「彼が世界を受け入れる話。」君たちはどう生きるか たくさんの映画レビュー(感想・評価)
彼が世界を受け入れる話。
今、世界は揺れている。
未曾有のパンデミック。大国による侵略。金利上昇に伴う銀行危機。
挙げだしたらキリがない。科学技術は進み、数十年、数百年前の世界と比べてみれば、世界は確実に豊かになったと言えるだろう。しかしこれは、人々の人生が良くなったことを意味するのだろうか。
世界は揺れている。
崩れてしまうのかもしれない。それでも彼は、皆がいるこの世界を愛し続けるのだ。
斯様な主張が感じ取れる今作であったが、前作に『風立ちぬ』を撮ったとは思えないほどケレン味溢れる描写が多く、特に序盤の炎に包まれるシーンは、御年82歳にして新たな扉を開けたようだった。
ただ、前述の主張にたどりつくまでのプロセスが十分に描ききれていなかったようにも感じる。なぜ彼は大叔父の提案を拒むほどに世界を愛しているのか。
ナウシカっぽい終わり方だし、ナウシカくらい感情移入しにくい主人公だった。
*追記(2回目)
あれ、あんま面白くない?
ストーリーわかった状態でもう一度見てみると、この映画、思ったよりもとっちらかっている。
「夏子を取り戻しに行く」という目標はあるものの、ワラワラに出会ってみたり、インコに殺されそうになったり、ヒミとご飯を食べたり、本筋と関係ないようなことが多すぎる。
テーマにしても同様で、複数のテーマが同時に語られるので結局何が伝えたい映画なのか掴めない。まず分かりやすいものが「少年が母の元から巣立ち、自立する」という物語。そして「混乱した現在でも、生き続けなければない」というメッセージ。最後に「共存する生と死」という概念。これはワラワラという生命の源が魚を殺さなければ生きていけないことや、そのワラワラを食べるペリカンですら自分たちの命のために行動していることからも分かる。