「ロストマン」青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
ロストマン
6月公開のおでかけシスターではかえでと花楓が自分の殻を打ち破って前に進む物語が展開されました。話数ごとだと分割されて難しいと思ったので、中編くらいの尺でやったのは大正解でしたし、本当に良かったなぁと観ているこちらも嬉しくなる作品でした。
今作は花楓と母との再会、そして咲太の思春期症候群と2つのテーマが描かれます。後者の方がメインではあります。
花楓は最初は母に会う事に対して後ろ目を感じていましたが、いざ会ってしまえばもうすぐに打ち解けて、花楓も思いの丈を吐露してコロッケを作る約束もしちゃって…。この時、咲太はあまり会話をしていないなと思ったら、そこが思春期症候群に繋がる部分だったんだなと解釈一致しました。
家族が元通りになる事を言い訳に、母の存在をどこか忘れようとしていた咲太が思春期症候群になり、改めて梓川咲太という人間を知る事になるのは上手い構成だなと思いました。
誰よりも我慢を重ねていたからこそ、いざ自分となるとどこか宙に浮いた感覚になっていたという、1話から現在までの咲太を浮き彫りにするような形になっていました。
原作はもちろん、アニメシリーズに劇場版、前作のおでかけシスターで多くの人の悩みや葛藤を解決し、手を差し伸ばしていた咲太が今作では差し伸ばされた手を取るという、咲太の物語になっていました。
もう一つの世界で過ごしたからこそ、母から逃げていた自分を責めつつも、家族というものの関係性の尊さを何気ない会話で噛み締めているシーンがとても好きでした。
こちらの世界でも飲み込みの早い双葉とのシーンはなんだか安心感がありましたし、交流が多かった2人だからこそできる軽い掛け合いが心地よかったです。
なんでもない用事で電話して、今日の弁当の感想を伝えるなんてらしくない事をやってしまうくらいには、咲太もお母さんに会いたかったんだなと思いました。
自分もお母さんっ子なので、なんてことない会話をするのは楽しいですし、離れて暮らしているからこそその大切さが身に染みるので、より一層感謝を伝えなきゃはと思いました。
元の世界に戻ってきて、まだ思春期症候群真っ只中の世界を少し楽しんでいる咲太の元に麻依さんがやってきて、思いっきり抱きしめてくれる、ひとりぼっちの世界に光が灯った瞬間、咲太が思いっきり泣いていたのを見て、よく頑張ったなぁとこっちもほろりときました。今まで見てきた作品の中で、ここまで見ていて感情の揺さぶられるカップルは早々いないです。貴重。
病室でお母さんとしっかり目を合わして、もう花楓も混ざって泣きじゃくるシーン、咲太の物語にも一区切りついて家族のピースが揃ったんだなと嬉しくなりました。
最後はゆめみるのラストに合流し、新たな物語への布石を打ったところで映画は終わります。
エンドロール後の映像、もしやもしやと思ったら大学生編のアニメ化決定というとても嬉しい情報が飛び込んで喜びが隠しきれませんでした。原作の大学生編はまだ未読なので、読んでおきたいですし、アニメーションでどういう感じで進んでいくのか、新しい楽しみが増えました。
若干駆け足な感じはありましたが、青ブタの世界を堪能することができて1ファンとしては喜ばしい限りです。大学生編も首を長ーくして待ちます。
鑑賞日 12/2
鑑賞時間 13:40〜15:05
座席 F-5