「自分は見てよかったと感じた」君たちはどう生きるか ところこさんの映画レビュー(感想・評価)
自分は見てよかったと感じた
まず、すべての画に力があり、美しい人物や美麗な背景がハイテンポで動いているだけで迫力があった。
ジブリスタジオ特有の、生き生きとした動物?も所狭しと動き回ったり画面を埋め尽くすシーンがあって、これは映画館で見る価値はあるな、と思った。
音楽も素晴らしかった。緊迫したシーンや盛り上がりによく合っていた。
ストーリーについては…評価しづらいが、万人に響くわかりやすいストーリーではないだろうなとは思った。
物語に伏線や論理性を求める人には向いていないと思う。子どもにはきつそう。
大人になった自分には、なんとなくであるが描きたいとのはぼんやりわからなくもない…気がする。
少年が頼りない子どもに味わった戦禍の恐怖(炎への畏怖)や母を失った痛み、新生活を始めようとする父親への複雑な愛情と反発、図々しく馴れ馴れしく自分に接触しようとする叔母(しかも妙齢の美女)。
田舎に来たのもすすんでではなかっただろうし、疎開先のすべてが嫌で、衝動的に頭に石を叩きつけたのだろうと解釈した。
同級生に罪をかぶせたいとか学校に行きたくないとかそういう話ではないだろうと思う。
青鷺が序盤に不気味な誘いをかけてくるのは、少年の逃げたいでも逃げられないという葛藤が表れていたのかな。
少年が叔母を助けに行く、と決意して異世界に足を踏み入れてからが、物語の転換点。
夏子が異世界に行ってしまったのは、彼女もなにかに誘われて、その誘いに堕ちたからかもしれない。
少年を大嫌い、と言ったのは、隠してきた本音なんだろう。
でも、甥にもあたる、慣れない環境に耐えている年若い少年に悟られるわけにはいかない。
無事な出産のためにはここを離れなければならない…と思ったのかな。
産屋には魔除けの呪いのようなものもあったし、悪意あるものから母となる女性を守るための場所なのかもしれないと思った。
少年は紆余曲折あったものの、見事凛々しく強い女性たちや、友になった青鷺と力を合わせて、自分と叔母を助けることに成功して、その成長で現実世界に帰ることができたし、これからも力強く生きていけるだろう。
辛いときでも、一人でも、できることを考えて、努力して、人と心を通わせることを覚えたからだ。
このあたりのメッセージ性には、千と千尋の神隠しを思い出した。
前評判のなさと宮崎監督の暴走で物語が破綻しているのではないかと危惧しながら映画館に来たが、思いの外興味深かったし飽きなかった。
難解ではあると思うが破綻はしていないし、美麗なアニメーションの中にメッセージ性がちりばめられている。
個人的には、和と洋がごちゃまぜになっているあたりに
(純和風のお屋敷の中にあの洋館・異世界の建築物・伯父さんたちが洋風。夏子さん一過は普段は由緒正しく和装を身に着け破魔の弓を扱っている)
暗喩がたくさんあるのかなとは思ったが、他の方の考察を楽しみにしたいと思います。