「序盤は良いですが…」君たちはどう生きるか nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
序盤は良いですが…
それ程ジブリや宮崎駿が好きというわけではありませんが、気になったので観に行きました。
宮崎駿作品できちんと見たことがあるのは、「ナウシカ」「ラピュタ」「もののけ姫」くらいで、それ以外はテレビなどでちょっとは目にしているという程度のものです。
タイトルの元になっている本は未読です。
やはりアニメーションとして面白く、音響などもしっくりきますし、鳥や動物などの不思議な迫力のある描写も楽しめました。
ストーリーとしては、時代背景から来る緊張感や謎めいた雰囲気、実母と継母への心情やコツコツと武器を作る様子など、別の世界に行くまでの描写は良かったです。
しかし、別世界に行ってからは、個人的にはあまりしっくりこなかった感じです。
和洋織り交ぜたファンタジーな別世界を旅するロードムービーのような雰囲気は、個人的には好きではありませんでした。
いろいろな経験をして成長した、母の死を乗り越えて新しい母を受け入れることができた、というのは良いかとも思いますが。
戦争で母を失ったところをこういうファンタジーで癒されるという部分が、あまりしっくりこないというか。
母を訪ねて別の世界をめぐり、助けてくれる人間は女性ばかりというところには、母性というものに対する特別な想いは感じます。
大叔父が血縁者に後を継がせようとしたり世界を再構築させようとしたりする部分は、現実の理不尽な世界を再構築すべきだというようにも取れましたし、血縁や跡継ぎにこだわる社会や一人の手によって支えられているような社会は崩壊するというようにも取れました。
ささいながらも悪意のある人間が独裁的な立場に着くのは危険だというようにも。
戦闘機工場を運営しているらしい権力者的な父親や、戦闘機の部品らしいものを美しいなどと表現するなど、戦争に触れる描写はなんだか引っかかりました。
その時代のこととして、あえて善とか悪とかなく描いているのかもしれませんが。
何かモチーフにしている話やメタファーなどがあるのかもしれませんが、抽象的なことを羅列しているように感じた別世界のストーリーは、あまり乗れませんでした。
これまでの宮崎駿の作品世界を横断しているというか混ぜ合わせたというかつぎはぎしているというか、そんな風にも感じました。