「みんな、やっぱり宮崎駿が好きなんだ❗」君たちはどう生きるか kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
みんな、やっぱり宮崎駿が好きなんだ❗
宮崎駿10年ぶりの監督復帰作は、公開直後の興収が『千と千尋の神隠し』を上回ったとのこと。宮崎駿ファンの飢餓感が高じた熱量は凄まじい…ということだろう。
セルアニメを感じさせる映像が流れ始めると、それだけで感動的ですらある。
のっけから火災の表現に圧倒される。『風立ちぬ』での震災の表現が見事だったのを思い出す。
大塚康夫の流れをくむ宮崎駿の絵柄(厳密にはキャラクターデザイン・作画監督の絵柄のはずだが)は、故郷のような懐かしさと心地よさがある。「ルパン三世('71)」「侍ジャイアンツ('73)」で子供時代を過ごした者の刷り込み現象だろうか。
さらに本作には、『ルパン三世/カリオストロの城』以降の宮崎駿長編アニメーションの数々を連想させるシーンが忍ばされているのだから、マニアでなくても嬉しくなるだろう。
戦時下、主人公の眞人少年は軍需工場の経営者を父にもつ裕福な家の坊っちゃんだ。
彼が母を火事で亡くし、母の妹と再婚した父と母方の実家(屋敷)に疎開する。そこで摩訶不思議な大冒険が展開するのだ。
宮崎駿は「群」の描写が好きなようで、最初は使用人の老婆たちが旦那様のカバンを覗き込んでいる小さな「群」だったが、段々とエスカレートして最後は不気味なまでのインコの大群が現れる。
人それぞれの感覚かもしれないが、この「群」というのは嫌悪感を抱かせる作用があると思う。「ルパン三世」でみせた大勢の制服警官が一斉に飛びかかる演出などは、宮崎駿が繰り返し用いてきたコメディー表現で、この程度なら実に面白い。しかし、老婆も含めて異形のものが集合すると不気味さを感じずにはいられない。
宮崎駿作品には時折“気持ち悪さ”が持ち込まれている気がする。明るい色調で見失いがちだが、そういう変質的な面を宮崎駿は秘めていると思う。
さて、物語自体は少々破綻ぎみではないかと感じた。
いったい何のために少年は戦ったのか。ふしぎの国のキャラクターたちの役割は何だったのか。そして、少年はこの体験で何かを得たのか。
全ては、流麗で迫力あるアニメーション表現に溶け込んで見えない。
この物語が「君たちはどう生きるか」と問いかけているのかと言うと、そうではないと思う。
だが、長編アニメーション映画を作るという重労働に、老骨に鞭打って、制作部門を解体したジブリにスタッフを集めてまで再び挑んだ宮崎駿の生きざまが、君たちは…と、問いかけているのかも知れない。
敬意を表して★半分加点。
kazzさん
共感&コメントありがとうございます。2回目にまだ臨めてないのですが代わりに他のジブリ作品を孫と楽しんでます。やはり画像のなんとも言えない美しさ、暖かさに改めて感銘を受けています。
kazzさんの評点が、自分に割と近くてホッとしました🤣
何回も観ないと分からない作品なのかもしれないですが、
何回も観たくなる作品かと問われると、疑問です😅
kazzさん、共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り「観客に媚びない」監督の姿勢はしっかり伝わってきます。ここまで評価された宮﨑駿監督だからこそ作ることができ、作ることが許された作品のように思えます。とはいえ、恥ずかしながら自分には、あいかわらず作品の本質が理解できていません。😓
おはようございます。
〝群〟についての考察、さすがです。
言われてみれば、工場から一時疎開させたコックピットの屋根(覆い)も群れでした。今にして思うとあれば、特攻隊用に作られたものかもしれませんね。
だとすれば、近い未来の〝死の群れ〟だったということになります。
『戦闘機は無類に好きなのに、戦争は大嫌い』な宮﨑駿監督の複雑な思いも窺えます。3時間くらいの脚本をアニメとしての上限2時間になんとか収めた、そのための分かりづらさ。そんな気がします