658km、陽子の旅のレビュー・感想・評価
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「サービスエリア演出いい」
今年12本目。
2023年7月の作品。近くだと新宿で公開で気になっていましたが行けず、今週新文芸坐で上映なので行って来ました。
素晴らしかった点が2つ。
見上愛がサービスエリアでダッシュするシーン。ランニングする事はありますがダッシュは何年してないし、今度家の帰りにダッシュしたいと思います。
もう一つ、菊地凛子が車の助手席で眠くてドライバーが「どうぞ」と言うシーン。自分も20才の時に事務所移転のアルバイトをしていて、高速道路でどうしても眠くてドライバーさんが「寝てていいですよ」優しい、と共に申し訳ない気持ちで寝たのを覚えています。あの仕事がこの映画に繋がるんだと。
この2つが日常に深く切り込んだ描写で、ここ描くんだと映画見て本当に良かったと嬉しくなりました。
リアルの中の非リアリティ
横柄な寿司屋の大将が、「ほら旨いもの作ってあげたよ!」といって出された料理のような映画。主人公が行く先々の人たちと触れ合って少しずつ変わっていく様子をリアルに作り込んだ感じはしますが、その分細かい作りにリアリティがないところが見え隠れして思考停止してしまうシーンがいくつかありました。そもそも弘前に帰りたい人が「青森まで」と言うものなのでしょうか?リアルな作りに徹するのなら細かい細かい部分までこだわってほしかったです。
陽子の凝り固まった心が少しずつほぐれていく658㎞の旅
ストーリーよりも菊地凛子に惹かれて観る。若い頃にアメリカ・ハリウッドで仕事をするために単独で渡ったと言うことでずっと興味を持っていた女優さん。
今まで観た映画の中で主人公のセリフがここまで少ないものは初めて。言葉が無い代わりに仕草や表情がとても重要になってくる。私も自然と陽子の表情を見つめながら心を読もうとしたりしていた。希望を持って上京した若い頃から挫折を繰り返して、カチカチに固まってしまった今の状況の苦しい心の状態の陽子。人を寄せ付けない孤独で誰にも心を開こうとしない陽子の表情が658㎞の旅(ヒッチハイク)を進めて行くうちに、少しずつ和らいで行き言葉も聞こえてくるように。途中には嫌な奴もいたけど、様々な人から無償の優しさで接してもらいながら、東京から福島~弘前へ向かう風景を見つつ上京以来疎遠になっていた父(帰郷はその父の葬儀のため)を受け入れることが出来るようになった陽子の表情の変化の演技が素晴らしい。人と目を合わせることも出来ず、蚊の鳴くようなか細い声しか出なかった陽子がどんどん変わっていく。形として見ることの出来ない心の傷を癒してくれるのは、やはり形の無い人の思いやりか・・と改めてシミジミと感じた作品。
力作です。
前半は若干イラつきを感じていたけど、中学生の「ハイ!」で一気にほどけていく感じでした。
これまでの自分の価値観だけで観ていた自分を恥じました。
価値観は揺れるのですね。年を取っても。
世の中にはいろんな人がいて、私もその中の一人。
優しい人、そうでない人。私は…。
生を取り戻すための658kmの旅
658kmとは陽子が暮らす東京から故郷の青森までの距離のことだ。
その青森までヒッチハイクをしながら車で旅をするロードムービー。
陽子(菊地凛子)は18歳の時に親の反対を押し切って東京に出てきた。
夢を持って出てきたのだが、現実は在宅の仕事でほぼ引きこもりのフリーターで年齢も42歳になってしまった。
そこへ、父(オダギリジョー)の訃報が伝えられる。
陽子は出棺を見届けるために叔父(竹原ピストル)の車に同乗し青森に向かうのだが、サービスエリアでのあるトラブルにより、逸れてしまう。
荷物を車に置いたままでお金もないため、ヒッチハイクで青森に向かう旅が始まる・・
陽子は引きこもり生活で人とうまくコミュニケーションが取れないまで心が疲弊している。
18歳の時から24年、実際の距離は658kmだが時間軸の距離は658kmよりもっと、とてつもない距離が出来てしまったのかもしれない。
陽子の旅は青森に近づくにつれ心の距離も取り戻していく。
