「謎に前向きな気持ちになった」君たちはどう生きるか セロリさんの映画レビュー(感想・評価)
謎に前向きな気持ちになった
勝手に自分の人生と置き換えて観ていました。
現実から避難して、見るもの触れるものを全て睨んでいた時期を思い出して。
塔を現実からの避難場所として。
現実世界は辛い。理不尽な事だらけ。
だからこそ、幻想の世界は魅力的なんですよね。
誰しもが、アオサギの誘惑に誘い導かれ、悪意で自分の心を守る可能性がある。
あの塔に惹かれる🟰逃げたい現実に直面した、というように解釈しました。
眞人も、大叔父さんも、キリコさんも、夏子さんも、そしてヒミも。
それでも自分の悪意と向き合って、前向きに生きようとするものが、塔から抜け出すんだなって。
私自身の体験だと、やっと授かった子どもが流産した時、心が壊れてしまいました。周りの妊娠報告を受けるたび、悪意で満ちて、友人との連絡を断ったりと、作品でいう塔の中に閉じこもりました。今でも、閉じこもりたくなる事があります。
この映画の話は、人間の心の中をファンタジーとして具現化したものだと思って考えます。
最後塔から抜け出せた時、多くの人は記憶がなくなる
というのをアオサギが言っていて、なんだか救われた気持ちになりました。
こんなドロドロ周りを呪って恨んで人のせいにしてる悪意に満ちた今の私でも、この辛さから気持ちの整理をつけて抜け出せたら、すっかり忘れて前向きに生きていく事ができるんじゃないか、と。
もしくは、眞人のように、自分を救ってくれた、守ってくれた人の事を忘れず、現実に向き合える事ができるんじゃないか、とも。
人生の最後を塔の中で過ごした大叔父さんもひとつ。最後立派に若者へ未来を託され事に、虚しさより清々しさを感じました。
アラサーの私。まだまだ長い人生、また歳を重ねてから見直していきたい映画だなと思いました。
きっと、その都度、自分の中の答えと向き合う事ができるツールとして、この映画が寄り添ってくれると思います。