「ケンは政府の予算マシーンから、遺族の悲しみに寄り添う人に変わった。」ワース 命の値段 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ケンは政府の予算マシーンから、遺族の悲しみに寄り添う人に変わった。
2001年の世界同時多発事故のワールドトレードセンターへの
航空機の突入。
それはビルに勤めていた人、出入りしていた人そして救助に当たった
消防士や警官など。
その他ペンタゴンへ突っ込んだ航空機の死者など、
7000人の賠償・・・と言う前代未聞の大プロジェクト。
【9・11補償基金プロジェクト】を丹念に記録した
ドラマ仕立ての映画です。
プロジェクトがスタートしたのは事故から僅か3日目のことでした。
政府から指名されたのは《政府の予算マシーン》を自認する
弁護士ケネス・ファインバーグ(マイケル・キートン)。
私の第一印象も《予算カッター》みたいな人・・・そう思いました。
事実ケン(ケネスの愛称)も事務的に事を進めて、早く遺族に賠償金を
渡す事で頭が一杯だったのですが、1人の遺族と話し合い彼の提言を
真摯に受け止めたことから、まったく違うアプローチに変わるのです。
遺族たちは哀しみを誰かに語り、苦しみを訴えたかったのです。
その事にケンは気づいたのです。
そのアドバイスをくれた人はチャールズ・ウルフさん。
妻のキャサリンがいつもより30分早く出勤したばかりに
事故に遭ったのです。
悔やんでも悔やみきれないのはチャールズさんも同じ。
その事をきっかけにファインバーグさんは、一人ひとりの遺族と面談。
延べ900回に及んだ面会。
ファインバーグさんの姿勢は遺族に寄り添ったものに変わったのです。
映画では賠償請求の最終締め切り日の2003年12月24日にあわせて、
あと何年何ヶ月と何日。
申し込み人数は15%。
あと何ヶ月と何日。
申込者はまだたった30%・・・などと、カウントダウンしていきます。
本当に事務担当の職員一人一人が真面目。
チャールズさんの会合を聴きに行きスパイと間違えられる程でした。
一番大きな決断。
それは年収による賠償金とは別に、遺族への精神的な苦しみに対する
補償金額を、予定していた5万ドルから10万ドルに倍増したのです。
より人間らしい誠意ある補償金事業でした。
(賠償金の平均額は一人2億4000万円ほどでした)
映画の中で印象的な二つのエピソード。
同性婚を夢見るカップルの1人が亡くなりました。
彼らの住むバージニア州は同性婚を認めていないのです。
ファインバーグさんは州議会に掛け合い同性婚を認める法律に変えるまで
尽力するのですが、死んだ彼の両親が頑なにパートナーを認めない。
そんな例もありました。
もう一つの例は、消防士の妻で8歳6歳4歳の男の子の母親カレン。
実は夫のニックにはもう一つの家庭があり、
幼い子供が2人残されたのです。
最後の最後まで賠償金を要らないと拒むカレン。
「相手の女が死ねばいい・・そう思っていた。子供の名前は?」
「ジェナとベル」女の子は3歳と1歳だった。
「念願の娘ね」
ニックは娘を欲しがっていたそうです。
亡くなった7000人の一人一人にドラマがあるのです。
ラストでケンの誠意は97%の被害者に伝わり事業は成功するのです。
ケンを演じたマイケル・キートン。
いつものようにカッと目を見開いてオーラを発することもなく、
地味で外連味のない弁護士ケンが悩みつつ一歩一歩地道に努力する姿を
表現して素晴らしかったです。
ケンに成り切っていました。
この映画の姿勢を誰よりも知り演じていました。
共感、コメントをありがとうございます。返信遅くなってしまい、またご無沙汰しており申し訳ありません。
確かにマイケルキートンは普段の印象的な演技とは違いましたよね。地道に面会を続け、あくまで7000人のドラマが主役だったように、表現していたのだと琥珀糖さんのレビューを読んで思い返していました。いつも大切な気付きをありがとうございます。
こちらこそ、
コメントいただきましてありがとうございました😊
私こそ、レビューを拝読して見逃していたことを教えていただきましてありがとうございました😊
超優秀な方が苦悩に苦悩を重ねでやり遂げていく、凡人には想像しにくいです。