ヒッチハイクを成功させるには人とコミュニケーションを取らないといけない。
人間は生きるか死ぬかの局面では逞しくなる。
それは本来の生きる力だ。
陽子は旅で出会う人々、その中にはかつて喧嘩別れした父の幽霊も含まれるのだが、それらの人とのやりとりにより人間力を取り戻していく。
父の死を見届けるための旅で自身の生を取り戻していく姿が印象的。
幽霊の父が見える陽子は死に近づく存在で、父との決別が父が陽子を再生させるための最後の愛情だと思うと胸が熱くなる。
菊地凛子が渾身の芝居を演じている。彼女の代表作の一つになるだろう。
そして旅で出会う人々
人気のないサービスエリア
旅の途中に通り過ぎる東日本大震災の被災地
寒々しい海岸沿いの道
雪の中にポツンとある青森の実家
人と風景が素晴らしい。
はたして父の出棺は見届けることができるのか、しかと見届けてほしい。
叫び
この「旅」はもちろんメタファーなので、「ああすればよかったのに、こうもできたのに」というツッコミは無意味です。
私も陽子と同じで、「あなたが努力しなかっただけでしょ」と言われ続けた世代です。
置いていかれ、排除され、嘘をつかれ、こちらの責任でないことの責任を取らされ……
本当に、ただ生きているだけで何度叫び出しそうになったことか。
困っている人がいたら車に乗せてあげるなんて、人間として当たり前のことじゃないですか。
困った女一人が車に乗ってきたからって、恩を着せたり、代わりに体を要求したり、そんなことしないのがまともな大人でしょう。
でも、二言目には「あなたが悪いんでしょ」。「人のことなんて知らねーわ」。
違いますよ。車に乗せてくれなかったおじさんとおばさん。
あんたたちの世代の失政や不作為の尻拭いを我々はさせられたんだ。自分の人生を犠牲にするという形でね。
「ここまで来られたのは皆さんのおかげです」なんて感謝、本当はしなくていいんですよ。
しかし、この社会と和解するには、そうとでも思うしかないんですよ。
今更ながら人はひとりで生きていくには
引きこもり生活の女性、若い頃にはやりたいこともあり夢もあった、くじかれた時に方向性を変えられる柔軟性がないばかりに引きこもり生活。現代には多いと思われるが、やはり人との関わりこそが人が人たる所以で、関わることをやめたら生きてる事の実感すら感じないだろう。
そんな問題を抱えた人間を菊地凛子が本当に演じきっていて観るに連れて引き込まれていく。
ヒッチハイクするに至る理由は無理があるが、最初は行く事にさえ面倒だと感じてたのも人と触れ合うに連れ自分を変えたい、父親の最期を見送らなきゃならないと思うようにもなり心の変化の過程を見事に演じていた。
風吹ジュンは最近老夫婦の役では右に出る者はいない。
それにしてもオダギリジョーはここのところ故人の役が多いのはなんでだろう。
この映画良かった、世の中捨てたものじゃない、けれど一部には弱みにつけ込む悪いやつもいる。
それでも人と関わることの大切さをしみじみと伝えてくれた。
居心地わるい
、科白聴き取り難い、画はイイ、これが熊切監督作品への印象。でも今回は大分観易かった。ちょこちょこ出るオダギリ父さん、ちょっと笑えたし。
引きこもり・コミュ障を脱するのは、自分を含めヒトなんだと感じた。
イカ墨パスタがすでに物語っている。
人生を諦め引きこもって暮らすコミュ症の陽子、42才。疎遠だった父の死を知り急遽東京から故郷青森へ向かうことに。その距離658km。
従兄の車で向かう途中トラブルが起き、一人でヒッチハイクする羽目になってしまう。
見ず知らずの自分を車に乗せてくれる人。その旅路で自分自身や突如幻影のように現れる父親と対峙してゆくことになる。陽子の孤独、絶望、疎外感。その反面きっと本心では誰かと繋がりを求めている。そんな複雑な人物像を見事に演じた菊地凛子の為の658kmだった。
陽子とほんの少しだけ交差する人達。好きな俳優さんばかりでシーン毎にとても豪華で見応えがあった。そして若き日の父にオダギリジョー。海辺のシーンは父娘の愛情が見えてきてジーンとした。ちょいちょい無理矢理展開もあったけど、とても情景が綺麗なロードムービーでした。
あんなに車の来ないパーキングエリアって有る?
