「造り手たちは老いた」君たちはどう生きるか yossy7さんの映画レビュー(感想・評価)
造り手たちは老いた
ジブリ作品が好きな家族に、面白かったら皆でそろって行こうね、と言って偵察がてら一人で観に行った。
家族は怖い話は嫌だと言ったが、いずれにせよ、監督の思いの詰まった集大成的な作品になるのだろうと、長い間にわたり人生の様々な場面で触れてきた過去の作品に思いを馳せ、期待と不安の入り混じった気持ちで映画館に向かった。
映画の内容がどのようなものであれ、見終わったその夜は、余韻にひたり思索にふけり、自分の人生を顧みるとともに今後を考えながら過ごすことになるものと思っていた。
今思うと少し期待しすぎていたのかもしれなかったが、見終わった感想としてはなんとも言えないものだった。
言葉を選ばずに書かせて頂くと、主人公達がどう生きようとしているかのメッセージが明確に伝わってこず、タイトル倒れの感が否めない。説教臭い話にならないようにしたのかもしれないが、軸の定まらないストーリーを過去何度も見たようなファンタジーアクションで味付けしただけの映画にすぎないと感じた。ファンタジーアクションにしても二番煎じ感しかない。
そこに、世の人々をあっと言わせるような新しい映像表現や価値観の提示はなく、もはや造り手たちにそれを産み出すアイデアの引き出しやイマジネーションがなくなってしまったように感じた。多くのアーティストたちが晩年そのような途をたどり、過去のヒット作品を演じるいわゆる名人芸のプレイヤーとなっていくように。ジブリ映画のユニークな画面構成やアニメ表現は、その名人芸的なもので健在だと感じさせられたが、それだけでは映画は成り立たないと思う。気の抜けたコーラ、冷めたピザ、クリープのないコーヒー?、何というのが適切か難しいが、重要なものが欠落しているように自分には感じられた。
昨日訪れた映画館は満員御礼で、いつにない活況を呈していた。スタッフさんたちも嬉しそうだった。若い人たちが多く、楽しんでみられたのならいいことだと思う。しかし、宮崎駿監督の最後の作品は風立ちぬで良かったと自分は思った。