「動く現代アート」君たちはどう生きるか ツツジさんの映画レビュー(感想・評価)
動く現代アート
映像・演出・演技(20)
ジブリの安定した美麗な作画が今回も光っていた。全体的にこれまでの宮崎駿作品の要素が随所に散りばめられており、似たような属性を持つ同作者の初期のマンガ『シュナの旅』への再帰性があり感慨深かった。
※インコがキャラデザが可愛かった!
久石譲の楽曲も作品全体のややホラーテイストな雰囲気をさらに引き立てていた。演技はアオサギを演じる菅田将暉の怪演に驚かされた。しかし、あいみょん演じる眞人の母『ヒミ』の演技が他のキャラクターの演技と比べ少々浮いてしまっていると感じたため、多少マイナス。
18点
世界観(20)
ルイス・キャロルの『不思議な国のアリス』のような辻褄の合わない不思議な世界観が映し出されていた。細かい考察で部分的な辻褄合わせはできるものの本作は全体での世界観の統合が意図的かは不明だが、なされていないため考察する意味は薄いのかもしれない。
個人的には結構好きだったが、明らかに万人受けする類の世界観ではないため、
14点
脚本(20)
ダンテ・アリギエーリの『神曲』を思わせる死後の世界巡りの話を大枠として、眞人たちが家族になるエピソードが語られていた。(この場合のベアトリーチェポジションは『ヒミ』かな?)本作のタイトルにもなっており、作中に本として登場する『君たちはどう生きるか』の作劇的な役割に注目してみてほしい。時空を超えた親子愛に結構感動するかもしれない。世界観とは異なり、エピソードの整合性はきっちり取れていた。
17点
キャラクター造形もしくは心理描写(20)
本作はキャラクター造形は標準的だがキャラクターの心理描写が秀逸である。新しい母との関係を受け入れられない眞人と、そんな彼を息子として受け入れられないナツコの心理が克明に描かれていた。
15点
メッセージ性(20)
タイトルはあんな感じだったが、作品はそこまで強い確固たるメッセージは感じられず、絵画のように見るものの感性に委ねられている印象だった。
15点
総評
鑑賞後は現代アートが展示されている美術館を巡った後のような心地いい疲労感に襲われた。ジブリのエンタメ作品を期待していた人はとんだ肩透かしを食らったかもしれないが、考察が好きな自分にはかなり刺さった。
でも子供と一緒に行くことはお勧めしない。
79点