【ネタバレ一切なし】
トータルでかなり満足度の高い映画だった。
というか、個人的にはかなりの傑作の部類に入る。
「怖いものはやはり怖い」とサブタイトルがあるが冒頭以外は全然怖くはないので、怖いのが苦手な人でも余裕で見れる。
が、逆に怖いのを見たい人、ホラー映画を期待してる人には物足りないと思う。
・ストーリーについて
独立した5つのエピソードがあるオムニバス風だが、各エピソードが少しずつ連結したりしているから、全体としてまとまりがあった。
(もちろん主役の2人がすべてのエピソードに出ているから、まとまっているというのもあるけど)
各エピソードが謎解きのようになっていて、先が読めない展開が続くし、エピソードごとに答えが提示されるので1話完結モノのような手軽さもある。
しかも霊とか怪奇現象のような内容だから、日常を描くドラマのように「次はこうなるんでしょ」みたいなこともなく、さらに先が読めずに楽しめた。
・主役の2人の演技について
特に邦画だと見ていて恥ずかしくなるような演技をする人が多いし、「名優」と呼ばれているような人たちでも個人的にはとても下手だなあと思うような俳優もいるけど、この映画の2人は普通にとてもうまいと思う。
他にどんな映画に出てるんだろう、と思って調べたらあまり出てないようだったけど。
この映画は霊とかを描いているから、叫んだり怒鳴ったりという演技もあると思うけど、そういうのじゃなくて抑えた演技だったのも良かった。
あと2人の関係性がとても良かった。
この映画での2人は完璧だしまた続編とかスピンオフとかで見てみたいけど、それとは別に、まったく別の役柄での2人も見てみたいと思った。
・撮影や編集について
見ていて「これどうやって撮ってるんだろう?」というようなシーンがいくつもあった。
しかも照明も不自然じゃなかったから、そういうシーンも完全に計算して撮っているはず。
見ていて感じたのは「すごく今風だ」ということ。
極端な話、TikTokなんかのショート動画に通じるぐらいの切り替えの速さ、テンポの良さを感じた。
しかも素人の動画とは違ってアングルもバンバン切り替わるから、余計に見ていて「長さ」を感じなかった。
監督がそういう若い世代の人なのかと思って調べたらそんなことはなかったけど(笑)。
シーンの切り替わりもうまくて、ブツ切り感がないのも良かった。
なぜそう感じたのかわからないけど、編集の仕方がうまいんだと思う。
・脚本について
シーンにしても、セリフにしても、とにかく余分なものを削ぎ落としているのが印象的だった。
邦画でも洋画でも「なんでこのシーンがあるの?」とか「その一言いる?」みたいなのが多くて、映画を見ながら「これ、監督だか脚本家だかが面白いと思ってるんだろうな…」とか余計なことを考えちゃって一気に映画の世界から引き離されることも多いけど、この映画の場合はそういうのがないから、没入できた。
それにいちいち状況説明のシーンやセリフを入れたりする方が絶対に簡単で、余分なものだけを削ぎ落としてなおかつ観客にすべてを伝えるという作業はとても難しいはず。
この映画はムダだけを削ぎ落としているから、キレ味が出ていると思った。
私のこのダラダラした無駄な文章の対極にあるようなキレのある映画だった(笑)。
というわけで、どこを取っても欠点がなくて、映画としての完成度はめちゃくちゃ高くて、見終わった後にいい意味で余韻が残る映画だった。
ラストシーンも本当に美しく、素晴らしいと思った。
エンタメ作品として万人が楽しめると思う。