「淡々とした会話劇の中で、若者たちと自然との距離感が滲み出てくる」プロミスト・ランド Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々とした会話劇の中で、若者たちと自然との距離感が滲み出てくる
2024.7.11 アップリンク京都
2024年の日本映画(89分、G)
原作は飯嶋友和の小説『プロミスト・ランド(『汝ふたたび故郷へ帰れず』所収)
マタギとして生きる青年と、地元の風習に懐疑的な青年の「最後の狩り」を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は飯島将史
物語の舞台は、東北地方のある村(ロケ地は山形県鶴岡市大鳥)
そこでマタギとした生きてきた礼二郎(寛一郎)と、地元の風習に馴染めない弟分の信行(杉田雷鱗)は、行政が決めた熊の狩猟禁止に憤りを覚えていた
礼二郎は決定を不服と史、信行は仕方ないと思いながらも、兄貴分の礼二郎を真っ向からは否定できない
マタギ衆の親方・下山(小林薫)は、狩りを行えば密猟になるとして、「今年の山はなしだ」と断言した
物語は、その決定に従えない礼二郎が信行を連れて山に入り、熊狩りをする様子が描かれていく
山に入ってからは、ほぼ二人だけの会話劇で、礼二郎と信行の隠された本音というものが描かれて行く
礼二郎は「人間はやりたいことをするようにできている」と言い、実家の養鶏場の後継が差し迫っている信行は、自分の将来と向き合うことになっていく
熊狩りの実態を描いている内容で、年に1頭も狩りをしない現状であるとか、禁止措置をする以外にやるべきことがあるだろうというメッセージが込められている
また、礼二郎の狩りを誤魔化そうとして、熊の肉を地面に植えようとする下山たちに対して、彼は自然に対する畏敬を捨てるべきではないと哲学を貫いていく
彼らが熊を仕留めた後の所作もそれを示しているものであり、その辺りをリアルに描写しているように思えた
いずれにせよ、エンタメ性はかなり低い作品になっていて、一歩間違えばドキュメンタリーかヒーリング効果の高い作品のように思える
さすがに熊を実際に仕留めたということはないと思うが、熊の血を啜るシーンなどは妙にリアルに思える
映画の良し悪しは、マタギへの興味とか、自然に対する人間の向き合い方などに依ると思うので、単なるエンタメとして見るとしんどいかもしれません