「誠意は利害を超える。」ワース 命の値段 ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)
誠意は利害を超える。
価値は、米国同時多発テロの被害者のことを伝えるという意味で、この映画の全てです。
命の値段は、映画の一部であり、重要な部分ではありません。
原題の方が、邦題より良いです。
米国議会によって認められた、米国傷痍軍人会があり、米軍の傷痍軍人およびその家族の援護を受けることができます。
日本軍による真珠湾攻撃の被害者は、米軍の傷痍軍人として、被害者の家族は援護を受けることができました。
米国同時多発テロの被害者を援護する組織も法律もありません。
保険に加入していた米国同時多発テロの被害者は、死亡保険や医療保険の金額を受け取ることができます。
保険に加入していない米国同時多発テロの被害者は、援護を受けることはできません。
米国政府と航空業界の企業は、米国同時多発テロの被害者に対して、援護をする義務は負っていません。
米国同時多発テロの被害者であろうと、なかろうと、不測の事故で死んだり、病気になることはあります。
米国同時多発テロの被害者は、訴訟を起こして、裁判になっても、敗訴し、援護を受けられない可能性が高いということです。
米国同時多発テロの被害者は、訴訟を起こして、裁判になっても、勝訴しても、航空会社が倒産すれば、援護を受けられない可能性が高いということです。
米国政府が、航空会社を支援しないだけでも、倒産する可能性があります。
この現実を米国同時多発テロの被害者も、米国政府も、航空業界の企業も、米国民も受け入れることできません。
下院運輸社会基盤委員会委員長を務めるアラスカ選出のドナルド・ヤング議員が米国航空運輸システムの継続的存在確保を目的として、
米国大統領に以下のことを要請します。
・テロ攻撃に使われた航空会社に対して、総額100億ドル(1兆5,000億円)を上限とする連邦政府の融資を行います。
・連邦政府の一時的運行停止命令によって被害を受けた航空会社に対して、総額5億ドル(7500 億円)を補償を行います。
・航空会社に対して、売上税納入期限延期を含む税制上の優遇措置を行います。
・米国同時多発テロの被災者に対する補償を目的として、法務長官が所管し、スペシャルマスターが運営する補償プログラムを設置します。
航空会社に税金を使用するのに、被害者に税金を使用しないというのでは、米国民の支持は得られないということです。
スペシャルマスターが、この映画の主人公です。
補償プログラムが、9.11被害者補償基金プログラムです。
9.11被害者補償基金プログラムを作り、裁判ではない方法で、米国同時多発テロの被害者を援護するということです。
9.11被害者補償基金プログラムには、期日までに、米国同時多発テロの被害者が参加しなければ機能しません。
このような背景が理解できていないと、エンディングも理解できないと感じています。
事実に基ずく映画ですが、会話を中心としたヒューマンドラマの映画です。
映画は、分かりやすく作られています。
政治家、実業家、被害者や被害者の家族という人はほとんどいないので、どの登場人物にも感情移入はしにくい映画です。
米国同時多発テロの被害者には、24人の日本人が含まれています。
主人公たちは、全米だけでなく、日本はもちろん、全世界に行ったということまで描いていれば、もっと良い映画になった気がします。
国のために働きたいと考えている人には、お勧めできる映画です。
国のためと言いますが、相手にするのは政治家や実業家で、どういうことになるのかが理解できます。
期日と予算は決まっていて、人は限られ、失敗はできないという仕事に関わったことがあるという人には、仕事映画としてお勧めできる映画です。
米国社会の格差を描いているというところも良いです。
国のために働くとは、割りの合わない仕事なので、無報酬で受けるくらいの覚悟がないと、できなかったと感じました。
自分は、米国人を相手に仕事をしたことがあるので、孤独な立場、失敗できない重圧、裁判のリスクという主人公に共感することができました。
米国では、誠意を持たずに仕事をした米国人が目の前で、所属企業ごと出入り禁止になり、解雇される厳しい現実も見ました。
出入り禁止になった企業までの責任を、上司等の許可も得ず、自分で勝手に引き受け、仕事を成功させたというのは、自分しか知らない事実です。
自分の企業が、米国企業に誠意のある対応をせず、取引禁止になるところを、自分が米国へ出向き、誠実に対応し、新しい契約のサインを得られたそうです。
米国以外にも色々な国々の人を相手に仕事をしてきましたが、日本人に対する偏見はありますが、誠意を尽くせば、信頼を得て、仕事を成功させてきたと自負しています。
米国同時多発テロから、22年以上経過しています。
若い人は、米国同時多発テロを知らない人も多いでしょう。
米国同時多発テロについて知りたい人は、米国同時多発テロに関する映画「ユナイテッド93」、映画「ワールド・トレード・センター」、
映画「華氏911」、映画「ゼロ・ダーク・サーティ」、映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」やアフガニスタン戦争に関する
映画「ホース・ソルジャー」、映画「アウトポスト」、映画「キル・チーム」やイラク戦争に関する映画「フェア・ゲーム」、
映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」、映画「バイス」、映画「バグダッド・スキャンダル」を鑑賞すると良いでしょう。