劇場公開日 2023年7月14日

「私たちはどう生きるか」君たちはどう生きるか さぶろー@アニメ映画好きさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私たちはどう生きるか

2023年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 本日、二回目の鑑賞をしてきた。最近は忙しく、一回目の鑑賞から随分と時間がかかってしまった。
 感想としては、「よくわからない」というのが最も正確なものだろう。
 もう少し詳しく書くと、この作品は宮崎駿の世界観をそのまま体現したものである。「これまでの宮崎駿作品のオンパレード」と感じるのはこれが原因だ。これまでの作品と比べて宮崎駿という人間をより濃く前面に押し出しているので、とても難解な物語となっているのだ。
 この作品は、矛盾点だったり、キャラクターの一貫性の欠如だったり、突っ込みたくなるような箇所がちらほらと散見される。批判を受けたりつまらないと評されるのは、これらのことが原因だろう。しかしこれは「映像によるオクシモロン的表現」「キャラクターの多面性」とも解釈することが出来る。このように解釈することが出来るのは表現の繊細さ、ギリギリ解釈できるような場面を設ける宮﨑駿のやさしさがあるからだが、その根底には「宮崎駿が作ったから」という先入観が存在している。無名監督が作ったらこのような評価はごく一部になり、多くの人からは「駄作」と評されるだろう。宮﨑駿もきっと「売れよう」などとは微塵も思っていないはずだ。好きなものを好きなように表現するという、「売れる」ことを意識しなければならない他の創作者たちからは嫉妬されそうな作品を世に出したのである。
 個人的にこの作品は、宮崎駿を永久保存したようなものだと感じた。「自分はアニメ制作に生きたんだ」という思いが詰まっており、クレジットで数多くのアニメ制作会社の名前が表示された様はまさに圧巻だった。
 ではこの物語は結局何を伝えたいのか、何を表現したいのか、ということについて少しばかり書いていく。
 簡単に言うとタイトル通りである。そのままである。「君たちはどう生きるか」、その問題提起だけして観客にすべてをゆだねている。それゆえ賛否両論が存在している。宮﨑駿は「それも君の生き方だ」とでも言うのだろうか。
 この作品には「おわり」の文字がない。このことから、今回映画にした部分は主人公の生き方を指し示す前日譚であり、本筋はその後のキャラクターたち、我々観客たち、そして宮﨑駿の「これからの生き方」にあるのではないかと解釈できる。我々は一度原点に立ち返り「自分はどう生きるか」について考える必要があるのかもしれない。
 最後になぜ4.0という評価を付けたかということについてだが、この映画はエンタメ性がほぼないからというのが主な理由である。宮﨑駿による宮崎駿のための作品であり、我々観客はその表面しか掬えないのだ。
 しかしこの作品は、宮崎駿という人間の人間性を垣間見ることが出来、その核心に少しでも触れることのできるとても素敵なものとして完成している。
 一つの芸術作品として、鑑賞する価値は十二分にあると感じる。

さぶろー@アニメ映画好き
Kクラス職員さんのコメント
2023年8月12日

「おわり」の文字については気付きませんでした。
うろ覚えですが、宮崎監督は以前
「まったく客が入らない映画を作りたい」と発言していたような、、、。
ジブリ美術館で限定上映してる短編は正にソレって感じです。
今回の映画もその延長線上にあるのでしょう。
宮崎駿氏は、若い頃に心血注いだ作品が(評価は異常に高いが)軒並コケ続けている過去があり、氏の性格から世界的な巨匠と認知された現在の状況に何かモヤモヤとした「居心地の悪さ」を感じていたのではないか?と、私は勝手ながら愚考していました。
ジブリ設立以後はスタジオ存続のために作品をヒットさせなければならず、悪く言えば「客に媚びた」作品を作り続けました(と、私は思っています)。
なので今回の「賛否両論」は宮崎監督が意図的に作り出した状況で、監督自身は満足してるんじゃないか?と思います。

Kクラス職員