「夏に味わうこのクラクラ感こそジブリ。」君たちはどう生きるか DEPO LABOさんの映画レビュー(感想・評価)
夏に味わうこのクラクラ感こそジブリ。
空襲(?)をきっかけに母を失い、父親の再婚者のもとへ疎開した主人公。
家柄による転校先での葛藤や、再婚母への嫌悪感に苛まれる主人公は、実母が遺してくれた本により解放される。
パワーアップした主人公が、「母親に会わせてやる」とそそのかす青サギを追い、謎の塔の不思議世界に迷い込むお話。
▼他人の夢を体験するクラクラ感がすごい。
・ばか暑い夏でクラクラしてる中、謎世界に迷い込まされて、再び現実世界に戻され、なんだったんだあれは・・・とさらにクラクラする感じが、まさに夏公開のジブリの真骨頂。
・トトロや千と千尋よろしく、夏の空気のなかでそのクラクラ感を味わわせてくれただけで有難い。
(以下ネタバレ気味)
▼人間に生まれるために舞い上がった、キュートな命の精霊たちに感動した瞬間、
パックマンスタイルで次々とペリカンに喰われていった不条理の衝撃が忘れられない
▼主人公が異世界へ出発する前にすでに成長してる
・異世界に迷い込んだ主人公が、冒険や出会いを通じて、人間的に成長を遂げるというパターンが多い気がするけど、
本を通して、冒険前に主人公はすでに成長していて、なんでもこいや状態で、異世界ダンジョンを淡々とこなす感じがなんかおもしろい。
▼ファンタジーといってもキラキラしてるだけじゃなく、エグみが容赦ない
・世代的に劇場でのジブリ鑑賞デビューのキッズたちもいるだろうに、ガマガエル大量発生シーンや、大魚かっさばき臓器シーンといった、シュバンクマイエルばりの強烈シーンでトラウマになる子もいるんだろうなぁ。。
▼視聴者が普段大事だと思っていることが、この抽象度の高い作品を通して強化されるところがあるかも
・かろうじて映画のメッセージ性が保たれているのは、大叔父に託された「より良い世界を作るために、混沌の現実世界に戻ること」を主人公が決意するところにある気がする
・主人公が宮﨑駿監督をモデルにしてるっぽいところをみると、だからアニメを一生かけて頑張ってきたのかという見方もできるし、何かに普段打ち込んでいる観客は鼓舞されるところあるかも。
・フィクションとノンフィクションがないまぜになっていて、さらに抽象度が高いので、観客は映画を観ていても、実は自分自身を勝手に発見することになり、結果的に作品タイトルのような作用が働くという構造がおもしろい。
・それを踏まえていろんな人の感想を見ると、それぞれが大事にしていることが垣間見えて、それもまたおもしろい。