「テーマはわかりやすい。でも傑作ではないと思う。」君たちはどう生きるか ふふふ。さんの映画レビュー(感想・評価)
テーマはわかりやすい。でも傑作ではないと思う。
置いていかれるとか、理解できないとか、聞いていたので身構えましたが、テーマはわかりやすいと思いました。本の『君たちはどう生きるか』を読んだことがあって、テーマがリンクしているだろうと推測しながら観たからかもしれませんが。
読み返したわけではないので曖昧ですが、本では「人は成長過程で自分中心のものの見方を離れ、社会を俯瞰して見れるようになる」とされていたと思います。
私が映画で気になったのは「義母が眞人を『大嫌いだ』と言った後、眞人が急に『お母さん』と呼ぶようになった」シーンです。
眞人はここで[義理の親子になったことに義母も苦しんでいる]ことに初めて気がつき、[だからこそ自分のいない異世界に来て出産しようとしている]と理解したのではないでしょうか。そして[義理の親子という関係を築く]覚悟をしたのだと思います。
(なんで妹と再婚?というレビューを散見するのですが、この頃は結婚は家同士でするもので、配偶者が死んだ時に兄弟姉妹と再婚することはよくあったと聞きます)
本でいうと冒頭なので、映画では自分中心の子供時代をゆっくり描いている感じです。
他にもいろいろあると思うのですが、本では最後に「自分で考えて生きること」を訴えていました。
映画でも眞人は「与えられた無垢の石で新しい世界を築く」という用意された道を拒否し「戦時中の混乱した世界に戻って友達と協力して生きていく」ことを自分で決めます。
そしてラストシーンでは、戦争が終わり東京に帰るという変化の時に本を持っていたことから、その後も眞人が自分で考えて生きていこうとしていることが示されました。
テーマが好きだし、全体として嫌いではないけど、傑作という印象ではありませんでした。
その時代がそうだったと言っても男尊女卑を無批判に描くのはどうなのか?と思いますし。眞人がタバコを渡したりクチバシを治したりと男性(らしきもの)には報酬を払うのに、女性には無報酬で助けてもらう、という描き方も気になります。
監督がジブリや自分や後継者を重ねて作ったかはわかりませんが、もしそうだとしたら、プライベートフィルムとして身内で見ればよいものです。
映像もセルフオマージュなのかもしれませんが、過去作を上手く織り込んであるというより、見覚えのあるもののツギハギという印象で、懐かしくて感動するより先に飽きてしまいました。