劇場公開日 2023年7月14日

「宮崎駿からの「訣別」の傑作」君たちはどう生きるか えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0宮崎駿からの「訣別」の傑作

2023年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

これまで数多くの白眉を通して、長年にわたって「人間の業の深さに嫌悪しながらも、共に生きること」を描いてきた宮崎駿がついに、世界の崩壊を示唆し、「もはや、共に生きることはできないけれど、それでも人間の生活は続くのだから、君たちはどう生きるか、ひとりひとりで考えなさい」と訣別を表現した傑作、と読み取りました。

物語としては、人間の業によって崩壊する世界を暗喩しながら、母を喪った悲しみを形象化していくことの苛烈さをミクロの視点で描きつつ、そうした苛烈さをも内包する命がつながっていくマクロ的な輪廻観を、どこか冷ややかに対置させています。

ナウシカやシータやアシタカが目指したように、世界とそこに生きる人たちが呼応して、共に生きたかった。けど、クシャナやムスカやジコ坊や堀越二郎のような抗いがたい業によって秩序だった世界はほどなく滅んでしまう。せめて、キキやサンや千尋やポニョのように、ひとりひとりがよく考えて、連綿とつながっていく「命の営み」だけはどうか絶やさずに。

そういった根底にあるストーリー(とわたしが勝手に読み取った)以外は宮崎駿の好き放題。普通の作家なら、コンテの段階で配給やプロデューサーに「わけわからん」をはじかれること請け合いだろう。メタファーや実験的表現、あるいは過去作品や古今東西の芸術に対するオマージュがてんこ盛りで、そもそも観客に何らかの解釈することすら許さない、ある種の難解さは、さながらピカソがキュビズムで世界に問いかけたかのよう(知らんけど)。

ちなみに、自身が創造してきた世界をだれかに引き継ぎたかったけど無理だったという、宮崎駿の諦念的な自己投影が、危ういバランスで石を支えている大叔父さんにほのかに込められていると解釈するのは深読みが過ぎるだろうか。

えすけん
みかずきさんのコメント
2023年9月5日

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私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、Yahoo映画レビューなどに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報採用です。こちらのサイトには昨年2月に登録しました。
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本作、主人公・眞人は疎開先で、人間界ではない異世界に触れ、様々な価値観、世界観を知り、大きく成長していきます。そして、これからどう生きるかを定めて東京に戻っていきます。物語はここで終わります。プロローグで終わり、作品タイトルに繋がっていくと感じました。
眞人が生きていた時代より、多様化、複雑化した混沌とした現代社会の中で、君たち(観客)は、どう生きるかを定め、行動して欲しいという宮崎監督からの問題提起、エールが聞こえてくるようでした。

ー以上ー

みかずき