東京で暮らす42歳の独身女性・陽子は、フリーターとしてなんとなく日々を過ごしてきた。そんなある日、20年以上疎遠になっていた父の訃報を受け、従兄の茂やその家族と故郷の青森県弘前市まで車で向かうことになった。しかし、途中のサービスエリアで陽子は置き去りにされてしまい、所持金もなくヒッチハイクで青森を目指すことになった。道中で出会ったさまざまな人たちとの出会い・・・てな話。
まず、置いてきぼりをくらったらもうちょっと必死で連絡取ろうとしないか?
寂れたパーキングエリアなんだろうが、あんなに車が立ち寄らない所って有る?
ヒッチハイクするにしても、男1人に乗せてもらうか?
少しずつコミ障っぽいのが治っていくところを見せたかったのかな?
海で潮が満ちて来て、身体がベチャベチャになってしまったのに服いつ乾かしたんだろう?
色々とよくわからない所が多かった。
菊地凛子の演技は素晴らしかったし、見上愛は可愛かったが、それだけ。
ちょっと変わったロードムービー
高校卒業で上京してやりたいことを目指すものの、うまくいかず、コミュ障になっている陽子。20年会っていない父親が亡くなり、従兄弟の車で青森に向かうものの、SAではぐれて所持金2000円そこそこで放り出されてしまう。
ヒッチハイクするしかない状況に追い込まれ、コミュ障でまともに会話もできず、せっかくヒッチハイクで乗せてもらっても失礼な態度を取ってしまう。出棺の時間が迫ってくるので焦ってくるのと、だんだんコミュニケーションが取れるようになってくる様子がすごく伝わってきた。
目を合わせようとしない表情が脳裏から離れない。
ヒッチハイクでドイツ人を乗せたことがあるが、危険もはらんでいる。
乗る方も乗せてもらうからにはコミュニケーションをしっかり取って楽しい車内にしたい。
蜘蛛が出てきたが、真冬に蜘蛛はいない。そこはツッコミたかった。
TVのドラマか配信で十分。千円以上を支払って映画館で見るほどではない
ノルウェーの森以来の菊地さんを目当てに見に行きました。さすが菊地さんの演技は見事ですが、それ以外は安っぽくてダメ、俳優さんの責任ではありません。構想が安っぽいのです。
まず、オダギリさん、不要です。この映画では父親は遺体以外では出てくる必要がありません。
次に、バイクを降りたときは道路に落ち葉があって、踏切を渡って家に着いたら積雪ウンcmの雪景色、やっぱりラストは冬にしようと思いつきで撮り直したのでしょう。
ネタバレになるので書きませんが、ラストはご都合的に甘い、昔ならともかく、今は出棺の時刻は正確です。
これでしたらTVのドラマか配信で十分。千円以上を支払って映画館で見るほどではない。
一生懸命、ただ、北を目指す
小さな失敗の繰り返しで自分に自信がなくなり人とのコミュニュケーションを避けていたことで、普通に人と会話することもむずかしくなってしまった主人公・陽子が、無一文でヒッチハイクしながら父の葬儀のため青森を目指す物語。
あらすじ以上のことはほぼ起きず、ひたすらヒッチハイクを繰り返す陽子の道中を追いかけていきます。
前半の陽子は、見ていてイライラしてしまうくらいのコミュニケーション下手。ちょっとした会話はもちろん、お礼や挨拶さえままならない。ヒッチハイクで乗せてくれたり、食事をご馳走になっても、態度がまぁーひどい。これじゃあ気分を害すのも分かるわと、観ている側も不快指数高め。
でも、少しずつ少しずつ、陽子の心のリハビリが出来てきて、少しだけ頑張ったり、めちゃくちゃ頑張ったり、そんな後半の陽子は応援したくなりましたし、きっと何かが変わったのだと感じることができました。
道中、ヒッチハイクで出会う人々は、めちゃくちゃ良い人もいれば、めちゃくちゃクソな人もいるし、まぁまぁ嫌な奴、普通の人、色々。でもどれも極端ではなく、どんな人なのか説明もほぼなく、風景や少しの会話で読み取っていく。この辺りの表現が、車に乗っている陽子とリンクして面白かったです。
