面白い」と感じながら観ることができた。
実際は、物語のまとめに入る終盤に少々飽きてしまったけれど、それでも自分が観たことのある宮崎作品の中でベストだったのは間違いない。
過去のジブリ作品や、「美女と野獣」「白雪姫」などのディズニー作品を想起させるような仕掛けの連続は、ストーリーテリングだけに依存しない、イマジネーションへの刺激に満ちた「映画」だった。
思い返せば、宮崎監督の過去の作品の多くは、アドベンチャー的な高揚感と、裏にちょこっと存在するテーマで構成されたものだった。
しかし本作は、宮崎作品の核ともいえるアドベンチャー的な高揚感を極力抑えているのだから、過去作のようなものを期待していた人たちにとっては駄作以外の何者でもないだろう。
逆に私のように過去作が好みではない者や、「大人の鑑賞に耐えうる子ども映画」から卒業しかけている人にとって最高傑作となるのも頷ける。
なぜならこの作品は「子どもの鑑賞に耐えうる大人映画」だったからだ。
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