「言い遺したいことがいっぱいアッテナ」君たちはどう生きるか かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
言い遺したいことがいっぱいアッテナ
宮崎駿の集大成なのでしょう。
過去作品へのセルフオマージュ(と言ったら大げさかもですが)が随所にあって、走馬灯のよう。
大まかに少年の成長物語らしい、というのは分かりました。
時代設定にしても人物設定にしても、必然性があってそうしたんだろうが、何のためなのか、何がしたくて何が言いたいのか掴めない。
アオサギを筆頭として、多すぎる老婆とか、キャラ変するキリコ、妊娠中の継母ナツコ、消えたおじ、とか何かのメタファーらしき存在がたくさんあるけど、何の比喩なのか良くわかりません。したがって彼らのパートのエピソードも同様によく分からない。
で、同一ストーリー上の話として全体の整合性を考えて読み解こうとするのでわけわからなくなるのかも、と思った。
宮崎駿は第一線の職業人としても人としても経験が長いので、思うことや言いたいこと(言い遺したいこと)がたくさんあって、それを集大成として全部、宮崎駿の個人的な表現でぶち込んだために、それぞれのキャラクターやエピソードが分かりにくく、とっちらかったのかも。
つぎはぎで一貫性がないので、ひとつのストーリーの上で動く一本の映画、というよりは「誰それのパート」としてオムニバスみたいに見たら良いか。
考えてみたら人の日常は必ずしも連続線上にあるわけではなく、ひとつひとつ脈絡があるようなないような出来事が集まり積み重なってできているので、案外これがリアルに近いのかも知れない。
それと、制作に時間を掛けすぎたのでは、とも思う。
7年の間に、日本のアニメ界では名作がたくさん生まれている。それらを見てきた観客の目も進化しているはず。なまじ長く時間を掛けたために、他作品を意識してあれこれ取り込んで修正して、それで冗長になったり散漫になったりしていないだろうか。
アニメーションはさすがで、「未来少年コナン」からの宮崎アニメ健在と思いました。
かばこさま
コメント返信、ありがとうございました。1つ前のコメントは、自分で削除しました。
エンタメは芸術作品ではなく、商業的な作品ですから、お金や時間を消費してくれる観客の満足を第一義に考えるのは、当然だと私も思います。
そもそも映画監督や脚本家は、好き勝手に作品を作らせてはいけない人種という認識です。
それを管理せず、興行収入の目標数字に目が眩んだ周囲に責任があると考えています。
でも映画が公開したら真っ先に叩かれるのは監督や脚本家で、私もこのサイトに書かないだけで実際にはかなり酷評します。
この作品は、もう充分に“社会的制裁”を受けたのではないかと思っています。
たまたまこの映画の地上波放送をリアタイして、何も期待しないで観ると随分違うね(笑)と話しながら、新しく気付いたことをレビューしました。
そしてたまたま、私と同じことに気付いたレビュアーさんからコメントをもらいました。
流れ星のような★5つでしたが、私のようにレビューが少ないレビュアーは、こういう偶然だけで幸せでした。
長々と失礼しました。
かばこさんからフォローを外されたら悲しいなと思っていたので、ホッとしました。
かばこさま
劇場公開時には☆ゼロで、今夜金ローで観たら★5つに変わりました。
映画を鑑賞した時の私の状態が、日常のリアルに近くなったからだと思います(映画館で期待して鑑賞→何となく地上波で2度目)
>考えてみたら人の日常は必ずしも連続線上にあるわけではなく、ひとつひとつ脈絡があるようなないような出来事が集まり積み重なってできているので、案外これがリアルに近いのかも知れない。
かばこさんのレビューが他の人と違って面白いのは、映画のリアリティというより、“リアル”についての文章表現の巧さなんだと気付きました。
言いたいことがコメントで伝えきれなくて、もどかしいです…
モアイさん
そういう見方は面白いですね。
私は、ヒトを楽しませることより自分の満足を優先するようになった時点で、輝いていた恒星が白色矮星になったのを感じます。単純にがっかりします。
クリント・イーストウッドの「クライ・マッチョ」見たときに、クリント・イーストウッドもか、と思ってしまった、彼だけはそうならないと思っていたのに。でも、長年楽しませてもらったので、一本くらいはご褒美映画があってもいいし、彼もそう思ってるのではとも思っています。
かばこさん
共感とコメントありがとうございます。
私としては「君どう」は作品として面白いとは思えませんでしたが、ただ宮崎駿監督がこれを撮ったという事実はすごく面白かったです。
これを言うと怒る人もいると思うのでここだけの話なのですが、黒澤明の「夢」や大島渚の「御法度」ってかつての才気が見る影もない程の駄作だったと思うんですよね。
でも数多の名作を撮った巨匠も失敗するんだ!という事実に励まされる気持ちになるんですよ。
私の数億倍も上等な人生を送った人の失敗(と勝手に目しているもの)を見て励まされるとか言っているのはどうかと思いますが、完璧なだけじゃ逆に詰まらないよなって感覚が自分の中にはあります。
なので宮崎監督の輝かしいフィルモグラフィに「君どう」がシレッと並ぶという事実がすごくいいんだよなぁ~って思っています。
「もののけ姫」面白いですよね!「君どう」を機に見ていない作品含めて過去作見直しまして、公開当時より面白く感じました。
とにかく凄いですよね。あれだけの物語がしっかり1本でまとまっている事に改めて驚かされます。それに比べて「君どう」ときたら…
ごめんなさい。脳内でまとまらないものがそのまま出てきてしまっているので今回はこれで失礼いたします。それではまた。