とにかく風吹さん夫妻が良かった…心が浄化されます。
すごく面白いかでいうとそうじゃないけれど、なんだか印象にとても残る作品でした。菊地凛子さん、さすがでした。
コミュ障の女性が658㎞の旅で自分の殻を破って行く感じの邦画。 本年度ベスト級。
観賞後、コミュ障と自閉症の違いをググったけど、陽子は自閉症なのかと医者でもないけど自分的に判断(笑)
菊地凛子さん目当て。
そんなに思い入れのある女優さんでは無いけど彼女の演技に引き込まれた。
コミュ障で人に会うことを避けながら生活している42才の陽子。
ある理由で断絶していた父が他界。親戚の車で青森まで葬儀に向かうストーリー。
スマホも壊れ僅なお金しか持っていない陽子。
高速道路のサービスエリアで親戚とはぐれヒッチハイクで青森まで向かう展開。
コミュ障の陽子が他人にヒッチハイクを頼む事が難しい中、色んな人に出会い助けられ青森まで向かうロードムービー。
良い人ばかりではなく悪い人もいる中、終盤で陽子が自分の殻を破って行く感じに引き込まれる。
感謝の気持ちを言葉では無く握手するシーンが印象的。
今まで喋る事もままならない陽子が全てを吐き出す様に喋る姿に泣ける。
美しい風景に期待するもそれ程でもなくリアル感を出していた感じ。
ってか福島の滞在時間が長過ぎる(笑)
ヒッチハイカー役の小松菜奈さん似の見上愛さんが可愛くて印象に残る。
スマホ等の位置情報も無いのに目的地まで辿り着いたのは凄いと思いました( ´∀`)
そうはならんやろ。
映画のタイトルを聞いて最初の印象は、随分スケールが小さいなと感じました。たかが658km、しかも徒歩じゃなくて車でしょ?そんなに人間変われるもんかいな、と。普通に走ったらあっという間に着いてしまうけど、どうすんのかなと思っていたら案の定、郡山ナンバーがあんなに走ったのにまだそんな所にいるの?!みたいな。兎に角前半はダルいです。あらすじ聞いて、こんな感じの映画かな?と想像したらその通りでした。コミュ障の陽子はあたかも地蔵のようです。もう早く終わらんかなと何度か時計を見てしまいました。物語が熱を帯びるのは後半から。菊池凛子さんの長回しで撮った演技は流石の一言。しかし演出という面から観るとあそこで語りだす必然性は全くないし、なんかお手軽ですよね。全般に陽子の変化に対する説得力が足らない気がしました。夢が破れてコミュ障になったって言うのもどういうこと?多くの人は夢に挑戦する事なく一生を終える。或いは挑戦したい夢さえ見つけられず、終える事だって珍しくない訳で。それって不幸なんでしょうかね?陽子の存在にどうしてもリアリティが感じられませんでした。シリアスな映画なのでその辺がとても大切だと思うのですが…。うーん、ちょっと不満が残った映画でした。
これからの陽子に
旅の途中で陽子は、度々選択を間違えます。普通はこうするだろうと思うところですが、
きつと今までも選択を間違えてきた故に引きこもりなのだろうと納得します。
ヒッチハイクで出会う人々は親切だけれどちょっと意地悪だったり。両方持っているのが人間だなと思ったり。
最後のヒッチハイクでの独白は素晴らしく、こんなに自分の気持ちをわかりやすく話せるなんて・・・きっと引きこもっている間にずっと自分に向き合い、整理できていたのだな。
この人は自分の置かれた状況を人のせいや、社会のせいにせず、自分のせいだと言う。
間違った選択でも、自分で決めてきたからこそ言えること。
これからは自分にとっての最良の選択をしてくれるに違いないと思う。
42歳女性の再出発に期待とともに大きなエールを。
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