「観た方がいいと思うがそうも言い切れ無くも無い」君たちはどう生きるか nikumakinigiriさんの映画レビュー(感想・評価)
観た方がいいと思うがそうも言い切れ無くも無い
公開日だけの発表で、ストーリーやキャスト等は全て伏せるというやり方で公開された今作。
このスラムダンク方式は、クリエーターなら誰しもが夢見る方法だろうと思うけど、ジブリで宮崎駿監督だからこそ出来たと思う。
プロデューサーの鈴木さんは震えていたのではあるまいか、いや、信じて座していたのかもしれない。
確かに今作は今までのジブリから見れば異色の問題作だと思いました。
以下多少のネタバレと私見を含みます⬇️
今作を観ての感想としては
幻想小説か不条理小説を読んだ様な気持ちになった。
小さい頃、黒澤明の「夢」をみた時の「・・・なるほど?」感。
きっと、ジブリ!エンタメ!として観るとがっかりする気がする。
アートを鑑賞する気持ちにスイッチすると楽しい!と鑑賞中に気付く。
色々と考えながら観ることができたし、ジブリ作品のいろんなオマージュ?が出てきて、それはそれでエンタメの気持ちを呼び起こしてくれて楽しかった。
ただ、ジブリの疾走感のある絵は、今作ではなりをひそめていた気がするのは少し寂しかった。
この作品のテーマはきっと「死」だと思う。
火垂るの墓の様にわかりやすい形にはなっていないけど、たぶん「死」や「時代の終わり」だと思う。
そして「託す」というテーマに移ろい、作品は終わる。
長編を撮るのは多分最後になるだろう宮崎駿監督の、いろいろな思いを乗せた作品だと思う。
監督自身もこの作品について「自分でもよく分からない」と言っている事も含めて、己の人生の天井が見えてきた監督が、それでも世の中にあるいろいろな映像表現を肯定しつつ『通したい何か』を観客それぞれが想像したら面白いのではないでしょうか。
大ヒットはしないだろうし、子供と観る映画でもないけど
観た方が良いだろうなと思う。
私は観れて良かったし、監督の居る時代に生きれて良かったと思った。
ふと、大好きな高畑監督が亡くなった時を思い出し『ぱやお、元気に長生きしてごろうちゃんを困らせたれ』と勝手に思いながら映画館から帰った。